ゲルマニウムの夜 雪が降りしきる寒国の教会が隔離された一つの世界として、教護院に住む青年・朧を中心にそこの人々の性と生が描かれる。

朧が教会の院長である小宮の性処理をしている。彼は神と宗教を試していた。人を殺め、犯し、傷つける。それでも神父の戸川には「神に最も近い」と言われていた。

欲が渦巻く狭いコミュニティで物事の善悪を説く。汚物とされるものや不貞とされることが、果たしてそうなのか。朧を演じた新井浩文の目は全てを見透かしているようだった。また、欲を全く持たない者として修道士の赤羽がいる。殺虫剤を樹木に撒き、やる気をなくすというその薬の副作用に侵されていた。何も見ないことも達観に近い。

荒戸源次郎が上野に一角座という映画館を作った。本人らしきいかつい老人が館内を闊歩している。観客席を一瞥して何だか萎縮した。上映後にはサプライズゲストとして監督の大森立嗣が登場した。弟の南朋にそっくりだ。本作にはその南朋と父親の麿赤兒も出演する。荒戸事務所、一角座も含めてファミリーの香りがした。