大芸大その2で借りた「ばかのハコ船」は熊切和嘉の助監督を務めていた山下敦弘の監督作品。処女作「どんてん生活」での主人公のリーゼント姿や、独特の間(ま)で日本のカウリスマキと呼ばれている。なるほどオフ・ビート感覚の笑いはそれに近いかもしれない。「リアリズムの宿」と2作品を見て、俗に言うところの「負け組」を世の主流として丹精込めて描いている人とみた。

上映時間111分がもっと長く感じる。しかし怠惰な生活観を写すにはそうなった然るべきなのだろう。ラスト近くで納得する。自主販売を試みて多額の借金を抱えるダメカップルが、男の故郷で返済に奔走する。ダメなりにダラダラと。腹立たしい反面、やたらと共感を覚えて苦笑を誘う。甲斐性なしの男・大輔となんだかんだで離れない彼女・久子は、僕の理想の女に近かった。設定では二人は7年間付き合っているということだった。愛よりも情での繋がりのようで、全くもってそれがあるべき男女の姿だ。片田舎に出戻り、恥ずかしい過去を蒸し返す。そこにコメディーを見出している。うなづける。皆、愛すべき人間なのだと。人生とは情けないものだと。