朝のラッシュとは逆方向に乗り、3人掛けの座席の連結部分寄りに座った。向かいは全て埋まっている。その真ん中で若い女性が口を開けて寝ていた。凝視すると目も半開きである。それではどの角度から見てもブスだ。しかし僕もしょっちゅう車中でよだれをも垂らす。次の駅に着くと対面に座っていた男性が降りた。彼女は目を覚まし、そこに移動した。まぶたを上げると瞳は大きく、綺麗な人だった。
向かいの3人掛けの、逆の端に座っている厚化粧の女性は急行1駅をかけてマスカラに夢中になっていた。次は口紅を塗りたくる。この口紅を塗る様というのは、どんなレディでも醜く見えてならない。しかし車内くらいで化粧をすることは全く構わない。今後彼女の人生に関わる確率は微々たるもので、逆もまた然り。互いがあずかり知らぬ関係であるからして、迷惑さえかけなければ何ら問題はない。眼中にないとの意思表示にもなり得る。
口紅を塗り終えるのに同じく急行1駅分、先の目口半開き女性はそこで降りた。