1970年代、アメリカ空軍駐屯地のある韓国の村に暮らす3人の若者とその家族の物語。犬は食肉であり、ペットでもある。朝鮮戦争の爪痕は強く残っている。アメリカには羨望と憎しみがある。歴史や文化を織り交ぜて、小さな村が世界。
アメリカ軍人との混血であるチャングクは食用の犬をさばく仕事が嫌だった。雇い主である犬商人は腕っぷしが強く逆らえない。母親の恋人でもあり、その母が男に依存したり村で騒動を起こしたりすることにも苛立ちを募らせている。チャングクにとって唯一の友人であるジフムもまた、気弱な性格が災いして周囲に馴染めないでいた。朝鮮戦争でアカを3人殺したことが自慢の父親には毎日のように小言を並べられる。給料が入ればたかられ、思いを寄せるウノクには邪険に扱われる。そしてウノクも、幼少の時の事故で片目が不自由になり、飼い犬にだけしか心を開かない。家は戦死したとされる父親の年金と母親の内職で生計を立てているが、失明の原因を作った兄は働かず、常に金をせびっている。
ビッコ、ギッチョ、ツンボ、メクラなど差別用語は現在使われなくなった。ほんの30年前は医学の進歩が追いつかず、または経済的に困難で、時には治す術すら知らないという状況が存在した。それでもたくましかった。
もがき、苦しみ、罪を犯す。血だまりに写る死体や、痩せた大地に突き刺さる足が衝撃的だった。抜けられない負の連鎖、因果の法則が残酷で痛々しい。しかし監督キム・ギドクは底辺を生きて、彼らを知っているからこそ、リアリティがある。どこか暖かみがある。