売れない漫画家・ツベの、日常と妄想を描く。いくつかの短編コミック、私小説のような現実味を帯びた作品から徐々に非現実的なシュールな作品を繋ぎ合わせる。セリフは原作に忠実だった。とつとつと語る内なる声が、赤裸々で突き刺さった。浅野忠信が主人公であるツベ、ひいてはつげ義春にぴったりである。

タイトルでもある「ねじ式」を映像化したシーンでは清川虹子が特別出演する。金太郎飴の発案者として、それは金語楼とかけたのだろうか。チープを優に通り越した、蒸気機関車が漁村を通り抜ける情景のミニチュア模型は、10年に満たない時の製作のものとは到底思えず感動的ですらある。メメクラゲか××クラゲか、そんなものはどっちでもいいのだが、石井輝男はメメクラゲと発した。

今さら追悼石井輝男でつげ義春原作ものをレンタルショップで揃えた。つげの漫画は高校生の頃に読みあさっていたが、石井輝男作品はこれが初となる完全な後追い。といっても70年代以前のものに手をつけないと後追いにすらならない。

廃れた地方を一人旅をする男が土地の人と出会い、自分と向き合う。その姿勢に感銘を受けて、またツベが下降思考であることが拍車をかけて同調させる。旅に出たがるのは、原点にこれがあるのだ。