カメラが殺風景な部屋の真正面を見据え、細長い首、手、足をくねらせてアロイシュスが踊っている。窓の外を眺める彼の恋人・リーラは微動だにせず、カメラの端に映っている。「トータルでイカれている」と言われ、彼はそれを自負し、持論をリーラに語る。定住する意思がなく漂流が常であると。エゴイストによるロードムービーだった。
不眠症のアロイシュスは歩いた。戦争によって壊れた生家や、精神を患って入院している母の元に訪れる。そこで、またはその道中で出会った人々と会話する。そして海を渡る決意をした。実際に旅立つ時、物語は終わる。
ジム・ジャームッシュが在学中に製作した長編デビュー作は、いかにもジャームッシュらしいというと、それは浅はかだろうか。町、部屋、人にデカダン・ムードが漂う。私的な価値観や哲学が作品に反映されているようだった。身軽であることと、未練がましくないこと。金や所持品を持っておらず、まだ足かせもない若者には、むしろ旅に出ない理由を探すほうが難しい。