自転車を使うには荷物が多く、普段なら愛車に乗る道をバスに乗った。その距離は自転車の走行時間にして15分。バスを3台は抜かす。平素ノンストップの景色を、信号やら渋滞やらバス停毎に止まってゆっくり眺める。

後輪が小さいレトリックな自転車に乗る女性が、バスと併走している。フォークロア風のショールを羽織って、大きめの帽子を目深に被り、鼻と口しか見えない横顔は勝ち組臭が漂うほど凛としていた。しかしそのアンティークバイクは尻が下がり、腰が引けているポーズが間抜けである。

抜きつ抜かれつの攻防は彼女に軍配が上がった。繁華街に消える自転車を見送る。できれば同じ条件下で勝負を挑みたかった。追い抜く際に正面の顔を拝見しようと振り返ってバランスを崩し危うく自動車と接触しかけて転びそうになるところまでイメージできる。