M/OTHER 哲郎とアキは同棲している。哲郎には別居中の妻と息子の俊介がいるが、妻の交通事故で俊介を引き取ることになった。アキに相談せず、家に連れてくる。一ヶ月の3人による共同生活が始まる。

映画とは娯楽である。諏訪敦彦監督作品は「2/デュオ」に続いて2作目だったが、どちらも不快だった。不快の原因は2作品とも男の身勝手さにある。それは共感を得てしまう。諏訪監督は主要登場人物の2人とディスカッションをしてから作品に臨む。キャストとの共同作業で脚本ができ上がるため、心理描写にリアリティがある。

アキと俊介は表面上うまく生活をしているが、アキは徐々にストレスを溜め、沸点に到達する。「申し訳ない」「負担をかけない」と言いつつも息子を任す哲郎に、俊介がいる前でヒステリーを起こした。そんな彼女に対して「もう何もしなくていいから」と言う。また、俊介が何も言わずに家を出て、夜通し探した挙句に妻の家で見つけた時も「今晩ここで寝かしてやりたいんだけど、いいかな」と彼女に電話する。上っ面だけの優しさが見え隠れしていた。一ヶ月経てば元通りになると考えている哲郎は男の原理を象徴している。不安を感じたアキが一人で暮らすための新居を探しているのに気づき、彼のずれた人間性が表に出る。男が醸すそのずれは至極一般論ととれた。

暗い画面を人間が行き来する。絞りを調節して操っている。その暗さが根源であり、時折見せる明るみはあくまで嘘なのだ。浜辺へキャンプに出かけ、笑顔を見せるアキ。最初は明るいが、徐々に絞りを狭めた。