ククーシュカ ラップランドの風景を、青みがかったモノトーンのような色彩で捉えて、自然の幻想と雄大さ、加えて厳しさが伝わる。その上、サーミ人のスタイルも幻想的だった。シャーマンの儀式に時間を費やす。自然に従事し、自然を崇め、戦いのむなしさや争いの醜さを説いた。

第二次世界大戦末期、フィンランドのラップランド地方でロシア軍とドイツ軍が戦っていた。自国の領土を取り戻すためフィンランドはドイツと同盟を組んでいる。あらぬ疑いをかけられての護送中に負傷したロシア人兵士イワンと、戦を放棄して岩に足を繋がれたフィンランド軍狙撃兵ヴェイッコは駐在を余儀なくされて、そこに住むサーミ人の女性アンニに助けられる。ヨーロッパ最古の民族といわれるサーミ人はフィンランドに属しながら独自の文化を守り、彼女はサーミ語しか喋れない。イワンとヴェイッコもまた母国の言葉だけ。ちぐはぐな会話を繰り返しながら3人の生活が始まった。

誰とも殺し合いたくないヴェイッコに対して、イワンは彼をドイツ兵だと勘違いして命を狙う。言動をとってもフィンランド人であるヴェイッコのほうが移入しやすかったが、監督アレクサンドル・ロゴシュキンはロシア人で、製作国もロシアだった。ヒロイズムを破棄し、譲る行為が凛々しい。「ロシア人は名前が皆イワンだ」というユーモアが素晴らしい。

あらかじめ前売り券を上映劇場で買っていて、特典で付いてきたフルーツスープを鑑賞後に飲んだ。フィンランドではポピュラーなものらしい。角切りリンゴとシナモンが入っていて、少しとろみがある。冬の寒い日など最適だろう。時期が少し早ければ流行の兆しもあるのに、春先とはタイミングが悪い。