世田谷文学館 文学に描かれた世田谷
花森安治と「暮らしの手帖」展
世田谷文学館

環境が違えるもの、時代を違えたもの、知らない観点を知る。知れて良かった。

上京した者同士の子で、引越しも何度か経験し、僕は故郷という概念が薄い。愛着もない。多くの文豪が世田谷を愛し、したためている。江戸川乱歩、永井荷風、坂口安吾、大江健三郎、寺山修司などの町にまつわる作品や収蔵資料が展示されていた。羨ましくもある。目を引いたのはムットーニ の3つからくり箱。中島敦「山月記」、萩原朔太郎「猫町」、海野十三「月世界探検記」の世界が、正方体の中で繰り広げられる。それはまさにコスモスだった。動きと光りまで計算されて、ストーリーは進む。

花森安治が生前の頃の「暮らしの手帖」を知らない。現在の「暮らしの手帖」もほぼ知らないが。戦後間もない時に、今も勝るものがないほど、ポップで尖がって暖かい雑誌があった。編集長にして装丁、イラスト、コピー、デザインまでこなすマルチはしかも、全てにおいて抜きんでている。彼が日本を作ったと言えるかも知らん。