
常盤湯 三宿1-30-2
風が冷たく銭湯日和になった。常盤湯は規模が小さく、店構えが地味で入り口にたどり着くまで苦労した。中に入ると内装も飾り気がなかった。その中で際立っていたのが「貴重品は風呂ントにお預けください」という脱衣所の注意書き。前ぶれがない分、インパクトが強烈だ。丁寧にルビまでふってあった。浴槽は薬用風呂と泡風呂の二つがある。薬湯は睾丸がピリピリする。風呂からあがって着替えている途中に浴場を見ると、整然とカランの上に風呂イスが置いてある中、僕が使用したところだけイスとオケが無造作に放られていた。常連客は皆ちゃんと片付けている。慌てて戻って指定の位置に戻した。昔、銭湯で濡れた体のまま脱衣所をうろついていて、背中一面に刺青を入れた紳士に「ちゃんと拭かないとだめじゃないか」と怒られて緊張したことを思い出した。ここの脱衣所には階段があり、2階は談話室になっている。誰も利用していない。一人そこでタバコをふかす。適度なだるさが至福のとき。