廃墟 日本映画では廃墟のロケーションが多く見られる。退廃的でどこかノスタルジーを感じさせるその廃墟。友人と茨城まで探訪したそうだ。

早朝、まずは使われなくなった郵便局と農協。割られた窓ガラスから鍵を開けるなどして侵入したとのこと。かび臭く、散乱した屋内がカタルシス。カレンダーや古新聞などでいつ頃まで使用されていたかが予想できる。同じ町内にあった廃業の遊園地には錆びた展望台があり、その眺望は見事だと言っていた。受付ブースの中にはコピー機をはじめ、電話や地図、チケットなどそのまま残っていたようである。

場所を移し6号を南下。コンクリート剥き出しのマンションが見えたらしい。壁には落書き、燃えカスがあったようだ。彼らはなぜセックストカマンコトカ書き残したがるのだろう。しかもそのような言葉は全国共通だ。どうも住んでいた形跡はなく、施工途中に何らかの事情で工事を中断したように思えたとのこと。この道沿いには廃墟が山ほどある。パチンコにパブ、寮らしきものもあったという。ロッカーを開けるとキーケース、それで閉じられた扉を開けられるのかと、まるでRPGゲームのように楽しんだそうである。管理人が暴力団関係者だったら、見つかったときに大事であるスリル。

さらに南下すると、小高い丘に廃墟レストランがあったようだ。事務室兼自宅と併せて似たような建物が並ぶ。まず先に事務室を散策したらしい。兵どもが夢の跡、国破れて山河あり。想像力を巡らせる、とてもじゃないが詳しく言えないような代物まで残されていたそうだ。2階に上がってふすまが少しだけ開いている部屋を覗くと、そこには、ベッドに横たわって読書を勤しむ男がいたそうである。二人は慌てて逃げたという。

「僕らは物音を立てて、普通の声で会話をしていた。彼は僕らの存在に気づいていたはずだ。それでもこちらには全く関心を示すようではなかった。まるでいつものことのごとく。身なりは浮浪者に見えないが、そのレストランの関係者でもなさそうだ。あそこで咄嗟に逃げてしまったが、失礼しました、など一声かければよかった。彼がなぜそこにいるのかも聞きたいところだ。しかし戻ることはしなかった。彼にしてみれば放っておいてほしいだろうし、同じような質問を何回も受けているだろうし。おそらく世捨て人。相互不干渉がエチケットだろう」

廃墟一つ一つ、それぞれの物語がある。残されたものでそれを空想する。荒廃さがそっくりそのまま居心地の良さ。らしい。