向こうから軟弱そうな野郎が歩いてくる。
いい獲物だ。
どこの出身かがわからない。
東洋人っぽい顔立ちだが、髪の色素は薄く東洋人らしくない。
たぶん、すぐに誘いに乗るな。
早朝、人も少ない。
オレは、箱の陰から飛び出した。
ソイツの手からリングを引きちぎり、脇を駆け抜ける。
「あっ!」
間抜けな声。
たぶん、間抜けな顔もしてる。
必死で走って、小さな路地に駆け込み、すぐに身を潜め、リングに光を灯して箱に合わせる。
スルリと、音もなく滑り出して来たのはオレの相棒、オレの胸くらいまである狼。
「軟弱そうな野郎だ」
ささやけば、コクリと頷く相棒。
オレももう一度相棒と一緒に出て来た棒を握りしめる。
カツカツと、路地に踏み込んでくる足音。
「困ったな~」
それと伴い、のんびりした声。焦ってないのか?
「行くぞ!」
相棒に飛び乗って隠れ場から飛び出る。
いた。すぐ横。
その目の前を駆け抜け、入り組んだ道を抜ける。そして、行き止まりになっている場所に着いて、振り返る。
大丈夫だ、ちゃんと着いて来てる。
よかった。たまに、諦める奴がいる。
スピードを落とさないと来れないし。
リングも金にはなるけど、来てもらった方が儲かる。
「あぁ、やっと追いついた」
狼から降りて、飛び、ソイツの頭上を飛び越し後ろに着く。
これで、逃げられない。
「悪いが、ここに金目の物は置いてってもらう」
「そしたらオレが怒られんだけど」
何かが、おかしい。何かが変だ。
ソイツの、琥珀色の目とかなりの癖っ毛の亜麻色の髪を見つめる。
コイツ、男か?あまりにも華奢で、小さ過ぎる。
でも、それだけじゃない...
他に何か...
肩。肩だ。普通なら肩が上下して、息が切れているはず。
なのに、汗の一つもかいていない。
それに、あまりにも焦りがなすぎる。
まるで、出かける時に愛犬にじゃれられて困っているようだ。
「ナメるな!」
「ナメてないんだけどなぁ」
一瞬、キュッと大きな瞳が細まる。
ゾクリと、体が震えた。
怖い。何だか、ライオンににらまれたような。
「十代目!」
「ツナ!」
後ろだ!後ろから誰か来る!
もう一回飛んで、相棒の所に戻る。
ソイツの後ろから現れたのは...
二人。軟弱野郎と同じくらいの年齢。お揃いのスーツ。
ただ、一人は赤いシャツでもう一人は青。
赤シャツは銀髪で目つきが悪く、灰緑の瞳。
ベルトに、妙に凝った飾りがついている。
青シャツは、もっと背が高くて唇の下に傷がある。
黒い短髪で、精悍な顔立ち。黒い瞳。
「隼人、武!ゴメン、心配かけた!」
「ツナ、ホントだぞ!」
「じゅーだいめー!」
「わかったから隼人泣かないで!」
「十代目、何ですかそのガキは?殺気がだだ漏れなんですけど」
「あぁ、リング取られちゃってね」
「あんだと!このガキ!返しやがれ!」
すんごい凄んでる。
しかも、何だか首筋が妙にピリピリする。
青ネクタイも、さっきから目つきが鋭い。
手の中のリング。
コイツら、強い。
敵わない。
分が悪すぎる。ズラかろう。
「相棒!」
ガオッと一声吠え、オレを乗せた相棒が行き止まりの塀に飛び乗る。
「リングはもらってくぜ!」
塀から降りて、逃げよう…と思ったのに、背後にいたはずの軟弱野郎はオレの目の前にいて、相棒は飛び降りるのをヤメた。
仕方ない、強行突破だ。
「十代目!」
「隼人も武も下がってて。オレ一人でやる」
違う。さっきまでの軟弱野郎とは、違う。
目つきも。何もかも。それに、額からオレと同じ光を灯している。
拳からも。グローブつけてるし。
オレは、棒を構えて飛び出した。
打ち込む。渾身の力を込めて。なのに、かわされる。
もう一回。今度は後ろ。なのに、一度も当たらない。
しかも、相手もかわすばかりで全然攻撃してこない。
その内オレは力尽きて、地面に落ちた。
肩が大きくビクリと跳ねる。
後ろにいる!軟弱野郎!
「ちょっと来てもらうよ」
振り返ったオレの目に映ったのは、柔らかな笑顔。
そして、首へ強い衝撃。
体が地面に落ちる。
握りしめた拳が緩み、奪ったリングが転がり落ちる。
相棒の威嚇する声。
そして視界がスウッと狭まった。
向こうから軟弱そうな野郎が歩いてくる。
いい獲物だ。
どこの出身かがわからない。
東洋人っぽい顔立ちだが、髪の色素は薄く東洋人らしくない。
たぶん、すぐに誘いに乗るな。
早朝、人も少ない。
オレは、箱の陰から飛び出した。
ソイツの手からリングを引きちぎり、脇を駆け抜ける。
「あっ!」
間抜けな声。
たぶん、間抜けな顔もしてる。
必死で走って、小さな路地に駆け込み、すぐに身を潜め、リングに光を灯して箱に合わせる。
スルリと、音もなく滑り出して来たのはオレの相棒、オレの胸くらいまである狼。
「軟弱そうな野郎だ」
ささやけば、コクリと頷く相棒。
オレももう一度相棒と一緒に出て来た棒を握りしめる。
カツカツと、路地に踏み込んでくる足音。
「困ったな~」
それと伴い、のんびりした声。焦ってないのか?
「行くぞ!」
相棒に飛び乗って隠れ場から飛び出る。
いた。すぐ横。
その目の前を駆け抜け、入り組んだ道を抜ける。そして、行き止まりになっている場所に着いて、振り返る。
大丈夫だ、ちゃんと着いて来てる。
よかった。たまに、諦める奴がいる。
スピードを落とさないと来れないし。
リングも金にはなるけど、来てもらった方が儲かる。
「あぁ、やっと追いついた」
狼から降りて、飛び、ソイツの頭上を飛び越し後ろに着く。
これで、逃げられない。
「悪いが、ここに金目の物は置いてってもらう」
「そしたらオレが怒られんだけど」
何かが、おかしい。何かが変だ。
ソイツの、琥珀色の目とかなりの癖っ毛の亜麻色の髪を見つめる。
コイツ、男か?あまりにも華奢で、小さ過ぎる。
でも、それだけじゃない...
他に何か...
肩。肩だ。普通なら肩が上下して、息が切れているはず。
なのに、汗の一つもかいていない。
それに、あまりにも焦りがなすぎる。
まるで、出かける時に愛犬にじゃれられて困っているようだ。
「ナメるな!」
「ナメてないんだけどなぁ」
一瞬、キュッと大きな瞳が細まる。
ゾクリと、体が震えた。
怖い。何だか、ライオンににらまれたような。
「十代目!」
「ツナ!」
後ろだ!後ろから誰か来る!
もう一回飛んで、相棒の所に戻る。
ソイツの後ろから現れたのは...
二人。軟弱野郎と同じくらいの年齢。お揃いのスーツ。
ただ、一人は赤いシャツでもう一人は青。
赤シャツは銀髪で目つきが悪く、灰緑の瞳。
ベルトに、妙に凝った飾りがついている。
青シャツは、もっと背が高くて唇の下に傷がある。
黒い短髪で、精悍な顔立ち。黒い瞳。
「隼人、武!ゴメン、心配かけた!」
「ツナ、ホントだぞ!」
「じゅーだいめー!」
「わかったから隼人泣かないで!」
「十代目、何ですかそのガキは?殺気がだだ漏れなんですけど」
「あぁ、リング取られちゃってね」
「あんだと!このガキ!返しやがれ!」
すんごい凄んでる。
しかも、何だか首筋が妙にピリピリする。
青ネクタイも、さっきから目つきが鋭い。
手の中のリング。
コイツら、強い。
敵わない。
分が悪すぎる。ズラかろう。
「相棒!」
ガオッと一声吠え、オレを乗せた相棒が行き止まりの塀に飛び乗る。
「リングはもらってくぜ!」
塀から降りて、逃げよう…と思ったのに、背後にいたはずの軟弱野郎はオレの目の前にいて、相棒は飛び降りるのをヤメた。
仕方ない、強行突破だ。
「十代目!」
「隼人も武も下がってて。オレ一人でやる」
違う。さっきまでの軟弱野郎とは、違う。
目つきも。何もかも。それに、額からオレと同じ光を灯している。
拳からも。グローブつけてるし。
オレは、棒を構えて飛び出した。
打ち込む。渾身の力を込めて。なのに、かわされる。
もう一回。今度は後ろ。なのに、一度も当たらない。
しかも、相手もかわすばかりで全然攻撃してこない。
その内オレは力尽きて、地面に落ちた。
肩が大きくビクリと跳ねる。
後ろにいる!軟弱野郎!
「ちょっと来てもらうよ」
振り返ったオレの目に映ったのは、柔らかな笑顔。
そして、首へ強い衝撃。
体が地面に落ちる。
握りしめた拳が緩み、奪ったリングが転がり落ちる。
相棒の威嚇する声。
そして視界がスウッと狭まった。
気づいたら、フカフカのベッドに寝ていた。
慌てて飛び起きる。
「…ここは…?」
でかいベッド。天井付き。
部屋は豪華。金や赤の壁紙に、大きな窓。
外はばかでかい庭。
そこで、記憶を探ってみる。
確か、軟弱野郎のリング奪って、誘い込んだけど強くて、気絶した...
相棒がいない!
腰に触ると、ちゃんと箱はあった。
リングもある。
光を灯して箱に当てると、相棒が出てきた。
「ゴメン、エサ…」
コイツは腹が減れば光を食う。
「とりあえず、ここから出るか」
コクリと頷く相棒。
ベッドから飛び降りて、手を相棒の首に乗せながら、ちゃんと手に武器を握ってドアを押し開けて出る。
絨毯が素足が埋もれるほど深くて、気持ちいい。
とりあえず、横の部屋に行こう。
ドアノブに手を当てた瞬間、話し声が聞えた。
「このダメツナ!」
「ヒドいよ、リボーン」
「何だってあんなガキ…」
オレの事か。
「だってさ、アイツあんな小さいのに炎を扱えるんだよ!それにおお…」
軟弱野郎の話し声が止まる。不自然に。
誰かが無理矢理止めたように。
「待て。おい!そこにいるんだろ、ガキ!」
オレか。気づかれてた。
観念するしかない。
ドアをゆっくり開けながら、武器を構えて相棒と入る。
そこには、重そうなどっしりした机と、二つ向かい合わせの深紅のソファと、 そこに足を組み両腕を背もたれに伸ばして悠々と座る黒スーツに黒帽子(鍔になぜかカメレオンが乗っている)で鋭い黒い瞳に、ツンツンした黒い髪という(肌だけ白い)黒尽くめのオレと同じくらいの奴と、向かいにはなぜか正座している軟弱野郎。
「へぇ…確かに、こりゃ珍しい」
黒の男がこっちをじぃっと見つめる。
何だか嫌だ。だからにらみつけてやった。
「こりゃまた迫力あるガキだな」
「な?しかも、大空の炎!」
「ダメツナ、何でだ。仮にもオマエは最大マフィアのドンだぞ?スパイだったらどうする気だ?」
顔を輝かせた軟弱野郎を、黒の男が叩く。
軟弱野郎は逃げるようにこっちへ来た。
「コイツはスパイじゃない」
「どうしてだ」
「超直感。あと、似てるんだ」
「似てる?」
「あぁ。何だか、オレのミニサイズだ」
「確かに…だが、数倍目つき悪いぞ」
「それに、目」
「目がどうした?」
「初めて会った頃の炎真の目に似ている」
「確かに」
誰だ、エンマって?
それに、オレの髪は茶色だけど、癖っ毛は癖っ毛でもオレのは毛先だけが跳ねている。それに、髪は長くて、後ろで縛ってるし。目は確かに琥珀色だけど、コイツみたいにまん丸じゃない。
「な、オマエ名前何だ?」
「…ない相棒もオレも。それより、早く行かせろ」
「ない?どうやって呼ばれてた?それに、少しゆっくりしてけよ」
「じいさまはオレを小僧って呼んでたから。行かせろ」
「じゃ、オレが名前を付けてあげるよ!そうだな…炎真の髪型に似てるし、大空の炎が使えるから…『エンマ・デ・スィエッロ』。君の相棒は大空の狼なんだから、『ヴェント』だ」
「長…」
でも、妙にしっくりくる。
あの最後の光景だった、柔らかい笑顔。
気が抜ける。
でも、相棒は気に入ってる。
「だってさ、両方入れたくて!」
「……」
「その目、絶対にバカにしてる!意味は『大空のエンマ』と『風』。いい名前だろ?」
「ダメツナめ。ネーミングセンスも鍛えないといけないとはね」
黒の男がため息をつく。
「リボーンヒドい。いい名前じゃん、な、気に入った?」
一応頷いておく。微かに。
途端に軟弱野郎の顔が明るくなった。
「ほらな?」
もう一回ため息をついた。
「うーん、みんなにはどう言おうかな?隼人と武にはバレてるけどみんなに言ったら叱られるよな。ヤダな~、あ、そーだ、エンマはオレの親戚って事で!な」
「オレはすぐにここから出る」
「おーし、決まり!隼人たちには黙ってもらわなきゃ」
「話を聞け!」
「へ?あ、そうか、オレ、ボンゴレファミリー十代目ボス、沢田綱吉!ツナでいいよ。あっちはリボーン。オレの家庭教師」
コイツは、あまりにも記憶の中の人と似ている。
だけど、きっと違う。そんな訳、あるはずがないんだ。
だから、今はコイツに構っているヒマはないんだ。
「んな事はどうでもいい!離せ!」
どういうつもりだ?
「君は?」
「?」
「名前!」
「オマエが勝手に付けただろ。それより行かせろ!」
「いいから」
「エンマ・ディ・スィエッロとヴェント」
「よろしく」
手が差し出される。
どうすればいいかわからず、その手を見つめる。
ツナはオレの手をつかんで、上下に動かした。
へらりとツナの顔が笑顔になる。
急いで後ろに飛んで、棒を構える。
「どういうつもりだ!」
「握手だよ。知らない?」
「…初めて」
「なぁ、エンマってどれぐらい戦えるの?」
「何で教えなきゃいけない?」
「まず聞くけど、家は?」
「ない」
「どうやって寝てる?」
「コ…ヴェントと」
名前を使ったからか、ツナが笑顔になる。
「家族は?」
「…いない。コイツだけ」
「じゃぁさ、ウチに入らない?」
「「へ?」」
オレとリボーンの声が重なる。
「三食風呂仕事勉強ベッド付きで」
「ざっけんな!こんなどこの馬の骨ともわからねえガキ!」
「…オマエ、どういうつもりだ?」
その笑顔をにらみつける。
相手はへらへら笑ってて、何を考えているか読めない。
「だってさ、このごろちょっと敵ファミリーといざこざが多くてさ、戦力不足なんだ。コイツ、絶対に鍛えたら強くなるって!」
「…ちったぁボスらしくなったじゃねえか」
「……」
「な、入る?」
「…いいけど」
コイツは油断ならない。
入らないって言ったら、何かされそうな気がする。
何を考えてるか読めない。それに、鍛えてくれるらしい。
しかも屋根と食い物付き。
それなら、生きていける。とりあえず、いい条件だ。
「なら、さっそくかてきょー探さなきゃ!リボーン、今空いてるのは?」
「獄寺と山本以外の守護者は全員任務だ。コロネロ、スカル、風がいる」
「そっか…コロネロと隼人はかわいそうだし、スカルと風は他のファミリーだしな...」
「パシリはかまわねえよ。使っちまえ」
「そんな!リボーン、一応ファミリー違うんだから」
「チッ」
「舌打ちしない!じゃ、武に任せるか」
「おし」
「ま、エンマの実力知りたいし」
机の上の電話を操作してたリボーンが戻ってくる。
「ツナ、代われ」
ツナが電話に出て、“うん、あの子だよ”とか、“ありがと、頼むよ”とか言ってる。そしてまたリボーンになって、終了。
「スクアーロの所に行ってる。戻ってくるまで時間がかかる」
「そっか。んじゃ、エンマの事話してよ」
でも...
じいさまが言ってた。
“簡単に心を人に許すな”
それがじいさまの口癖だった。
かがみこんでヴェントの頭を撫でる。
「何してるの?」
「コ…ヴェントには人の本性を見抜く能力がある」
そして小声で、
「やれるか?」
ヴェントが一声吠え、ツナに近寄る。
ツナはカッチンコッチンで直立不動。
その周りをヴェントが嗅ぎ回る。
そして前脚を折ってツナの手に頭を擦り付けた。
「だいじょぶ、だ」
「当たり前だ。こいつは何も考えちゃいねえ」
心なしか、リボーンの機嫌が悪い。
それもヴェントをにらみつけている。
ヴェントはこっちに戻ってきた。
そして今度はツナを変な目で見ている。つまり、リボーンは同性のツナが好きなんだ。
気づいた途端、吹き出しそうになる。
そりゃツナは可愛いし華奢だ。
でもツナはまったく気づいていない。
「ねぇ、今何歳?」
「十」
「うわ、思ったよりも幼い」
「悪いかよ」
「いや…」
「どうして匣の使い方がわかるの?」
「ぼっくす?あぁ、この箱の事か。じいさまが教えてくれた」
「じいさまって?」
オレは話し始めた。棒は構えたまま。
「それは…
いい獲物だ。
どこの出身かがわからない。
東洋人っぽい顔立ちだが、髪の色素は薄く東洋人らしくない。
たぶん、すぐに誘いに乗るな。
早朝、人も少ない。
オレは、箱の陰から飛び出した。
ソイツの手からリングを引きちぎり、脇を駆け抜ける。
「あっ!」
間抜けな声。
たぶん、間抜けな顔もしてる。
必死で走って、小さな路地に駆け込み、すぐに身を潜め、リングに光を灯して箱に合わせる。
スルリと、音もなく滑り出して来たのはオレの相棒、オレの胸くらいまである狼。
「軟弱そうな野郎だ」
ささやけば、コクリと頷く相棒。
オレももう一度相棒と一緒に出て来た棒を握りしめる。
カツカツと、路地に踏み込んでくる足音。
「困ったな~」
それと伴い、のんびりした声。焦ってないのか?
「行くぞ!」
相棒に飛び乗って隠れ場から飛び出る。
いた。すぐ横。
その目の前を駆け抜け、入り組んだ道を抜ける。そして、行き止まりになっている場所に着いて、振り返る。
大丈夫だ、ちゃんと着いて来てる。
よかった。たまに、諦める奴がいる。
スピードを落とさないと来れないし。
リングも金にはなるけど、来てもらった方が儲かる。
「あぁ、やっと追いついた」
狼から降りて、飛び、ソイツの頭上を飛び越し後ろに着く。
これで、逃げられない。
「悪いが、ここに金目の物は置いてってもらう」
「そしたらオレが怒られんだけど」
何かが、おかしい。何かが変だ。
ソイツの、琥珀色の目とかなりの癖っ毛の亜麻色の髪を見つめる。
コイツ、男か?あまりにも華奢で、小さ過ぎる。
でも、それだけじゃない...
他に何か...
肩。肩だ。普通なら肩が上下して、息が切れているはず。
なのに、汗の一つもかいていない。
それに、あまりにも焦りがなすぎる。
まるで、出かける時に愛犬にじゃれられて困っているようだ。
「ナメるな!」
「ナメてないんだけどなぁ」
一瞬、キュッと大きな瞳が細まる。
ゾクリと、体が震えた。
怖い。何だか、ライオンににらまれたような。
「十代目!」
「ツナ!」
後ろだ!後ろから誰か来る!
もう一回飛んで、相棒の所に戻る。
ソイツの後ろから現れたのは...
二人。軟弱野郎と同じくらいの年齢。お揃いのスーツ。
ただ、一人は赤いシャツでもう一人は青。
赤シャツは銀髪で目つきが悪く、灰緑の瞳。
ベルトに、妙に凝った飾りがついている。
青シャツは、もっと背が高くて唇の下に傷がある。
黒い短髪で、精悍な顔立ち。黒い瞳。
「隼人、武!ゴメン、心配かけた!」
「ツナ、ホントだぞ!」
「じゅーだいめー!」
「わかったから隼人泣かないで!」
「十代目、何ですかそのガキは?殺気がだだ漏れなんですけど」
「あぁ、リング取られちゃってね」
「あんだと!このガキ!返しやがれ!」
すんごい凄んでる。
しかも、何だか首筋が妙にピリピリする。
青ネクタイも、さっきから目つきが鋭い。
手の中のリング。
コイツら、強い。
敵わない。
分が悪すぎる。ズラかろう。
「相棒!」
ガオッと一声吠え、オレを乗せた相棒が行き止まりの塀に飛び乗る。
「リングはもらってくぜ!」
塀から降りて、逃げよう…と思ったのに、背後にいたはずの軟弱野郎はオレの目の前にいて、相棒は飛び降りるのをヤメた。
仕方ない、強行突破だ。
「十代目!」
「隼人も武も下がってて。オレ一人でやる」
違う。さっきまでの軟弱野郎とは、違う。
目つきも。何もかも。それに、額からオレと同じ光を灯している。
拳からも。グローブつけてるし。
オレは、棒を構えて飛び出した。
打ち込む。渾身の力を込めて。なのに、かわされる。
もう一回。今度は後ろ。なのに、一度も当たらない。
しかも、相手もかわすばかりで全然攻撃してこない。
その内オレは力尽きて、地面に落ちた。
肩が大きくビクリと跳ねる。
後ろにいる!軟弱野郎!
「ちょっと来てもらうよ」
振り返ったオレの目に映ったのは、柔らかな笑顔。
そして、首へ強い衝撃。
体が地面に落ちる。
握りしめた拳が緩み、奪ったリングが転がり落ちる。
相棒の威嚇する声。
そして視界がスウッと狭まった。
気づいたら、フカフカのベッドに寝ていた。
慌てて飛び起きる。
「…ここは…?」
でかいベッド。天井付き。
部屋は豪華。金や赤の壁紙に、大きな窓。
外はばかでかい庭。
そこで、記憶を探ってみる。
確か、軟弱野郎のリング奪って、誘い込んだけど強くて、気絶した...
相棒がいない!
腰に触ると、ちゃんと箱はあった。
リングもある。
光を灯して箱に当てると、相棒が出てきた。
「ゴメン、エサ…」
コイツは腹が減れば光を食う。
「とりあえず、ここから出るか」
コクリと頷く相棒。
ベッドから飛び降りて、手を相棒の首に乗せながら、ちゃんと手に武器を握ってドアを押し開けて出る。
絨毯が素足が埋もれるほど深くて、気持ちいい。
とりあえず、横の部屋に行こう。
ドアノブに手を当てた瞬間、話し声が聞えた。
「このダメツナ!」
「ヒドいよ、リボーン」
「何だってあんなガキ…」
オレの事か。
「だってさ、アイツあんな小さいのに炎を扱えるんだよ!それにおお…」
軟弱野郎の話し声が止まる。不自然に。
誰かが無理矢理止めたように。
「待て。おい!そこにいるんだろ、ガキ!」
オレか。気づかれてた。
観念するしかない。
ドアをゆっくり開けながら、武器を構えて相棒と入る。
そこには、重そうなどっしりした机と、二つ向かい合わせの深紅のソファと、 そこに足を組み両腕を背もたれに伸ばして悠々と座る黒スーツに黒帽子(鍔になぜかカメレオンが乗っている)で鋭い黒い瞳に、ツンツンした黒い髪という(肌だけ白い)黒尽くめのオレと同じくらいの奴と、向かいにはなぜか正座している軟弱野郎。
「へぇ…確かに、こりゃ珍しい」
黒の男がこっちをじぃっと見つめる。
何だか嫌だ。だからにらみつけてやった。
「こりゃまた迫力あるガキだな」
「な?しかも、大空の炎!」
「ダメツナ、何でだ。仮にもオマエは最大マフィアのドンだぞ?スパイだったらどうする気だ?」
顔を輝かせた軟弱野郎を、黒の男が叩く。
軟弱野郎は逃げるようにこっちへ来た。
「コイツはスパイじゃない」
「どうしてだ」
「超直感。あと、似てるんだ」
「似てる?」
「あぁ。何だか、オレのミニサイズだ」
「確かに…だが、数倍目つき悪いぞ」
「それに、目」
「目がどうした?」
「初めて会った頃の炎真の目に似ている」
「確かに」
誰だ、エンマって?
それに、オレの髪は茶色だけど、癖っ毛は癖っ毛でもオレのは毛先だけが跳ねている。それに、髪は長くて、後ろで縛ってるし。目は確かに琥珀色だけど、コイツみたいにまん丸じゃない。
「な、オマエ名前何だ?」
「…ない相棒もオレも。それより、早く行かせろ」
「ない?どうやって呼ばれてた?それに、少しゆっくりしてけよ」
「じいさまはオレを小僧って呼んでたから。行かせろ」
「じゃ、オレが名前を付けてあげるよ!そうだな…炎真の髪型に似てるし、大空の炎が使えるから…『エンマ・デ・スィエッロ』。君の相棒は大空の狼なんだから、『ヴェント』だ」
「長…」
でも、妙にしっくりくる。
あの最後の光景だった、柔らかい笑顔。
気が抜ける。
でも、相棒は気に入ってる。
「だってさ、両方入れたくて!」
「……」
「その目、絶対にバカにしてる!意味は『大空のエンマ』と『風』。いい名前だろ?」
「ダメツナめ。ネーミングセンスも鍛えないといけないとはね」
黒の男がため息をつく。
「リボーンヒドい。いい名前じゃん、な、気に入った?」
一応頷いておく。微かに。
途端に軟弱野郎の顔が明るくなった。
「ほらな?」
もう一回ため息をついた。
「うーん、みんなにはどう言おうかな?隼人と武にはバレてるけどみんなに言ったら叱られるよな。ヤダな~、あ、そーだ、エンマはオレの親戚って事で!な」
「オレはすぐにここから出る」
「おーし、決まり!隼人たちには黙ってもらわなきゃ」
「話を聞け!」
「へ?あ、そうか、オレ、ボンゴレファミリー十代目ボス、沢田綱吉!ツナでいいよ。あっちはリボーン。オレの家庭教師」
コイツは、あまりにも記憶の中の人と似ている。
だけど、きっと違う。そんな訳、あるはずがないんだ。
だから、今はコイツに構っているヒマはないんだ。
「んな事はどうでもいい!離せ!」
どういうつもりだ?
「君は?」
「?」
「名前!」
「オマエが勝手に付けただろ。それより行かせろ!」
「いいから」
「エンマ・ディ・スィエッロとヴェント」
「よろしく」
手が差し出される。
どうすればいいかわからず、その手を見つめる。
ツナはオレの手をつかんで、上下に動かした。
へらりとツナの顔が笑顔になる。
急いで後ろに飛んで、棒を構える。
「どういうつもりだ!」
「握手だよ。知らない?」
「…初めて」
「なぁ、エンマってどれぐらい戦えるの?」
「何で教えなきゃいけない?」
「まず聞くけど、家は?」
「ない」
「どうやって寝てる?」
「コ…ヴェントと」
名前を使ったからか、ツナが笑顔になる。
「家族は?」
「…いない。コイツだけ」
「じゃぁさ、ウチに入らない?」
「「へ?」」
オレとリボーンの声が重なる。
「三食風呂仕事勉強ベッド付きで」
「ざっけんな!こんなどこの馬の骨ともわからねえガキ!」
「…オマエ、どういうつもりだ?」
その笑顔をにらみつける。
相手はへらへら笑ってて、何を考えているか読めない。
「だってさ、このごろちょっと敵ファミリーといざこざが多くてさ、戦力不足なんだ。コイツ、絶対に鍛えたら強くなるって!」
「…ちったぁボスらしくなったじゃねえか」
「……」
「な、入る?」
「…いいけど」
コイツは油断ならない。
入らないって言ったら、何かされそうな気がする。
何を考えてるか読めない。それに、鍛えてくれるらしい。
しかも屋根と食い物付き。
それなら、生きていける。とりあえず、いい条件だ。
「なら、さっそくかてきょー探さなきゃ!リボーン、今空いてるのは?」
「獄寺と山本以外の守護者は全員任務だ。コロネロ、スカル、風がいる」
「そっか…コロネロと隼人はかわいそうだし、スカルと風は他のファミリーだしな...」
「パシリはかまわねえよ。使っちまえ」
「そんな!リボーン、一応ファミリー違うんだから」
「チッ」
「舌打ちしない!じゃ、武に任せるか」
「おし」
「ま、エンマの実力知りたいし」
机の上の電話を操作してたリボーンが戻ってくる。
「ツナ、代われ」
ツナが電話に出て、“うん、あの子だよ”とか、“ありがと、頼むよ”とか言ってる。そしてまたリボーンになって、終了。
「スクアーロの所に行ってる。戻ってくるまで時間がかかる」
「そっか。んじゃ、エンマの事話してよ」
でも...
じいさまが言ってた。
“簡単に心を人に許すな”
それがじいさまの口癖だった。
かがみこんでヴェントの頭を撫でる。
「何してるの?」
「コ…ヴェントには人の本性を見抜く能力がある」
そして小声で、
「やれるか?」
ヴェントが一声吠え、ツナに近寄る。
ツナはカッチンコッチンで直立不動。
その周りをヴェントが嗅ぎ回る。
そして前脚を折ってツナの手に頭を擦り付けた。
「だいじょぶ、だ」
「当たり前だ。こいつは何も考えちゃいねえ」
心なしか、リボーンの機嫌が悪い。
それもヴェントをにらみつけている。
ヴェントはこっちに戻ってきた。
そして今度はツナを変な目で見ている。つまり、リボーンは同性のツナが好きなんだ。
気づいた途端、吹き出しそうになる。
そりゃツナは可愛いし華奢だ。
でもツナはまったく気づいていない。
「ねぇ、今何歳?」
「十」
「うわ、思ったよりも幼い」
「悪いかよ」
「いや…」
「どうして匣の使い方がわかるの?」
「ぼっくす?あぁ、この箱の事か。じいさまが教えてくれた」
「じいさまって?」
オレは話し始めた。棒は構えたまま。
「それは…
ツナ
遅い。あまりにも遅すぎる。
最大のマファ、ボンゴレファミリー十代目ボス、沢田綱吉ことツナは執務室で仕事をサボりながら頬杖をついて、考え込んでいた。
彼の(鬼)家庭教師リーボンはだいたい、一週間の仕事を与えれば一日で終わらせてしまうほどの出来る男だ。たとえ、世界の反対側に送り込んでも。(そして、その理由が常にツナと一緒にいたいからだという事には、ツナは毛ほども気づいていない。それに、次から次へとツナが仕事を与えるため、その願いは叶わない)。
「何やってるんだろ...」
彼には普通(といっても、ボンゴレの平均で。通常の人ならば早くとも半年はかかる)一ヶ月で終わらせる仕事を与えた。リボーンならば三日で終わらせるはず。だが、三週間たったのに、まだ帰って来ない。
「ま、やたらと修行やセクハラされずに済んでるけど...いないはいないで静か過ぎる気もする...」
そして、ツナは深いため息をついた。
「慣れすぎるってのも問題だな」
クルクルと、指先でボールペンを弄ぶ。
その時、扉が静かにギイッと開いた。
「おかえり、マーモン」
ツナは顔も上げずに、ボールペンを回しながら言う。
「ム...気づいてたの?」
呪いをかけられ実年齢よりかなり幼く見える虹の子供、(十歳)アルコバレーノのマーモンがフワフワと浮かびながら入ってくる。
「気配がだだ漏れ。ヴァリアーの報告?」
ヴァリアーには一週間前に二週間分の仕事を与えたのに...ウチの幹部は早過ぎる。これじゃ、仕事はいくらあっても足りない。
「そう。無事終了」
「またXANXUSに押し付けられたの?」
二度目のため息と共に元十代目候補の名前を出す。
「まぁ、そんなトコだね」
実際は、ザンザスに睡眠薬を盛り、ジャンケンで死闘を重ね、勝ち取ったのだ。帰ったら思いっきりヴァリアー本部の屋敷は全壊している覚悟で。
「最北の屋敷、使っていいから」
ボンゴレの敷地にはかなりの数の屋敷が建ち並ぶ。
「今度は、ちゃんと合意で報告役を引き受けてね」
そして、そのまたかなりの数が毎回報告役を奪われたザンザスによって崩壊している。
「ム...お見通し?」
「ま、ね。ザンザスは理由なくこれほどの建物は壊さない。だいたい、寝起きか何かやられた時。それでも一つじゃぁ、半壊程度だ。両方が揃わなきゃね」
「ム...でも、どうせもいいよ。ボクらは生きてるから」
「頼むから部下をその時に寄せ付けないでね。人手が足りないんだ」
「わかったよ...ねぇ、今回の任務かなり難しかったんだけど」
「だからこそ、ヴァリアーなんだ。生憎、アルコバレーノも守護者も同じ時に任務を与えちゃってね」
「ム...今回けっこう疲れたんだけど...ご褒美くれない?」
「報酬ならちゃんと払ってるでしょ。ボーナス?」
「いや、もっといいものがいいね」
「何?」
マーモンはフワリとツナの膝に飛び乗った。
そして、ツナの顔を見上げる。その拍子にフードがはずれ、可愛らしい笑顔が露になる。いつもと違って子供らしい。
「キスして」
「え、えぇ?オレでいいの?他にもっとカッコいい人がいるだろ?」
苦笑しながらマーモンの髪を撫でる。
ツナは気づいていない。彼の茶色いフワフワの髪と大きな琥珀色の瞳は、可愛いとボンゴレ内では取り合いになっている事を。そして、イケメンである獄寺やベル、山本、雲雀、骸よりも人気がある事を。
「ツナヨシがいい」
「こんな時だけ子供らしくするなよ」
マーモンの顔が近づく。
「お、おい!オレまだ何も...」
「おいバイパー!何してんだ、コラ!」
ツナの言葉は飛び込んで来た虹の子供によって遮られた。
「チッ」
「マーモン!舌打ちなし!」
いつの間にかフードをかぶったマーモン。
「オ、オマエ!今ツナに何しようとした、コラァァ!」
「何ってキスだよ」
「ななな、ツナ!ずるいぞ、コラ!」
「オレ、何も言ってないぞ?」
虹の子供の一人、コロネロはツナの机に飛び乗った。
「オ、オレにもしろ、ツナ!コラ!」
顔を真っ赤にしてライフルを構えるコロネロ。
「コロネロ、ライフルしまいなよ!」
「そこま、待った!」
震えながら飛び込んで来たのは、なぜかカルカッサファミリーなのにボンゴレの任務を受けたスカル。
「パシリが何言ってんだ!コラ!」
ライフルを扉に向けて遠慮なくぶっ放すコロネロ。
それは悲鳴を上げてしゃがみ込んだスカルの頭上を飛び、壁にのめり込む。
「あぁ...」
悲しみのこもった三度目のため息が、ツナの口から漏れる。それは、“修理費が...”という意味が入っている。
「ヒィッ!すいません、コロネロ先輩!」
「沢田ぁ!鍛えてやる!」
「ラル!ちょっとコロネロを落ち着かせて!」
「お、おう!ってオマエは何してんだ!離れろバイパー!」
銃をかまえるラル・ミルチ。
「イヤだね。ボクが先だったんだから」
謝るスカル。さらに乱射するコロネロ。そしてさらに壁に弾丸がのめり込む。
銃を構えてもツナがいるので撃てずに威嚇で他を撃ちまくるラル。
そして、スカルを完璧無視しながら緑のアルコバレーノ、ヴェルデは部屋に入った。
「フフ、新しい薬が出来ました、どうです、沢田綱吉?」
「いや、ヴェルデの薬はかなりヤバいから...」
「ただし、この薬は口移しでなきゃいけないんですよ」
「人の話聞いてる?」
「ヴェルデ、テメェ!ツナに触るんじゃねえコラ!」
「コロネロ、守ってくれるのは嬉しいけど、ライフルしまって...」
「——聞きづてなりませんね、ボンゴレ」
「む、骸!?オマエ、どこから入って来たんだ!?ってか、離れろこの変態ナッポー」
後ろから抱きついて来た骸を殴り、吹っ飛ばす。
「ウ...ウグ....ツンデレも可愛いですね、ボンゴレ」
「いや、違うから。キモいから」
「ほら、綱吉も引いてるじゃないか南国腐れ果実」
いつのまにか、吹っ飛ばされたドアは奥に転がり、ドア枠に(たぶんドアを吹っ飛ばした張本人の)雲雀恭弥がもたれかかっている。
「トリ男、いたんですか。だいたい、何言ってるんですか?ボンゴレは照れてるだけですよ?」
「綱吉を汚さないでもらえる?」
「彼は私の物ですよ?」
「いや、違うから。だいたい、恭弥さんも骸も武器構えない!」
「クフフ、あなたはいつか倒さなきゃいけないと思ってたのですよ」
「奇遇だね。僕も同じ意見だよ」
「二人とも!」
「十代目!任務終わりました!」
「隼人!って、マーモン、どさくさに紛れて迫らない!」
部屋に飛び込んだ獄寺隼人の目に映ったのは、戦っている雲雀と骸でもなく、ライフルをヴェルデとスカルの向けて乱射するコロネロでもなく、今にもツナにキスしようとするマーモンであった。
「じゅ...だい...め...」
「隼人、任務報告?というより、マーモン、いい加減ヤメて!」
「ツーナ!任務終わったのな」
完璧な氷の彫像と化した隼人の横をニコニコした雨の守護者が止まる。
「ツ...ナ...?」
「武!ちょっと訳が...」
「十代目、これはどういう事ですか?」
氷が溶けた隼人が無理矢理引き攣った笑顔を作る。
「ツナ?説明してもらえるのな?」
「は、隼人?とりあえず、ダイナマイトしまって?武も目が笑ってないよ?それに何で刀かまえてるの?」
「沢田ぁ!極限任務終わったぞ!」
叫びながら来たのは晴れの守護者、笹川了平。
ちなみに、武、隼人、了平の三人は乱射されるコロネロのライフルをすべて避けている。さすがと言うべきか。
「了平さん!」
「ぬ?極限困ってるな、沢田!とりあえず、マキシマムキャノン!」
「部屋壊さないでください!」
「芝生!テメェ、何やってんだ!」
「ム、タコヘッド!何やった!」
「テメェが部屋壊してんだろうが!」
「何だかおもしろそうなのな~」
「了平さんも隼人も戦わないで!それに骸も恭弥さんもいい加減、ヤメてよ!コロネロもライフルしまって!あぁ、武も加わらない!」
誰も聞いていない。
「ボンゴレ!任務終わりました!」
入って来た雷の守護者、ランボに吹っ飛ばされた木片が当たる。
「う...ガ...マ...ン...」
「ランボ!泣かないで!」
「沢田さん!お茶行きませんか?」
「ユニ!」
「姫!勝手に抜け出さないでください!」
「γさん!」
窓からγとユニが侵入して来た。ユニがツナに抱きつく。
「沢田さん!行きましょ!」
「あ、オマエはジッジョネロの!」
「何ですか?」
「十代目を誘ってるんじゃねぇ!」
「姫!戻りましょ...」
「えぇ~、ずっと仕事してたでしょ?」
「γさん、ユニは任せます」
「ツーナ!遊びに来たぜ!」
「ディーノさん!ちょっと収めるのに手伝ってください!」
「跳ね馬...君はいつか倒さなきゃって思ってたんだけど」
「お、恭弥!また手合わせするか」
「ディーノさん!ファミリーが心配しますよ!?」
「撒いてきたからだいじょーぶ!」
「余計心配しますよ!?って聞いてないし」
「ゔぉぉい!邪魔するぜ!」
「ししっ、プリンセス(綱吉)からご褒美もらえるって聞いたけど...」
「ハァーイ!来たわよ!」
「ボス~!」
「カスが!」
「ヴァリアー!何しに来たの!?」
「プリンセスがご褒美にキスしてくれるって聞いたもん~!」
その瞬間、部屋の中の全員が凍り付き、振り返った。
「ム...キミらまで来る事はなかったのに」
「そうはいかねぇな」
「そうそう。オレだってもらわなきゃ、だってオレ、王子だもん」
「王子関係ないでしょ?それにご褒美って...」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「綱吉(沢田・ツナ・プリンセス・ボンゴレ・沢田さん)のキス」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「はぁっ!?そんなの知らないよ!」
「マーモンが...」
「ム...キミたちは呼んでないよ。ツナヨシのキスを受けるのはボクで十分」
「「「「「「「「「「「「「「「「「(オレ・ボク・私)だ(です・だよ・だぞ・だぜ)!」」」」」」」」」」」」」」」」」
「オレ何も言ってないー!」
だがツナのムンクの叫びは無視され、それぞれ戦い始める。
「ツナァ!戻ったぞ!お帰りとご褒美のキスを両方しろぉ!」
窓から派手に飛び込んだのは――(鬼)家庭教師リボーン。
「リボーン!テメェ何言ってんだ、コラァァ!」
ライフルをリボーンに撃ちまくるコロネロ。
そして、さらにヒートアップする戦場。(ツナの執務室)
そして、ため息をついたツナの肩がピクッと動き、目にも見えぬ早さで右腕が真横に伸び、上下へと動いて最後に中央で止まる。その拳が開かれると、弾丸、手榴弾、ダイナマイトが落ちる。ツナはそれぞれを持ち主に投げ返し、立ち上がった。その手の後ろには、中学時代の同級生、笹川京子から送られて来た花瓶。
カリッ。
何かを噛み砕く音に全員がピタリと止まり、恐る恐る振り返る。
そこには、額に炎を灯し、Xグローブをはめた彼らのボス、ボンゴレデーチモ。
「オマエら、氷付けにされて美術館送りと丸焼きで三ヶ月間お仕置きとどれがいい?」
“どっちもやだ!”
という、部下の心の叫びを見事な笑顔で無視するツナ。
“すっごく可愛いのになぁ”
「特別に選ばせてやるから、さっさとしやがれ」
微妙に語尾が荒い。
「そこに全員、正座しろ」
恐る恐る並ぶ部下。
「あ、あの~」
震えながら手を上げる骸。彼は、なぜか毎回巻き込まれている。
「何だ?変態腐れナッポー」
「ヒッ!ボンゴレ、お仕置きだけって言うのは...」
「ない」
今度は牛柄のシャツの腕が伸びる。
「ランボ」
「ボンゴレ、僕は無関係なんですけど」
「ランボ、そろそろ連帯責任という言葉を習ってもいい時期だと思う」
「そんな...」
「あ、どっちにしても三時間説教付きだからな」
「オレじゃない、オレじゃない、あんな極悪育てたのはオレじゃない...」
蒼白な顔で呪文のように唱えるリボーン。
「何か言ったか?セクハラ家庭教師」
「い、いえ!何も言ってません!」
“ツナ、怖いのな~”
“じゅ~だいめ~”
“ボンゴレ...怖過ぎる”
“手も足も出ねえぜ、コラ!”
“ム...手強いな”
“このオレがカスに...”
——心の声はツナに届かない。
「じゃ、さっさと選べ」
「......」
「選ばないなら、オレが選ぶぞ」
「......」
「氷付けで美術館なら新しい守護者探さなきゃならないから面倒だし、丸焼きでいいか」
「......」
「あ、この部屋の執務室の修理費は全員の給料から差し引くからな」
「え....」
「それから次はないからな」
「...じゅ、十代目、それはどういう意味ですか?」
「次は全員解雇って事」
「ヒッ...」
部屋にいる全員の顔が蒼白から完全な白に変わる。
「それじゃ、いくよ。オペレーションX」
ツナの後ろに構えられた手から、柔の炎が放たれる。
『10,000FB、15,000FB、17,000FB、20,000FB、23,000FB、25,000FB、27,000FB、30,000FB、32,000FB、35,000FB...ゲージシンメトリー』
どんどん上がっていく単位に全員がもうすでに死んだような顔に変わる。
“この量絶対に殺される...!”
明らかに消し飛ぶ気まんまんだ。
「リャッ!」
ツナの前に構えた手から剛の炎が放たれ、ボンゴレ邸に悲鳴が響き渡った。
その後談。
奇跡的に、全員が意識不明の重体で助かり、即死がなかったため勝手に漢我流とクーちゃんを召還したツナによって、助けられた。(かなりムサい姿だったが)
「いやぁ、みんな意識不明の重体で良かったね!即死だったらさすがのオレも助けられなかったよ!」
とても明るい笑顔でミイラ状態の部下に話す十代目ボス。
そのさらに後、ボンゴレの下っ端へのインタビュー。
「ホントに、ウチの幹部に悲鳴を上げさせられるのはボスだけなんですよ!」
後日談。
説教を終え、全員が痺れた足でふらつきながら立ち上がる。
「ツナヨシ、ご褒美は...」
「んー、確かにご褒美はいるよな」
「じゃぁ、ツナ、誰か一人を選ぶのは?」
「どうしよっかな...」
「じゅ、十代目!右腕のオレに...」
「ツナ!かてきょーのオレに決まってんだろ!」
「ム...ボクが最初だったんだけど」
「みんな、落ち着けって」
また戦いを再開しようとする部下を収めるツナ。
正直、別に褒美はいいのだ。ただ、誰かを選ぶのは...
「ボス...報告...」
「クローム!」
顔が輝くツナ。
一瞬でもはや形もない扉の横へと移動し、クロームに近づく。
そして、驚く彼女の頬へとくちびるを押しつけ、離れた。
「ご褒美はクロームに決まり!」
実際、毎日理不尽な骸の要求に耐えながら頑張っている健気な彼女には値するご褒美だろう。
「え?ボス?」
とりあえず、殺気立ってる部下から彼女を守らなくてはいけない。
「クローム、ケーキに付き合って」
何も言えずにいる彼女の手を引っ張り、ボンゴレ邸脱出。
そして、彼は望んだ自由なつかの間の休憩時間を手に入れた。
一番のご褒美は、それだったかもしれない。
遅い。あまりにも遅すぎる。
最大のマファ、ボンゴレファミリー十代目ボス、沢田綱吉ことツナは執務室で仕事をサボりながら頬杖をついて、考え込んでいた。
彼の(鬼)家庭教師リーボンはだいたい、一週間の仕事を与えれば一日で終わらせてしまうほどの出来る男だ。たとえ、世界の反対側に送り込んでも。(そして、その理由が常にツナと一緒にいたいからだという事には、ツナは毛ほども気づいていない。それに、次から次へとツナが仕事を与えるため、その願いは叶わない)。
「何やってるんだろ...」
彼には普通(といっても、ボンゴレの平均で。通常の人ならば早くとも半年はかかる)一ヶ月で終わらせる仕事を与えた。リボーンならば三日で終わらせるはず。だが、三週間たったのに、まだ帰って来ない。
「ま、やたらと修行やセクハラされずに済んでるけど...いないはいないで静か過ぎる気もする...」
そして、ツナは深いため息をついた。
「慣れすぎるってのも問題だな」
クルクルと、指先でボールペンを弄ぶ。
その時、扉が静かにギイッと開いた。
「おかえり、マーモン」
ツナは顔も上げずに、ボールペンを回しながら言う。
「ム...気づいてたの?」
呪いをかけられ実年齢よりかなり幼く見える虹の子供、(十歳)アルコバレーノのマーモンがフワフワと浮かびながら入ってくる。
「気配がだだ漏れ。ヴァリアーの報告?」
ヴァリアーには一週間前に二週間分の仕事を与えたのに...ウチの幹部は早過ぎる。これじゃ、仕事はいくらあっても足りない。
「そう。無事終了」
「またXANXUSに押し付けられたの?」
二度目のため息と共に元十代目候補の名前を出す。
「まぁ、そんなトコだね」
実際は、ザンザスに睡眠薬を盛り、ジャンケンで死闘を重ね、勝ち取ったのだ。帰ったら思いっきりヴァリアー本部の屋敷は全壊している覚悟で。
「最北の屋敷、使っていいから」
ボンゴレの敷地にはかなりの数の屋敷が建ち並ぶ。
「今度は、ちゃんと合意で報告役を引き受けてね」
そして、そのまたかなりの数が毎回報告役を奪われたザンザスによって崩壊している。
「ム...お見通し?」
「ま、ね。ザンザスは理由なくこれほどの建物は壊さない。だいたい、寝起きか何かやられた時。それでも一つじゃぁ、半壊程度だ。両方が揃わなきゃね」
「ム...でも、どうせもいいよ。ボクらは生きてるから」
「頼むから部下をその時に寄せ付けないでね。人手が足りないんだ」
「わかったよ...ねぇ、今回の任務かなり難しかったんだけど」
「だからこそ、ヴァリアーなんだ。生憎、アルコバレーノも守護者も同じ時に任務を与えちゃってね」
「ム...今回けっこう疲れたんだけど...ご褒美くれない?」
「報酬ならちゃんと払ってるでしょ。ボーナス?」
「いや、もっといいものがいいね」
「何?」
マーモンはフワリとツナの膝に飛び乗った。
そして、ツナの顔を見上げる。その拍子にフードがはずれ、可愛らしい笑顔が露になる。いつもと違って子供らしい。
「キスして」
「え、えぇ?オレでいいの?他にもっとカッコいい人がいるだろ?」
苦笑しながらマーモンの髪を撫でる。
ツナは気づいていない。彼の茶色いフワフワの髪と大きな琥珀色の瞳は、可愛いとボンゴレ内では取り合いになっている事を。そして、イケメンである獄寺やベル、山本、雲雀、骸よりも人気がある事を。
「ツナヨシがいい」
「こんな時だけ子供らしくするなよ」
マーモンの顔が近づく。
「お、おい!オレまだ何も...」
「おいバイパー!何してんだ、コラ!」
ツナの言葉は飛び込んで来た虹の子供によって遮られた。
「チッ」
「マーモン!舌打ちなし!」
いつの間にかフードをかぶったマーモン。
「オ、オマエ!今ツナに何しようとした、コラァァ!」
「何ってキスだよ」
「ななな、ツナ!ずるいぞ、コラ!」
「オレ、何も言ってないぞ?」
虹の子供の一人、コロネロはツナの机に飛び乗った。
「オ、オレにもしろ、ツナ!コラ!」
顔を真っ赤にしてライフルを構えるコロネロ。
「コロネロ、ライフルしまいなよ!」
「そこま、待った!」
震えながら飛び込んで来たのは、なぜかカルカッサファミリーなのにボンゴレの任務を受けたスカル。
「パシリが何言ってんだ!コラ!」
ライフルを扉に向けて遠慮なくぶっ放すコロネロ。
それは悲鳴を上げてしゃがみ込んだスカルの頭上を飛び、壁にのめり込む。
「あぁ...」
悲しみのこもった三度目のため息が、ツナの口から漏れる。それは、“修理費が...”という意味が入っている。
「ヒィッ!すいません、コロネロ先輩!」
「沢田ぁ!鍛えてやる!」
「ラル!ちょっとコロネロを落ち着かせて!」
「お、おう!ってオマエは何してんだ!離れろバイパー!」
銃をかまえるラル・ミルチ。
「イヤだね。ボクが先だったんだから」
謝るスカル。さらに乱射するコロネロ。そしてさらに壁に弾丸がのめり込む。
銃を構えてもツナがいるので撃てずに威嚇で他を撃ちまくるラル。
そして、スカルを完璧無視しながら緑のアルコバレーノ、ヴェルデは部屋に入った。
「フフ、新しい薬が出来ました、どうです、沢田綱吉?」
「いや、ヴェルデの薬はかなりヤバいから...」
「ただし、この薬は口移しでなきゃいけないんですよ」
「人の話聞いてる?」
「ヴェルデ、テメェ!ツナに触るんじゃねえコラ!」
「コロネロ、守ってくれるのは嬉しいけど、ライフルしまって...」
「——聞きづてなりませんね、ボンゴレ」
「む、骸!?オマエ、どこから入って来たんだ!?ってか、離れろこの変態ナッポー」
後ろから抱きついて来た骸を殴り、吹っ飛ばす。
「ウ...ウグ....ツンデレも可愛いですね、ボンゴレ」
「いや、違うから。キモいから」
「ほら、綱吉も引いてるじゃないか南国腐れ果実」
いつのまにか、吹っ飛ばされたドアは奥に転がり、ドア枠に(たぶんドアを吹っ飛ばした張本人の)雲雀恭弥がもたれかかっている。
「トリ男、いたんですか。だいたい、何言ってるんですか?ボンゴレは照れてるだけですよ?」
「綱吉を汚さないでもらえる?」
「彼は私の物ですよ?」
「いや、違うから。だいたい、恭弥さんも骸も武器構えない!」
「クフフ、あなたはいつか倒さなきゃいけないと思ってたのですよ」
「奇遇だね。僕も同じ意見だよ」
「二人とも!」
「十代目!任務終わりました!」
「隼人!って、マーモン、どさくさに紛れて迫らない!」
部屋に飛び込んだ獄寺隼人の目に映ったのは、戦っている雲雀と骸でもなく、ライフルをヴェルデとスカルの向けて乱射するコロネロでもなく、今にもツナにキスしようとするマーモンであった。
「じゅ...だい...め...」
「隼人、任務報告?というより、マーモン、いい加減ヤメて!」
「ツーナ!任務終わったのな」
完璧な氷の彫像と化した隼人の横をニコニコした雨の守護者が止まる。
「ツ...ナ...?」
「武!ちょっと訳が...」
「十代目、これはどういう事ですか?」
氷が溶けた隼人が無理矢理引き攣った笑顔を作る。
「ツナ?説明してもらえるのな?」
「は、隼人?とりあえず、ダイナマイトしまって?武も目が笑ってないよ?それに何で刀かまえてるの?」
「沢田ぁ!極限任務終わったぞ!」
叫びながら来たのは晴れの守護者、笹川了平。
ちなみに、武、隼人、了平の三人は乱射されるコロネロのライフルをすべて避けている。さすがと言うべきか。
「了平さん!」
「ぬ?極限困ってるな、沢田!とりあえず、マキシマムキャノン!」
「部屋壊さないでください!」
「芝生!テメェ、何やってんだ!」
「ム、タコヘッド!何やった!」
「テメェが部屋壊してんだろうが!」
「何だかおもしろそうなのな~」
「了平さんも隼人も戦わないで!それに骸も恭弥さんもいい加減、ヤメてよ!コロネロもライフルしまって!あぁ、武も加わらない!」
誰も聞いていない。
「ボンゴレ!任務終わりました!」
入って来た雷の守護者、ランボに吹っ飛ばされた木片が当たる。
「う...ガ...マ...ン...」
「ランボ!泣かないで!」
「沢田さん!お茶行きませんか?」
「ユニ!」
「姫!勝手に抜け出さないでください!」
「γさん!」
窓からγとユニが侵入して来た。ユニがツナに抱きつく。
「沢田さん!行きましょ!」
「あ、オマエはジッジョネロの!」
「何ですか?」
「十代目を誘ってるんじゃねぇ!」
「姫!戻りましょ...」
「えぇ~、ずっと仕事してたでしょ?」
「γさん、ユニは任せます」
「ツーナ!遊びに来たぜ!」
「ディーノさん!ちょっと収めるのに手伝ってください!」
「跳ね馬...君はいつか倒さなきゃって思ってたんだけど」
「お、恭弥!また手合わせするか」
「ディーノさん!ファミリーが心配しますよ!?」
「撒いてきたからだいじょーぶ!」
「余計心配しますよ!?って聞いてないし」
「ゔぉぉい!邪魔するぜ!」
「ししっ、プリンセス(綱吉)からご褒美もらえるって聞いたけど...」
「ハァーイ!来たわよ!」
「ボス~!」
「カスが!」
「ヴァリアー!何しに来たの!?」
「プリンセスがご褒美にキスしてくれるって聞いたもん~!」
その瞬間、部屋の中の全員が凍り付き、振り返った。
「ム...キミらまで来る事はなかったのに」
「そうはいかねぇな」
「そうそう。オレだってもらわなきゃ、だってオレ、王子だもん」
「王子関係ないでしょ?それにご褒美って...」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「綱吉(沢田・ツナ・プリンセス・ボンゴレ・沢田さん)のキス」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「はぁっ!?そんなの知らないよ!」
「マーモンが...」
「ム...キミたちは呼んでないよ。ツナヨシのキスを受けるのはボクで十分」
「「「「「「「「「「「「「「「「「(オレ・ボク・私)だ(です・だよ・だぞ・だぜ)!」」」」」」」」」」」」」」」」」
「オレ何も言ってないー!」
だがツナのムンクの叫びは無視され、それぞれ戦い始める。
「ツナァ!戻ったぞ!お帰りとご褒美のキスを両方しろぉ!」
窓から派手に飛び込んだのは――(鬼)家庭教師リボーン。
「リボーン!テメェ何言ってんだ、コラァァ!」
ライフルをリボーンに撃ちまくるコロネロ。
そして、さらにヒートアップする戦場。(ツナの執務室)
そして、ため息をついたツナの肩がピクッと動き、目にも見えぬ早さで右腕が真横に伸び、上下へと動いて最後に中央で止まる。その拳が開かれると、弾丸、手榴弾、ダイナマイトが落ちる。ツナはそれぞれを持ち主に投げ返し、立ち上がった。その手の後ろには、中学時代の同級生、笹川京子から送られて来た花瓶。
カリッ。
何かを噛み砕く音に全員がピタリと止まり、恐る恐る振り返る。
そこには、額に炎を灯し、Xグローブをはめた彼らのボス、ボンゴレデーチモ。
「オマエら、氷付けにされて美術館送りと丸焼きで三ヶ月間お仕置きとどれがいい?」
“どっちもやだ!”
という、部下の心の叫びを見事な笑顔で無視するツナ。
“すっごく可愛いのになぁ”
「特別に選ばせてやるから、さっさとしやがれ」
微妙に語尾が荒い。
「そこに全員、正座しろ」
恐る恐る並ぶ部下。
「あ、あの~」
震えながら手を上げる骸。彼は、なぜか毎回巻き込まれている。
「何だ?変態腐れナッポー」
「ヒッ!ボンゴレ、お仕置きだけって言うのは...」
「ない」
今度は牛柄のシャツの腕が伸びる。
「ランボ」
「ボンゴレ、僕は無関係なんですけど」
「ランボ、そろそろ連帯責任という言葉を習ってもいい時期だと思う」
「そんな...」
「あ、どっちにしても三時間説教付きだからな」
「オレじゃない、オレじゃない、あんな極悪育てたのはオレじゃない...」
蒼白な顔で呪文のように唱えるリボーン。
「何か言ったか?セクハラ家庭教師」
「い、いえ!何も言ってません!」
“ツナ、怖いのな~”
“じゅ~だいめ~”
“ボンゴレ...怖過ぎる”
“手も足も出ねえぜ、コラ!”
“ム...手強いな”
“このオレがカスに...”
——心の声はツナに届かない。
「じゃ、さっさと選べ」
「......」
「選ばないなら、オレが選ぶぞ」
「......」
「氷付けで美術館なら新しい守護者探さなきゃならないから面倒だし、丸焼きでいいか」
「......」
「あ、この部屋の執務室の修理費は全員の給料から差し引くからな」
「え....」
「それから次はないからな」
「...じゅ、十代目、それはどういう意味ですか?」
「次は全員解雇って事」
「ヒッ...」
部屋にいる全員の顔が蒼白から完全な白に変わる。
「それじゃ、いくよ。オペレーションX」
ツナの後ろに構えられた手から、柔の炎が放たれる。
『10,000FB、15,000FB、17,000FB、20,000FB、23,000FB、25,000FB、27,000FB、30,000FB、32,000FB、35,000FB...ゲージシンメトリー』
どんどん上がっていく単位に全員がもうすでに死んだような顔に変わる。
“この量絶対に殺される...!”
明らかに消し飛ぶ気まんまんだ。
「リャッ!」
ツナの前に構えた手から剛の炎が放たれ、ボンゴレ邸に悲鳴が響き渡った。
その後談。
奇跡的に、全員が意識不明の重体で助かり、即死がなかったため勝手に漢我流とクーちゃんを召還したツナによって、助けられた。(かなりムサい姿だったが)
「いやぁ、みんな意識不明の重体で良かったね!即死だったらさすがのオレも助けられなかったよ!」
とても明るい笑顔でミイラ状態の部下に話す十代目ボス。
そのさらに後、ボンゴレの下っ端へのインタビュー。
「ホントに、ウチの幹部に悲鳴を上げさせられるのはボスだけなんですよ!」
後日談。
説教を終え、全員が痺れた足でふらつきながら立ち上がる。
「ツナヨシ、ご褒美は...」
「んー、確かにご褒美はいるよな」
「じゃぁ、ツナ、誰か一人を選ぶのは?」
「どうしよっかな...」
「じゅ、十代目!右腕のオレに...」
「ツナ!かてきょーのオレに決まってんだろ!」
「ム...ボクが最初だったんだけど」
「みんな、落ち着けって」
また戦いを再開しようとする部下を収めるツナ。
正直、別に褒美はいいのだ。ただ、誰かを選ぶのは...
「ボス...報告...」
「クローム!」
顔が輝くツナ。
一瞬でもはや形もない扉の横へと移動し、クロームに近づく。
そして、驚く彼女の頬へとくちびるを押しつけ、離れた。
「ご褒美はクロームに決まり!」
実際、毎日理不尽な骸の要求に耐えながら頑張っている健気な彼女には値するご褒美だろう。
「え?ボス?」
とりあえず、殺気立ってる部下から彼女を守らなくてはいけない。
「クローム、ケーキに付き合って」
何も言えずにいる彼女の手を引っ張り、ボンゴレ邸脱出。
そして、彼は望んだ自由なつかの間の休憩時間を手に入れた。
一番のご褒美は、それだったかもしれない。
