日本のホラーコミックを牽引する楳図かずおの原作漫画をオムニバス形式で計6作、2本ずつの公開が始まった。黒沢清も絡んで彼への誓い
を果たす。
その黒沢監督による「蟲たちの家」がトップを飾った。後輩の恋人・羽奈子と関係を持った蓮司は、彼女に自分の妻がおかしいと言う。そう思うのは果たして自分だけなのか、確かめるために彼女を家に呼んだ。喫茶店で、車中で、蓮司と羽奈子を映しながらガラスに反射する景色も映し出す。室内にいる人間と、外界の両方を写した。室内にいる、というのはあるいは閉じ込められたということを暗示しているようにとれる。時間軸と視点人物が激しく交錯して真実が分からない。嫉妬深くかんしゃくを起こす蓮司と、妄想癖のある留以子、どちらが現実を語っているのか。
2作目は伊藤匡史監督の「絶食」。醜悪な容姿から現実逃避し、事故で死んだ端麗だった妹と自分を混同する女子高生・知子が、好きな男子の気を惹くためにダイエットをする。前半は美しい自分と醜い自分が交互に現れて混乱する知子を描き、後半は醜さを受け入れた彼女が、痩せた体と引き換えに狂気を授かった姿が描かれる。エンドロールで津田寛治の名前を見つけたが、今さっきの記憶を辿っても彼が出てこない。ロールが終わって席を立とうとすると、また映像が始まって津田寛治が出てきた。周囲も慌てて席に着く。
立ち見が出るほどの盛況ぶりで、別の劇場などでロングランとなりそうだ。1篇ごとにオープニングとエンディングをくっつけて、ルルティアというアーティストの歌を2曲それぞれ2回で4度聞くことになる。1つ1つが独立しているということで、ある意味自立心が強い。