「エロス+虐殺」「戒厳令」と吉田喜重監督エロス3部作を成す本作は前衛的だった。それもそのはず、商業性を無視し芸術性を強く意識したATGが配給している。監督陣には吉田喜重の他に今村昌平、岡本喜八、寺山修司、大島渚と恐ろしい名前が並ぶ。
庄田力弥の妻・夏那子が一人の少女を拾ってきた。彼女は迷子であるという。彼女の存在が、力弥の隠された過去を暴く。戦後の革命ゲリラとしてアメリカ大使誘拐事件に参加した過去、それを掘り起こされて当時のメンバーと再会することになる現在、さらに時空を越えた未来が交錯する。同じシチュエーションを場所を替えて繰り返す。または同じシチュエーションで人間を代えて違う未来を描く。混沌とした未来は一つの言動で変わる。
人物を仰視で撮っている。あおられて彼らは、無機質に淡々と演者として役割をこなす。規律を重んじているような計画的な映像は、小津から継承されているものなのだろうか。
5月30日
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