空いている電車の、シルバーシートに腰掛けた。コートの裾からは手首まで覗いていた。脈が打っている様子が分かる。ウォークマンのリモコンのディスプレイで1分を計った。95。

送られてきたメールに、僕の気分は急降下させられていた。憎しみに変えることで自我を保っていた時期があった。顔を見たら今でも逆上する可能性がある。その送り主、新たな門出に向けて多忙を極めているだろう。その送り主、僕は彼女を異性でありながら親友だと思っていた。特別視してほしかったわけではないが、ただ寂しかった。切り替えよう。

Dear T。ひどく疲れた。夜のしじまに思い出すのはY my dear、太く短い君の指。

The Beatles
The Beatles The White Album