ほとんど主人公の語りだったので、会話はあまりありませんでしたが、久々に書いたので難しかったです(´・_・`)
命日はすぎてしまいましたが、去年に引き続き、俊太郎さまのお話を書かせていただきました。

今回参考にさせていただいた森山直太朗さんの「夏の終わり」は、反戦歌なのだそうです。

戦争の中での恋の歌で、戦争で大切な人を失った、戦後の女性を描いているのだと思います。

私はこの歌を聴いて、悲しいとか寂しいとか、そんなものでは表せないような、深い感情を感じたような気がしました。
文章下手すぎて全然伝えられないのですが…(^^;;

とにかく感動しました!



個人的な意見ではありますが、気になる人はぜひ聴いてみてください


動画↓↓
https://m.youtube.com/watch?v=3KwfNuzYmnM!

歌詞↓↓
http://www.utamap.com/showkasi.php?surl=B04439



 こんばんは^ ^ 
久々に、小説を書いてみました。
命日はすぎてしまいましたが、俊太郎さまのお話です(*^^*)

今回は、森山直太朗さんの「夏の終わり」という曲をモデルに書かせて頂きました。













「夏の終わり」







ゆらゆらと、陽炎に揺れる京都を、私は今年も歩いています。

一歩ずつ歩く度に、白い帽子のつばが、青いスカートが、風に吹かれてひらひらと舞うのです。

夏の終わりに吹く風は、私の心をも揺らして、通り過ぎていきました。


貴方の影を思い出させて、貴方に想いを馳せさせて。


…私にーー。



貴方を忘れさせることを、許さないのです。









……………………………………………









2014年、夏。
私は、26歳になりました。

陽炎が揺れる京都で、毘沙門天への道のりを歩いています。

息苦しいほどの熱風は、あの夏の日を思い出させるかのようで。

白い帽子を飛ばされないようにしながら、バス停へと歩くのです。

バス停で待っていると私の目から何故か、涙が溢れました。

悲しいからではありません。
寂しいからでもありません。
彼を置いてきてしまったことを、悔やんでいるからでもありません。

会いたいと願えば、彼が生き返るなどと思えるはずがないのです。

一年に一度の逢瀬。

今日だけは、彼に会いたいと、素直に願える。

そんなことが、たまらなく嬉しいのです。


乗り込んだバスから見える景色は、私を彼との思い出の中へ連れて行きました。

いつか。

水芭蕉が揺れる畦道を、二人で歩いたときのことです。

思いがけない夢を、彼は語りました。


「全てのことが終わったら、あんさんと自由に暮らしたい」


「それだけで…いいんですか…?」


私の頬を撫でながら、彼は穏やかに囁くのです。


「それが、ええんや」


「わてにとっては、それが一番幸せなことや」


その夢を語る彼は、今までで一番、穏やかな表情をしていたのかもしれません。


「…あんさんの夢は?」


私の夢は、どんなことだったでしょうか。


そんなことを考えているうちに、バスは到着し、毘沙門天の近くまで来ていました。

いつか俊太郎さまと歩いた道を、私は今、一人で歩いています。

広い背中に揺れながら、初めて本当の貴方を見た日を思い出していました。


「あっ…!…」


その瞬間、強い風に煽られた帽子を押さえると、足をとられて私はバランスを崩してしまいました。

しゃがみ込み目を閉じると、私の中にはある期待が生まれるのです。

目を開けたら、またあの日のように、貴方が手を差しのべてくれるのではないかと。

分かっているのです。

もう一度目を開けても、貴方はここにいない。

それでも、心が勝手に期待して、求めてしまうのです。


「…もう、行かなきゃね」


そう思い立ち上がった瞬間、私の帽子は風にさらわれていきました。


「待って…!」


まるで誘うように、毘沙門天の方へと帽子は飛んでいきます。

走り出すとそこには、ある人影がありました。

ふいに、あの日と同じ風が、通りすぎたような気がしたのです。

懐かしい香りが、私を包みこみました。

一歩ずつ、その人影に近づく度に、私の胸はトクントクンと音をたてます。


その人影は、私の方へ帽子を手に、やって来ました。

その影が色濃くなるたび、私の目から、涙が溢れだすのです。


悲しいからではありません。
寂しいからでもありません。
彼を置いてきてしまったことを悔やんでいるからでもありません。


ただ、彼に会いたいと願ったからです。


俯く私に、帽子を被せながら、その人は言いました。


「かいらしいお嬢さん、どうか顔を上げておくれやす」


「あんさんにはきっと、涙より笑顔が似合う」


涙が滲んだまま、私はその人を見上げました。

穏やかで優しい眼差しに、慈しむような指先に、私はまた、涙を流しました。




貴方と出会った、夏の終わり。
貴方を失った、夏の終わり。

夏の終わりには、ただ、貴方に会いたくなるのです。

いつかと同じあの風が、貴方の香りを連れてきて、私を包み込むから。


いつか語り合いったあの夢は、今ならば叶うのでしょうか。

今ならば、真っ直ぐに伝えることができるのでしょうか。


私の夢、私が願ったことは、どんなことだったでしょう。




「…会いたかったです…本当に…」


「俊太郎さま」



優しく、ゆっくりと、彼は私の頬を包み込み。


夏の日差しに照らされながら、私たちは静かに、影を重ねました。








『…あんさんの夢は?』


『私の夢は、生まれ変わってもまた、俊太郎さまに出会うことです』



end

こんにちは(*'▽'*)

今回は本当に久々に、艶がーるのお話を書きました。

なかなかキャラが思いだせず、自分でもびっくりです(゚o゚;


沖田さんの鏡endは悲しすぎて衝撃的だったので…なんとかして幸せにできないかと考えついたのが、+花endでした(^^)






かなりの捏造話でしたが、ここまで読んで下さった皆様…本当にありがとうございました!

これからもよろしくお願いしますm(__)m


会いたいと強く願えば、貴女の元へと行けるのだろうか。


…たとえこの体を失っても。


この心は。
この魂は。


きっと、貴女の元へと続いている。


巡り巡って、生まれ変わることができたら…。


きっと、また会えるから。







…………………………………………………








「…な……和奏!」


「…は、はいっ!」


突然名前を呼ばれ、私は慌てて返事をした。


「…ちょっと和奏、大丈夫?」


心配気に私を覗きこむのは、間違いなく高校の友達だ。

そして今は、間違いなく修学旅行の途中。


(…私、やっぱり……戻ってきちゃったんだ…)


「大丈夫大丈夫!……あの、さ…」


「…今って、平成だよね…?…」


「…何言ってんの~、当たりでしょ?」


そう言うと、友達は再び歩き出していく。


「和奏、行くよ」


「うん、今行ーーー。」



『和奏さん』



「…え…?…」


突然聞こえた誰かの声に、私は再び立ち止まる。

聞こえるはずのない人の声が、私には聞こえた。


「…総司…さん…?…」


強い風に導びかれるように、私はフラフラと歩き出す。

街も、人も…ここにあるものすべてが200年前とは、大きく変わっている。


…それなのに、どうして。


この景色を、この場所を、この道を…私は全部、知っているのだ。

京の町人たち、煌びやかな花街、浅黄色の羽織を翻して行く隊士たち。

全ての記憶が、走馬灯のように蘇っていく。


…風をきる頬が冷たい、通い慣れた道を辿りながら…私はいつの間にか泣いていた。


『…和奏さん』


彼の声に呼ばれ、私は真っ直ぐにその場所へと向かっていく。

浅黄色の羽織が一瞬だけ見えたような気がした。

フラフラと歩いていた足取りは、段々と早足へと変わっていって。

セーラー服のスカートを揺らしながら、私は走りだした。


「…総司さ…っ……」


「…待って…っ……」


息を切らしながら、俯きがちに走っていた次の瞬間。


「……きゃ……!……」


私は誰かにぶつかり、そのまま地面にしりもちを着いてしまった。


「…大丈夫ですか?」


「…っすみません…大丈夫で……」


見上げた瞬間、私は目を見開いて動きを止めた。

風になびく、琥珀色の髪。
浅黄色のシャツ。
優し気に下げられた眉と瞳。


…私は、この人を知っている。


でも、視界が歪み…上手く顔を見ることができなくて。

差し出された手に、手を重ねると…涙が一筋、溢れ出した。

目を閉じ、手を引き寄せられるのを感じる。

次に目を開けた瞬間には、私は彼の腕の中にいた。


「……生きて、生き抜いて…」


「貴女に、会いにきました」


耳元で紡がれる彼の言葉に、私は瞳を閉じて…肩を震わせた。


「…総司さ……」


名前を呼ぶと、私を抱きしめる力が強くなる。

彼の温もりを求めるように、私も彼の背に腕を回した。


「…すみません、和奏さん…」


「…それから、ありがとう」


「…貴女の手紙のおかげで、私は最後まで幸せでした」


「…貴女の言葉が、生きて生き抜く力になったんです」


背中に回されていた彼の手が腕へと滑り落ち、私の手に重なる。

指と指を絡め合い、私達は見つめ合う。


「…総司さん…」


「…会いたかった…」


あの手紙は、私の最後の強がりだったのだと…今更ながら思う。

本当は、総司さんと離れたくなかった。
ずっとずっと、傍にいたかった。


「…もう、どこにも行かないで…」


とめどなく溢れる涙が、私の頬を伝っていく。

彼は私の涙を拭いながら囁いた。


「…私はもう、どこにも行きません」


「私の生きる場所は、貴女の隣」


「…貴女が最後に見る景色は、私の姿であってほしい…」

「…貴女の最後の記憶は、私と過ごした日々であってほしい」


「それが、今の私の願いです」


私の頬を両手で包み込みながら、額を寄せ合う。

彼の両手に、私は手を重ねて呟いた。


「…その言葉…覚えててくれたんですか…?…」


彼は少しだけ頬を染めながら、恥ずかしそうに微笑む。


「…これから先ずっと、私は貴女と共に歩いて行きたい」





「貴女の未来を、私にください」





この気持ちを、何て言葉にすればいいのだろう。

夢でもみているのではないかと、そんなことも考えてしまうほど。




「…っ…はい……!…」


「…嬉しい…、本当に…………」





…またここから、始められるんだ。

出逢ったあの日の二人のように。




私は彼の頬を包み込み、泣き笑いの顔で…こう続ける。



「…はじめまして、橘 和奏と申します」



彼のきょとんとした、驚いた顔が可笑しくて…私は微笑む。

頬を染めながら笑い出す彼も、私の手に手を重ねながら…同じように囁いた。




「…はじめまして、沖田 総司と申します」




恥ずかしそうに笑う彼に、あの頃の彼の姿が重なって見えた。

想いも気持ちも、全て。

あの頃の二人と、きっと…何一つ変わってない。

ただ一つ違うのは、私たちの間にもう「さよなら」なんて必要ないということ。




「…ねえ総司さん」



「大好き」





頬を染めながら、腕で顔を隠す彼を見つめながら…私はまた、微笑んだ。





end

こんにちは(o^^o)
今回は久しぶりに沖田さんのお話です。

鏡end+花end捏造話になっています(^^;)















「さよならは言わないで」









「…さよなら、和奏さん…」




最後に聞こえたのは、ひどく掠れた彼の「さよなら」という言葉。

最後に見えたのは、微かに震えた彼のシャッターをきる指先。



…どうして?

私はまだ、貴方のそばにいたいのに。




…ねえ、総司さんーー。



さよならなんて、言わないで。








…………………………………………………













白い光に包まれた後、彼女は姿を消していた。

手元に残された「かめら」がさっきよりも随分、重く感じられる。

ぴったりとくっつけられた二組の布団が、残された暖かな温もりが、彼女の存在を思い出させるかのようだった。


「…決めたんだ、自分で…」


こうなることは、始めから分かっていた。

彼女は、いつか死ぬ男の傍にいてはいけない人なのだと。

私の人生なんかに、いてはいけない人なのだと。


「かめら」もこの体も…もう要らない。


脱力した体が、冷たい布団に沈んでいく。

目を閉じ、もう一度眠りにつこうと思った瞬間だった。

月明かりに照らされたもう一つの布団の上に、何かを見つけたのは。


「……?…」


不思議に思い、私はそれに向かって静かに手を伸ばした。

触れるとそれは、カサという音をたてる。

引き寄せ、明かりをつけ手元を見ると、それは一通の手紙だった。

表には「総司さんへ」と書いてあり、その先を予感しながら、裏返す。


「…和…奏……」


裏には、彼女の名前が書かれていた。


「…どうして、こんな所に…?…」


そう思いながらも、私はその手紙に目を落としていった。



「…総司さんへ……この手紙を、貴方が読むことはあるでしょうか?……ーーー。」




もし、そうなったとすれば…私はもう貴方の傍にはいないのでしょう。



我慢強くて、見栄っ張りな総司さんのことだから…。

病気になってから…私に心配をかけないようにしていたのを、私は知っています。

辛い姿を見せないように、独りで発作に耐えていたのも、知っていました。


そんな優しい総司さんだから…いつだって、自分より私のことを考えてくれていて。

…私の幸せを、誰よりも願ってくれていましたね。

だから私は、「かめら」を渡した時…こうなることを、どこかで感じていたのかもしれません。

でも私は、それでも構わないと思いました。


こうなることを、貴方が望むのなら。

私の幸せを願ってくれた、貴方の願いなら。



…でもね、総司さん。

私は、こうも思ったんです。



貴方が見る最後の景色が、私であってほしかった。

貴方の最後の記憶が、私と過ごした日々であってほしかったって。



こんなの我が儘だって分かってるけど…叶ってほしかったんです。


…貴方のことが、大好きだったから。





最後に一つだけ、お願いがあります。

…私の最後の我が儘を、聞いてください。




もう二度と…さよならなんて、言わないで。


生きて、生き抜いて。

…きっと、いつの日かーーー。




「………また、会いましょう……」




幾つもの熱い雫が、瞳から零れ落ちていく。

それを止める術を、私はもう知らない。


「…我が儘だったのは…私の方じゃないですか…っ……」


手紙に皺ができるほど握りしめ、俯きながら…私は声を殺して涙を流した。


彼女は、自分が未来に返されることを知っていたのだ。

知っていて、そうされることを望んだのだと…。


自分の願いを、彼女の幸せに置き換えようとしていた自分は、どれほど我が儘だったのかと思い知った。


「……っ…ぐっ………」


また咳がでて、私はとっさに手で口を抑える。

血と涙で染まった布団に身を投げ出しながら、私はぽつりと呟いた。


「…こんな姿では、貴女に顔向けできませんね…」


「…私は…、貴女に、会わなきゃ…ならない…」



「…生きて、生き…抜いて…」





「……きっと、いつか…」





続く…

こんにちは(*'▽'*)

久々に小説を書いたので、書き上げるまでに何日もかかってしまいました(*_*)

本編で九条の家の話がちらっと出てきたので、そこから広げてかなりの捏造話を書きました( ´艸`)

書き終わったあと、4話の文の量が異常に多いことに気づき、自分でもびっくりしました。笑

あと、九条のキャラがブレすぎていることにも(゚o゚;





駄文でしたが…ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございます!!

今後とも、よろしくお願いしますm(__)m

「…私じゃ…だめ、かな…?…」


ふと、彼女が小さく呟く。


「雪が降っても、お母さんのことを思い出しても…悲しくならないように」


「…私がそばにいるからーー…ううん…」





「…そばに、いたいの…」

 



彼女の言葉に、俺は顔を上げて彼女の顔を見上げた。

瞳を潤ませ、赤らんだ頬に…俺はそっと触れる。


「…野々花」



「…俺には、野々花が必要だよ」



「そばにいて欲しいし、そばにいたい」
 


…いつかは彼女と離れなければならない。

そう思い、留めていた想いが溢れていく。



「俺があんたを必要としてるみたいに、あんたにも…必要とされたい」


「俺があんたを愛してるように、あんたにも…愛してほしい。」


「…俺は、野々花がいいんだ」


「…野々花じゃなきゃ、嫌だよ」


彼女の頬を両手で包み込むと、それに答えるように、彼女の手が重ねられる。


「…九、条…」


吐息のような彼女の声に耳を傾けながら、吸い寄せられるように、俺はゆっくりと顔を傾けた。




「…好きだよ、野々花」




「私も…好……っ……」



彼女の言葉を遮るように、唇を重ねる。

角度を変えて何度も…彼女がそばにいることを確かめるかのように、口づけを繰り返した。


「…っ…九、条……!…」


顔を真っ赤にした彼女が、俺の胸元をぎゅっと握りながら荒い息をつく。


「…どうして、言わせてくれないの…っ?」


「…んー…またあとで、ゆっくり聞きたいから」


「…え?…」


「…夜、とか?」


俺の胸元を小さく叩きながら、俯く彼女が愛しくて。

顔を真っ赤にしてる野々花も可愛いなんて言ったら、多分彼女は怒るだろうけど。

…それでもきっと、言わずにはいられないと思う。



「…可愛いー、野々花」


「……っ……」


諦めたように、彼女は俺の胸に顔をうずめた。


「…ねぇ、野々花」


「……うん…」


ひらひらと、二人の間に雪が舞い降りる。

真っ白で細かい、きらきら光るように舞う雪。

あの日と同じ、冷たい雪。




「…この雪がやむまで、そばにいてよ」



今はまだ、この温もりを離したくなくて。

気がつけば、彼女を抱きしめていた。

この雪がやまなければいいのにと、そんなことを願いながら…。



「…うん、そばにいるよ…」


「…この雪がやんでも、ずっと」


「…九条のお母さんみたいに…居なくなったりしないから…」


「だから大丈夫」と、小さく呟く彼女は、俺の背中を強く抱きしめる。


「……っ……」


声にならない想いが溢れて、俺はまた、彼女を強く抱きしめ返した。


「…苦しいよ、九条…っ…」


「……うん、知ってる…」


子どもみたいに甘えながら、彼女の額に頬をすり寄せると…。

何故だか急に、母上の顔が浮かんできた。

そこには、悲しい顔をした母の姿は…どこにもない。



「…もう忘れてると、思ってたのに…」



「…え?…」



『愛されていたことまで、忘れちゃいけない』

そんな野々花の言葉が、思い出させてくれたのかもしれない。


「野々花」


「…うん」


少しだけ体を離し、俺を見上げる彼女の頬をそっと撫でた。



「…ありがとう」



「……え…?」



きょとんとする彼女に向かって、俺は微笑みながら言う。





「…母上が、笑ってる…」





彼女は一瞬驚いた顔をして、すぐに笑顔になった。


彼女はただ微笑みながら、何度も何度も頷いてくれる。

やがて彼女の小さな手が俺の頬に触れて、親指でそっと撫でた。


「…野々花?」


「…だって九条、泣いてるから」


微笑む彼女に向かって、俺はこう続ける。


「…泣いてないよ」





「…ただ、嬉しいだけ」





頬に置かれていた彼女の手をとり、指を絡め合い見つめあう。

引き寄せられるかのように、どちらかともなく…唇を重ねた。

雪のような、僅かに溶け合う…儚い口づけ。






『愛されていた』思い出を、彼女が教えてくれたから。

巡り巡って、また同じ季節が来ても…きっと、笑顔で迎えられるだろう。




やまない雪は、辺りを白く染めていき、銀色の世界が二人を包み込む。

…母を連れ去った雪は、もういない。

…この雪が、君を連れ去ってしまうとは思わない。

でも、もう少しだけ…このままで。






「…野々花」






確かめるようにもう一度だけ、愛しい人の名を呼んだ。





end



「毎年この季節が来る度、母上のことを思い出して…」


「雪が降る度…どうしようもなく、悲しくなる」


「今思えば…あの屋敷の中で母上だけが、俺を必要としてくれてた…」

 

「…純粋に、愛してくれた」



…それなのに、どうして。


その言葉が続くことはなかった。

彼女が膝立ちになり、俺を腕の中に優しく包み込んだから。

それと同時に、俺の瞳からは燃えるような涙が一筋、零れ落ちた。


「…九条は、悪くない。何も悪くなんかないよ…」


俺の髪を撫でながら、震える声で彼女は呟く。


「…九条のお母さんがどうしていなくなっちゃったのか、私には分からないけど…」


「…でも九条は、愛されてた。その記憶まで、消してしまうのは…絶対にだめだよ…っ…」


溢れる涙を押し留めながら、俺は彼女の胸に顔を埋めた。

彼女の腰元を抱き寄せながら、俺はただ…声を押し殺して涙を流す。


「…母上が居なくなってから、屋敷の奴らは…俺を利用することしか考えてなかった…っ…」


「…それが…悲しくて……」



「誰かに本当の意味で…必要と、されたかった」



「心から、愛されたかった…っ…」




一つ一つ言葉を零していく度、彼女は俺を優しく抱きしめ返してくれる。

その温もりに、俺の中の悲しみがひとつひとつ…救われていくようだった。




続く…

「俺がまだ七つのとき、こうやって…縁側で母親と話したことがあって…」


「ちょうど、今みたいな季節だった」


彼女は肩にかけた羽織をひきながら、ただ、俺を見つめていた。


「…おいで」


彼女の細い肩を抱き寄せて、俺はまた話し始める。


「そのうち雪が降り始めて…母上は、綺麗ねって…たった一言、呟いた」


「…俺はまだ子どもだったから、そのとき母上がどんな顔をしていたかなんて…分からなかったんだ」


「庭に積もる雪に夢中になって、いつの間にか母上が居なくなってたことにも気付かなくて…」


「雪が降り止むと…まるで雪みたいに、母上も消えてた…」


腕の中の彼女が、俺の羽織を微かに引いて、肩に顔を埋める。


「…野々花…?」


「…ごめんね、九条…」


「…何も言えなくて、ごめんね…」



…謝る必要なんて、これっぽっちもないのに。

それでも自分を想ってくれる彼女を、愛しく思う。


「…野々花は何も気にしないで、ただ…俺の話を聞いて、ただ…そばにいてくれるだけでいいから」


「…うん」


彼女の肩を抱き寄せて、もう一度俺は話し始める。





続く…


こんにちは(o^^o)
お久しぶりです!

やっと小説を書くことができました(^^;)
今回は、リクエストも頂いていたイケメン大奥、九条のお話です。

想いが通じ合った大奥での二人のお話で、九条目線になっています。











「この雪がやむまで」








「…この雪がやむまで、そばにいてよ」




この腕の中の温もりを、今はまだ離したくなくて。

気がつけば、君を抱きしめていた。


雪なんて、やまなければいいのに。


…そんなことを願いながら。







………………………………………………………







「…さむ…」


縁側に座り、肩から掛けた羽織を引きながら、俺は月を見つめていた。

澄み渡る秋空に輝く星を見て、息をつくと、白い吐息が浮かんでは消えていく。


鼻につく寒さが、あの人の香りを連れてくる季節になろうとしていた。


…こんな日は、嫌でも思い出してしまう。


二度と帰ることのない、母の温もりを。



「…九条…?」


ふいに聞こえたか細い声に、振り返ると、そこには野々花が立っていた。


「…こんな時間に、どうしたの?」


そう問いかけながら、彼女は俺の隣に静かに座る。


「んー…考え事、してた」


「考え事?」


「それより野々花、こんなところにいたら風邪ひいちゃうよ。もう戻らないと。」


「…ううん、大丈夫。まだ、戻らないよ」


「…どーして?…」


「…九条が、心配だから…」


細い眉を微かにひそめながら、彼女は俺を見上げる。


「俺は大丈夫だよ」


「うそ」


「…え?」


「…そんなに…消えちゃいそうな顔、しないで…」


揺れる瞳で俺を見つめながら、彼女は小さく白い手で、俺の頬に優しく触れた。


「…お願い、九条」


「……うん」



頬に触れる彼女の手に手を重ねて、俺は静かに、話し始めた。



続く…