ホテル・ルワンダ 実話を基にしているといってもそれはピンからキリまであり、脚色が甚だしいものでも、そう謳われることがある。本作は事実に対して忠実に作られたと感じた。物語のリアリティは、主人公ポール・ルセサバギナの人間性にもある。

1994年、アフリカのルワンダにてフツ族とツチ族との民族間の争いを発端にした大量虐殺がおこなわれた。欧米列強国は我関せず、過激派のフツ族民兵が闊歩する中、ミル・コリン・ホテルの支配人ポールはツチ族をかくまってホテルに籠城した。はじめ、彼は家族だけを守ろうとする。隣人に構ってられないというのは当然の考えだろう。しかし虐殺を目の当たりにして、多くの人間を救うために尽力することを決めた。ポールは賄賂を周到に駆使して生きてきた。それが籠城に活きる。超家族愛と現実的なヒロイズム。

主演のアメリカ出身ドン・チードルをはじめアフリカンは皆、英語がなまっているように思えた。調べたところルワンダの公用語は仏語、キニアルワンダ語、英語だった。どうだろう、気のせいだったのか、敢えてそうしたのか。

僕にとってこの事件の記憶は「そういえば」程度のものでしかなかった。本作がなかったら忘れてしまうことを否めない。結局、劇中で非難された、対岸の火事という立場にいる人間と同じだった。世界を繋ぐ媒体として映画。映画によって記憶と知識を得る。