主演の高倉健をはじめ里見浩太郎、若山富三郎、鶴田浩二、長門裕之、藤山寛美とスター揃い踏み。やっとマキノ雅弘の作品を見る。カットは余韻を残さず切り替えが早いからか、106分と若干短めながら凝縮されていた。渡世の仁義はすがすがしく、しかし侠客はがんじがらめだった。
小田原の酒匂一家は、全国の親分衆を集めた日本大同会の結成式を仕切ることになった。しかし三島の山形一家は酒匂のシマを虎視眈々と狙い、その血縁にある関西天神一家が式の最中に難癖をつけた。それに激高した酒匂の頭・半次郎はケンカをふっかけ、逆に殺される。伊之助をはじめとする酒匂の若い衆は敵討ちに向かうが、半次郎と兄弟関係にある関東筑波一家の坂上に止められた。坂上の娘と婚約している伊之助は拳を握って唇を噛む。
任侠劇の定番、一宿一飯の恩義は本作でも登場した。血統を申し込む時は名乗り、ドスを持っていなければ渡し、死ぬのは相手のほうだとして双方が言付けを聞く。「恨みっこなし」はこの世界独特の言い回しである。「どうせ死ぬのは後か先だ」と、彼ら侠客は野暮を嫌い、粋を貫く。
頭に“新”がついてからの文芸坐に初見参。名画座だというのにほぼ満席という混み様で、マキノ人気を実感した。新宿では劇場以外でもよく見かける、虎の面をかぶって、花をあしらった洋服とも和服ともいえぬものを着た、年齢不詳の男がいた。彼はいつも最前列に座る。次に遭遇した時は話しかけようかなと、それは思っただけで実行に移すことはない。遭遇といえば友人とバッタリ出くわした。これが2度目 で気色悪い。