向き合ったり、同じ方向を見たり、少ないセリフは横顔が補完する。霞み、くすみがちの美しい空を随所に挿入して、雲も彼らの心情を語っているようだった。たとえ薄っぺらくても沁みる。17歳のユウとヨースケは「好きだ」と相手に伝えられなかった。そして17年の月日が流れて、二人は偶然再会する。34歳のユウが17歳の頃を語り、34歳のヨースケが現在を語る。
もどかしさ。17歳のユウにはヨースケの気持ちが汲み取れず、34歳のヨースケにはユウの深層が見えない。キスをするのも告白をするのもユウからだった。女のほうが強い。土手を歩く二人は抜きつ抜かれつ、意識し合った。
キャストが少ない。物語はユウとヨースケだけ、強いて挙げるならユウの姉と、ヨースケと夜中に出会った男が、二人の世界に入る。役者は皆が素晴らしかった。宮崎あおい、西嶋秀俊、永作博美、瑛太の主要キャスト4人がそれぞれ抑えていてなおみずみずしい。僕は宮崎あおいのような妹を欲しがっている。例えば夜中に携帯が鳴って「お兄ちゃん終電がなくなっちゃったの。迎えに来て」なんて言われて、僕は「またか。ふざけんなよ」とか言いながら車を飛ばす。「いつも夜遊びばかりしやがって。おまえの運転手じゃないんだからな」と一通り憎まれ口を叩きながらも本当は頼られることが嬉しく、遊び疲れて助手席で眠る姿が愛おしく、その髪や頬を撫でるって、そんな気持ちの悪い妄想を宮崎あおい主演で脳内ロングラン。ヨースケと一緒にいる時のユウの視線は彼へが4割、彼以外が6割、くるくる泳ぐ。そんな宮崎あおい is ユウを見て脳内も上映期間が伸びた。