ライフ・アクアティック アメリカ映画界の次代を担うウェス・アンダーソン監督にビル・マーレイ、ウィレム・デフォー。男心をくすぐるミニチュア構造と、目を引くカラーコーディネーションに釣られた。

スティーヴ・ジズーは水中ドキュメンタリー監督兼海洋探検家として過去に名を馳せたが、現在は映画作品の評判が芳しくなく、スポンサーや資金繰りに苦労している。右腕だったエステバンがジャガーザメに食われ新作も散々で落ち込む中、昔の恋人の子供と名乗るネッドが彼の前に現れた。エステバンの復讐を誓い、ネッドをチームの一員に加えて彼の探査船ベラフォンテ号は船出をした。

チーム・ジズーは黒人、イスラム系、日系と民族性に富んでいる。姓名を見てみると白人でもドイツ系だったりロシア系だったりまさに他民族な家族である。家族意識が強い彼の住む家であるベラフォンテ号は断面図で細部にまで作られている。劇中映画で製作模様を描き、セットを内密に再現する点で、よくフェデリコ・フェリーニの「8 1/2」と並び称しており、ウェス・アンダーソン自身もフェリーニを意識したことを公言していた。イタリアの撮影所で作られた工房作品らしく、徹底している。

イエローサブマリンに赤いニット帽、空色のユニフォームと極彩のカラーが際立つ。登場する海の生物は想像上のもので、これも実にカラフルである。その色彩といったら何から何まであまりに嘘くさく、フィクションを前面に出している。それでもキャラクターを掘り下げて、暖かい人間ドラマとして奥も深い。

デビッド・ボウイの歌を、黒人がポルトガル語でボサノバ調に歌う。異色の組み合わせも違和感がない。チーム・ジズーの一員として出演もした歌手のセウ・ジョルジが、叙情満ち満ちて引き語った。