こう見えて(どう見えて)デリケートな体質だ。枕が変わると寝つけなかったり眠りが浅かったりする。気持ちでは馴染んでいるつもりでも、体は環境に慣れるまでに時間がかかる。旅の最終日になって、やっと便意をもよおした。4日ぶり、一度開いた門からは、怒涛のごとく攻め入った。溜まりに溜まったものは大きく、さらに辛い食事が多いために熱く、血や唐辛子で真っ赤なそれを体内からひねり出している感触があった。流れない。
インドネシアのトイレには便器の隣に水槽があり、そこから桶で汲み取って水を流す。小さな桶ではらちがあかない。幾度となく流しても、それはひょっこりと顔を出す。辺りを見回して、バケツを発見することができ、他人に晒す危険を回避した。
先の新郎はといえば、回避できなかった。僕がバリ島に訪れた初日、彼が部屋に来てしばらく話した後、帰り際に用を足し「頑張ったけど」と言い残して去っていった。17年付き合って、初めて彼の後始末をする。