THE 有頂天ホテル 博愛くさい。それはターゲットとして老若男女全てを網羅した全方位型の喜劇だからだろう。

大晦日、ホテルアバンティはてんてこ舞いだが、それもそのはず支配人から客室係まで誰もが仕事を全うしていない。真面目に働いているのは副支配人の瀬尾と筆耕係の右近だけだと思われる。従業員は職務よりも見栄や体裁、私利私欲が大事であり、それは宿泊客とカウントダウンパーティーに出演する関係者も同じ。その見栄や体裁のための嘘が渦巻いた。

くねくねダンスは記者会見の場で晒されると思っていた。この件は裏切りに次ぐ裏切り。汚職議員の武藤田は自殺を翻意して告発を決意する。しかし実のところ腹は据わっていない。そんな武藤田のわがままに嫌気が差した秘書の神保は決定的写真がおさめられている携帯電話を持って会見場へ走る。果たしてその携帯は神保のものか。くねくねダンスの動画が入ったコールガールのヨーコのものかもと思わせる。転んだ神保の手元から携帯が落ちて、それをマン・オブ・ザ・イヤーでありくねくねダンサーである堀田が拾う。これでもかというほどにうまかった。

これだけのキャストを揃えたことがすごい。しかし実のところそれはあくまで掴みだった。生瀬勝久が芸達者であろうが松たか子が大根であろうが、角野卓造のコメディアンとしての才能を知ろうがYOUの歌手としての枯れ具合を知ろうが、どんなスターも三谷幸喜に掌握される。ホテルという舞台の中で、多くの糸が絡まりそうで絡まらず、最終的にはきれいにほどけた。