平等の白は鳩の糞や便器にて。「公平はどこに」白の象徴であるそれは冒頭の裁判所のシーンに盛り込まれたが、以降はむしろ相反するストーリーと思えた。汚いものが白で表現されて、愛に平等はないという逆説を掲げているような。

カロルが美しい妻ドミニクに離婚をつきつけられた原因は彼のインポテンツだった。ポーランド人のカロルはフランス語があまり喋れず、それでもドミニクと一緒になるためにパリに来たが、捨てられてクレジットカードを無効化されてトランク一つとなって、夜の街で凍える。その横で杖を突きながらゴミを捨てる老婆、彼女は前作「青の愛」にも登場し、おそらく次の「赤の愛」でも姿を出すと予想しよう。カロルと手を切りたいドミニクは非情で、彼を犯罪者に仕立て上げようとする。未練を残すカロルは懇願の電話をかける。しかしあえぎ声を聞かせられた。

ホームレスになったカロルは同胞のミコワイと通じ合い、母国への密航を手伝ってもらった。帰った彼は危ない橋を渡りながら精力的に金を工面する。成功して、絶望の淵に立っていたカロルが自信を取り戻し、死を望んでいたミコワイが生気に満ちた。見切られ、離れ、それでもドミニクへの気持ちは強まり、財産を彼女に譲るという遺言状を書き、自身の死亡記事を新聞に載せた。愛の確認作業は公平に、やられたことをやり返す。

「源氏物語」で光源氏は頼まれれば老婆とも寝たそうで、その器量の大きさがモテる要素の一つだったらしい。僕には真似できない。不能の気がある。男にとってそれは致命傷で、本作はなかなかえぐってくる。