朝、目を覚まさすと首が痛い。寝違えた。加えて先日痛めた箇所も悪くなっている。

渋谷で半蔵門線に乗ろうとして階段を降りているとベルが聞こえる。走って駆け込んで、閉まりかけのドアをすり抜けた。その危機一髪ぶりに我ながら満足する。表参道で千代田線に乗り換えようとして階段を降りているとまたベルが聞こえる。走って駆け込んで、閉まりかけのドアをすり抜けて、勢いあまって滑って転んだ。右の足首をひねる。しかしその痛みよりもまず、この状況をどうするか。転んだままの体勢でいるわけにもいかないが、さも転んでないよとでも言いたげに慌ててすぐに立ち上がるのもどうかと思う。なぜか僕は下を向いたままいったん正座をして深呼吸する。辺りを見回すと瞬時に顔の向きを変えた人が3人。空いている座席に座って足を組み、足首を揉んだ。

渋谷に戻ってきて狭い路地に入り、そこに止めてある愛車の鍵を解く。またがって通りに出ようとした時、激しい衝撃に見舞われて、女性の悲鳴が響いた。気づくと自転車から放り出されている。何が起こったか一瞬分からなかった。辺りを見回すと同じように人が倒れていて、自転車が転がっている。衝突したようだった。悲鳴を上げたと思われる女性が寄ってきて「大丈夫ですか」と声をかけてきた。「問題ないです」と言って起き上がり、ぶつかった男に歩み寄った。彼もまた立ち上がった。「怪我はない?」「はい」「良かった。お互い気をつけよう」彼の尻をポンと叩いて、僕は足早にその場を去った。非は、おそらくこちらにある。彼も相当なスピードを出していたと思われるが、僕は進行方向を完全に見ていなかった。毅然とした態度をとったものの、実は左の手首がかなり痛かった。

首が満足でないと動きがコミカルになる。手首と足首も不自由で、全てにおいてやる気が失せる。