医療解析
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「時間外手当は払わない」という奈良県立病院の愚かな言い草

「過酷な当直」、産科医5人が超勤手当1億円要求 奈良
2006年10月21日


 奈良県立奈良病院(奈良市)の産婦人科医5人が04、05年の超過勤務手当の未払い分として計約1億円の支払いと、医療設備の改善を求める申入書を県に提出したことがわかった。医師らは「報酬に見合わない過酷な勤務を強いられている」と訴えており、要求が拒否された場合は、提訴も検討する方針。

 県によると、同病院の年間分娩(ぶんべん)数は05年度で572件。産婦人科関連の救急患者は年間約1300人にのぼる。産婦人科医が当直をした場合、1回2万円の当直料が支払われるが、当直の時間帯に手術や分娩を担当することも多いという。


 申入書によると、当直について労働基準法は「ほとんど労働する必要がない状態」と規定しており、実態とかけ離れていると指摘。当直料ではなく、超過勤務手当として支給されるべきで、04、05年の当直日数(131~158日)から算出すると、計約1億700万円の不足分があるとした。現在9床の新生児集中治療室(NICU)の増床や、超音波検査のための機材の充実なども要求している。


 医師の一人は「1カ月の超過勤務は100時間超で、医師の体力は限界に近い。更新期限を過ぎた医療機器も少なくなく、これでは患者の命を救えない」と訴える。


 県は、産科医を1人増員するなどの改善策に乗り出すとともに、医療設備の改善を検討しているが、超過勤務手当の支払いは拒否した。担当者は「財政難のため、すべての要求に一度に応えるのは難しい」と説明する。
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A企画ホームページ   奈良県立病院の愚かな言いぐさ

奈良県立病院
奈良県立病院

【時代は変わりつつある】

 時代は大きく変わりつつあります.

 今まで勤務医は,時間外を度外視にして働いてきました.その理由としては,考えられることが拙著のホームページ(なぜ医師は今まで時間外を請求しなかったのか→クリック )に出ています.

 しかし,研修医制度で状況は大きく変わりました.1,2年目の医師が研修医となり,当直が出来なくなった.その分が上の医師にどっと回ってきました.東京に若い医師が偏在し,地方大学の医局には医師が入らなくなったので,病院に勤務していても,人が増えて,仕事の分担量が減ると言うことはこの先考えられません.(参照→1,2年目の医師の貢献度

 奈良県の対応もおぞましいものです.まず,医療設備を整えることと,時間外手当をフェアに支給することとは全く別問題であると言うことです.医療設備を整えることは検討するが,時間外手当は支給しない,などと言うこと言えない.労働基準法にすすんで違反するようなことを県が言ってはいけませんし,どこにも話は通らないでしょう.

 払わなくても良しとするならば,法律を大幅に変えなくてはならない.言い分は100%,5人の産婦人科医が正しいのです.

 財政難だから・・・時間外手当は払えない.こんな,ふざけた理由がありますか.時間外は払えないけど,夜も昼も働いて下さいね・・・こんな事に誰が従えますか.誰も従えないでしょう.

【勤務医のおかれたおかしな現状・・・働く人ほど嫌われる】

 実は,勤務医は本当に色々です.この5人の産婦人科医のように,日夜,働き詰めになって働いている人もいるのですが,勤務医がみんなこのように働いているわけではない.その一方で,午前中だけ外来をして,午後からはずっとテレビゲームをやっている医者もいるものです.むしろその様な医者の方が,奈良県立病院のような大きな病院では多いのが現状です.

 また,給料のシステムは,このような病院は年功序列ですから,この5人の産婦人科医のように夜も寝ないで働いている医師より,テレビゲームばかりをしている年配の医師の方が給料が良かったりすることが多くある.このようなことが,働く医師のやる気をなくするんです.

 私が勤務しているときにも,いろいろな医師がいました.躁鬱で1時間しか外来を出来ない年配の医師や,午前中,空いている外来を行い,午後からパソコンに向かっている.何をしているのかな,と見に行くと,ワープロの画面になっているのだが,実はいつもそこでゲームをやって時間を潰しています.私の方がずっと外来患者も多く,手術も立て込み,救急患者も出入りして,夜もなく昼もなく働いていましたが,私の方が若いという理由で,給料はそのロートルの先生方の方が,1.5倍くらい良いのです.

 このような給料体系で,必死に夜も昼も働いている医師は病院の売り上げにも貢献しているし,さぞかし,病院の方で大事にされているのだろうと思うと,そのようなことはありません.むしろ逆なんです.仕事を沢山する勤務医というものは,「外来の看護婦が足りない」とか「ベッドが足りない」とか「手術枠が足りない」とか「時間外手当はどうなっているのだ」とか,色々な問題を投げかけてくるものですから,院長からは煙たがられるものです.

 むしろ,私の勤務していた病院では,躁鬱の先生や,テレビゲームの先生の方が,院長と付き合いも長いし,文句も言わないので,院長からは重宝されていました.

 「それなら,そんな働かない医者は辞めさせてしまえば良いではないか」と考える人もいるでしょう.私や,同期の仲間も「あいつら働かないな.それでいて,俺たちより給料多く取ってるくせにな.辞めさせれば良いのに」といつも話していました.しかし,それはできないのです.病院というのは,規模に応じて医師の数が決められているので,彼らに辞めてもらったらその基準を満たすことが出来ず,病院も困るのです.

 実際はあべこべで,私の方が病院から嫌われていたわけで,その様なところで働いていたって全然面白くないですよ.そのような病院には明日がないと判断して,辞職しました.

【奈良県民の気持ちを分からない病院・県の幹部こそ,県民の敵】

 奈良県立病院も状況は同じです.奈良県内にいくつもないし,大阪にだって数の少ない,新生児ICU を,夜も寝ないで維持している,この5人の産婦人科医は,奈良県にとっては宝物ですが,病院幹部,県の幹部からは大いに嫌われているんでしょうね.新聞に出る前にかなりのやり取りがあったものと,お察しいたします.

 奈良県はもう一人産婦人科医を増員すると言っていますが,極めて難しいでしょう.不可能でしょう.こんなことを言うこと自体,お笑いです.

 それより,この5人の産婦人科医との人間関係は大いに崩れてしまいました.この5人の医師が辞めてしまう可能性の方が1000倍位高いと思います.この5人の後釜なんてもうどこにもいません.そうすると新生児のICUまで持つ高度医療機関が,潰れてしまうことになりますが,幹部がこのような低い見識では仕方ないでしょう.県の幹部や病院の幹部はこの5人の産婦人科医を嫌っているが,奈良県民にとっては宝物.

 「時間外手当など払えるか!」と言って,辞めさせてしまう県の幹部や病院長を奈良県民は支持するのでしょうかね.むしろ,天誅を与えるべきなのは,おかしな裁定をした,県の幹部や病院長だと思います.

 病院幹部の見識が低ければ,どんなに大きな病院だって,どんなに大都市にあったって,どんなに今まで医局との関係が密でうまくやっていたって,一瞬で潰れます.江別市立病院が良い例です.

 こんな意識の低い,というか奈良県民の心情とかけ離れた人達が運営している,県立病院など時間の問題で全科,駄目になると思いますよ.「時間外は払わない」と公言した病院ですからね.奈良県立病院は労働基準法の治外法権になっているとでもこの兼幹部は考えているのでしょうか.  残るのは,テレビゲームばかりしている医者や,躁鬱で1時間しか外来をできない医者ばかりとなるでしょう.

 まあ,今回の騒動でのおかしな対応で,奈良県立病院はだめだ,ということが満天下に広まってしまった.「時間外は支払わない」と公言するような病院は,はっきり言って駄目です.

 ここまで話がこじれた以上,近いうちに,この5人の産婦人科医も辞めるでしょう.ここまでこじれてしまった病院で働くことは,本当に危険です.訴訟,内部告発など病院側から何をされるか分からない.

 しかし,本当に奈良県民に必要なのは新生児ICUを担当する5人の産婦人科医たちで,奈良県民の敵は今や県の幹部.私は産婦人科の医師達に1億の時間外を払っても安いものだと思いますよ.なぜなら,この産婦人科医が辞めてしまったら,事実上,新生児ICUは二度と出来ないでしょうから.しかし,話はもうこじれるだけこじれました.どちらにしても奈良県立病院から新生児ICUは消えるでしょう.

 奈良県民も,県の対応に大いに怒らなければならないと思います.

 奈良県立病院から新生児ICU と産婦人科の消えたら,その責任は誰にあるのか徹底的に追及すべきでしょう.


【今後の対策】

 ちょっと前までは,官公立の病院は赤字減らしに必死でした.今,それも大事だが,ちょっと待ってくれ,と言いたい.新臨床研修医制度のために,未曾有の医師不足の時代です.今は,多少,カネを使っても良いから医師を確保しておくことが最優先事項です.勤務医に気持ちよく有給休暇を取らせ,気持ちよく時間外手当を払うべきです.

 医師がいなくなると,それを求めるのには大変な苦労をしなくてはならない.カネも使う.人材派遣会社に頼むと,医師を一人派遣してもらうのに,300 - 400万円かかると思っていた方がよい.せっかく来ても,すぐに辞めてしまう医師もいるだろうし,私の経験では,その様な医師は勤務してもせいぜい1-2年です.そしたら,また,300-400万円かけて,人材派遣会社に頼まなくてはならない(その場合の費用→クリック ).注)すぐ辞められても,300-400万は払わなくてはいけません.

 残念ながらこのようにして集めた医師にチーム医療などはじめから望むべくもありません.

 奈良県立病院のように,5人の産婦人科医がチームを組んで高度な新生児ICUをやっているとしたら・・・今回の請求・・・2年分の時間外手当5人で1億円.一人2000万円・・・つまり,1年間の時間外が一人1000万円.安い! それでいて,高度なチーム医療が維持できる・・・すばらしい!  本当にそう思います.

 そう考えると,時間外労働手当を拒否した県のやり方は本当に残念です.まったくの愚策でした・・・・

【計算・・・なぜ年間の時間外手当が1000万になるのか】

 医師の時給は,年収1500万くらいの人で,だいたい時給5000円から6000円.

1)終業~23時,および,翌朝5時から8時:医師の時間給(注)×1.25 が,その時間帯の時間給になる.

2)更に,23時~翌朝5時(深夜労働):医師の時間給(注)×1.5 が,その時間帯の時間給になる.

*但し休みの日はもっと高くなります.

新聞によると,月の時間外労働が100時間超と言います.大雑把に,時間給x1.5を時間外の時給とすると・・・時間外の時給は7500-8500円くらい.したがって,月の時間外労働手当は75万から85万円.したがって,年間の時間外手当は1000万になると言うわけです.(時間外手当の参照記事→クリック

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 著者である私は,このA企画を,時間外手当,有給休暇など,医師の待遇をきちんとして,医師を求人したり,勤務している医師に長くいてもらうためのアドバイスを病院に提供するために立ち上げました.

 しかし,奈良県立病院のように,医師に時間外手当を支給する気のまったくない病院は救いようがありません.

A企画ホームページ   奈良県立病院の愚かな言いぐさ

研修医の漂流が起こるか

研修医制度の問題点を述べます. 参考ホームページ http://members3.jcom.home.ne.jp/3729975002/

 研修医は果たしてきちんとした研修を受けられるのか?  研修医が漂流すると言うことはないのか? ということを述べます.

 「研修医が待遇の良い病院を求めるのは当たり前」と言えば当たり前.私が今,研修医なら,待遇の良い病院に行くうかもしれない.

 問題は,その結果がどうなったか,と言うことですね.

 それは,私も散々述べているし,ちまたに,研修医制度はだめだった,というサイトを沢山見つけることができる.

 結果を考えると,研修医制度をはじめたせいで,医師の科ごとの偏在,地域の偏在が顕著になってきてしまった.

 研修医制度前よりも悪くなるというのは,実はすごく滑稽なんです.

 だって,マッチングセンターなる組織を作り,そこにも金がかかるし,研修医の給料をある程度,保障するため国も予算を組んでいる.

 その結果が今の状態.そこを私は問題にしています.

 また,初期研修期間の2年をどう考えるのか.私はこの期間は,医師としての考え方を身につける大事な期間だと思っていました.これは本当にその道の第一人者に教官としてやってもらいたい.誰でもできるものではない.

 しかし,道内で言えば,研修病院に上げられた市中病院のほとんどが,このようなことをするのに,私は役不足だと思います.内情を知っているだけに,正直に言うと,こんなところで研修してどうなるんだろう,と思っています.

 だって,自分らの医局の関連病院も多いし,医局に入ればこのような病院にいくらでも行くことができる.中には,東京のように有名な病院がたくさんあるところならまだしも,他府県でも,状況は北海道と似たり寄ったりだと思います.

 百歩譲り,初期研修の2年は大したことはないのだ.3年目からは重要だ,と言うのであれば,その時にどういうところで研修するのでしょう.初期研修である程度のお金をもらっていると,それ以上生活を落としたくない.その様な観点で後期研修の病院を選ぶと,とんでもないことに私はなると思います (これが浜西教授の意見 でもありますが).

 また,きっと,3年間の後期研修の後,自分の専門を変える人が今よりも沢山出てきます.私も,途中で他の科をやりたいなと思ったことが何度かありますが,何しろ医局というものに所属していた.医局を辞めるのは,ヤクザの組抜けほど大変ではないが,離婚する位大変です.だから,辞めないで今の専門を通すことができました.

 専門を変えた人も何人か知っていますが,ものすごい苦労をして,結局,あまり良いものになっていませんね.しかし,その様な「漂流者」のような人が今よりも沢山出てくるんじゃないかと思います.なにしろ縛りがなくなりましたからね.

 このような人は大きな病院では使い物にならないでしょう.小さな病院や,国保病院などではどうかというと,大丈夫かも知れないが,その様な病院が今,どんどん減っている.

 開業は・・・・開業なんかもう一つ大変.どんどん大変になっている,確固たる技術を持っていないと開業も病院でも勤まりません.当たり前だけど・・・

 私の言う事が少数派で変わった意見なら良いのですが,私の意見は多数派です.

 今は,医師不足が叫ばれていますが,医師の数自体は増えているし,一方で病院は減っています.老人病院もなくなります.
 私や私の仲間らが,学生時代に「医局でだめだったら,老人病院か北海道の田舎に行けば良いのだ.そうすれば飯は食える」と言っていましたが,今はどちらもなくなりつつあります.

 だから,近い将来,とんでもないほどの医師過剰という事態が起こるように思います.

 医師は技術屋ですから,医師過剰だろうが何だろうが,きちんとした技術を持っている医師は大丈夫でしょうが,お金のことばかり考え,大したことのない病院で「研修」と称して,ふらふらしている人は食いっぱぐれてしまうかも知れない.そのように思います.

 まとめると,
 ●「研修医が待遇の良い病院を求めるのは当たり前」と言えば当たり前であるが,そんなことをしていて,本当にその医師は技術を身に付けることができるのか?
 ●手間かけ,ヒマかけ作った研修医制度は,実はだめな制度ではないだろうか.


 参考ホームページ http://members3.jcom.home.ne.jp/3729975002/

従来の研修医制度とこの研修医制度の違い

【従来の医師の研修とこの新しい研修医制度とのちがいは?】

        目次    最近の医療情勢に対する解析(記事一覧)


  一般の人で勘違いをしている人が多いと思うが,平成16年に研修医制度が始まる前でも,医学部を卒業した1年目の医師はどこに勤めても良かった.卒業した大学の医局に入らなければならないという決まりなど,どこにもなかった.

 ただ,大学に入局する人が多かったことは確かだ.なんだかんだと言っても,大学には優秀な先輩医師が多いので,バランスの取れた研修が可能だし,医局には様々な情報が集まるし,何よりも医局に所属することにより,自分が将来活動する医療圏に仲間を多く作ることができる.

 医局員時代,あるいは,開業などして医局を退局しても,同じ医局に属していた者同志,世代や時代を超えて,「同じ釜の飯を食った」仲間として,独特の仲間意識,人間関係を形成することができる. 

 現在,自分は札幌市内で医業を営んでいるが,医局の仲間の支えというのは自分にとって大きいものであるし,このようなネットワークがなければ,今の自分はなかったであろうし,それ以前に,医師として潰れてしまっていたかも知れない.そのように思っている.

 個人的な話であるが私が卒業した20年前,私は東京の病院でレジデントとして研修をしたいと思った.なぜか.ただ東京という所で暮らしてみたかったのである.そこで,聖ルカ国際病院や関東逓信病院などを受けた.

 東京で研修するのは本人の勝手であるし,2年後に出身大学の医局に入りたいと言ったら,入局は許可されるものである.出身大学でなくても許可されるだろう.

 しかし,卒業と同時に同級生は医局に入って仕事をしているので,自分は,医師としては3年目であるが,医局員としては1年目という,ちょっとビハインドを背負ってしまうというのが問題点であった.

 今の研修医制度では,この入局時期が3年目からになったので,東京やらどこやらで初期研修を終えた後,母校の自分の専門とする医局に入局しても何らビハインドを負うことはない.

 ビハインドを負うか負わないか,これが今の研修医制度と昔の大きな違いである.

 結局,私の場合は,東京へ行くべきか,行かないべきか,北海道から離れるべきか,居るべきか,ビハインドを背負うべきか,どうするかで,迷いに迷ったあげくに,母校の医局に入ったわけだが,現在の卒業生は「ビハインド」を背負う必要がないので,もっと気楽に母校を離れて旅に出られるだろう.



【研修病院を選択する医学生の胸の内は?】

 2年間の初期研修をどこでやるか,と言うことで,研修医を迎え入れる病院はともかく,医学生の胸の内には,20年前の私ではないが,様々な思いが交錯しているというのは想像に難くない. 

 関東,関西の有名な病院,あるいは,東大,京大など,いわゆる超一流どころで2年間研修するのも決して悪くない.北海道で育ったので,東京や大阪,九州,四国,沖縄で2年位暮らすのも面白いぞ,という考えもある. オーソドックスに出身大学で研修しても良いのだし,北海道の地方都市の病院で研修するのも良い.

 北海道の地方都市の病院の中にはびっくりするほどの高給を研修医に出す所もある.このような経済的なものを重視する者もいる.

 また,内地の出身者で,北海道の大学を卒業したが,卒後は故郷に帰るという者もいる.というか,このようなパターンは非常に多い.私の同級生の卒業後の進路を見ると,内地の出身者はほとんどの者が卒業後,故郷に帰って行った.

 とにかく,いろいろな思いが交錯しているということである.医学生本人にしてみれば,すごく楽しいことであるだろうなと思う.まさに,青雲の志である.

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新たな夕張ショック 医師給与高騰?・・・医師の給料はどのように提示すべきなのか

新たな夕張ショック 医師給与高騰?
   ・・・医師の給料はどのように提示すべきなのか

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新たな夕張ショック 医師給与高騰? 気をもむ道内自治体 
                           北海道新聞 2006/09/25

 夕張市が市立総合病院の医師公募で、給与をこれまでより五百万円高くした「年間二千二百万円」を示したことに、医療関係者の間に波紋が広がっている。夕張市の提示額は自治体病院に勤める医師給与の平均を大きく上回る。他の自治体からは「医師給与の高騰が広がらないか」と不安の声が漏れ、給与を高くするだけでは良質の医療につながらないという指摘も出ている。

 道東の自治体病院の事務長は、夕張市による医師給与の大幅アップを聞いて、顔色を曇らせた。「高給を用意しないと、過疎地の病院に医師が集まらないというイメージにつながるのでは。せっかく医師の給与が下がってきたのに」

 一九九○年代半ばまで、道内の地方病院の医師給与は「青天井」が相場だった。「道東や道北では、医師一人に年間五千万から六千万円を払う病院がザラにあった」(道幹部)。約一億円を払い続けた道北の病院もあったという。
 これらの自治体にすれば、たとえ高額給与が財政を圧迫しても、医師が常駐することへの住民の安心感を「買った」わけだ。ここ数年は、自治体への交付税の削減などで「ない袖は振れない」と、五千万円を超すような「超高給」は影を潜めている。

 総務省によると、二○○四年度の全国の自治体病院の医師一人当たり給与額は、年間千四百九十万円。自治体の規模でみると、町村が千七百六十七万円と最も多いが、夕張市の提示額はそれよりも四百万円余り多い。
 地方の病院での医師不足は深刻さを増す一方なため、夕張市の提示によって、地域医療を守るためには「給与を上げざるを得ない」という議論が再燃する恐れもある。

 一方、高給の「効果」が出たためか、夕張市の公募に対し、二十四日までに二人の医師から問い合わせが同市に寄せられた。

 ただ、地域医療に医師を引き付けるためには、高給だけではムリだとの声は根強い。
 「最近の医師たちは医療事故を恐れている。当直が複数体制になっているか、対処できない急患を近隣の大病院へ搬送できるか?などの支援態勢を重視している」。札幌の医師紹介会社の幹部は、そう指摘する。

 札幌市内のベテラン医師は「夕張市立総合病院と同じ規模・内容の札幌の一般病院の場合、給与額は年間千七百万円くらい。さらに別の病院でアルバイトすれば、夕張が提示した額に近い所得は手に入る」と説明する(注)。この医師は「高額給与だからといって、医師が夕張市に殺到することはないだろう」とみている。
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関連ホームページはこちらClick

1.ただ,給料を高くすればよいのか

ゴルゴ13

 例えば,ゴルゴ13には,一回のミッションごとに業界の相場からかけ離れた法外な謝礼が支払われているが,彼の請け負う依頼はどれもこれも厳しいものばかりで,並の殺し屋なら成功も生還も出来ないだろう.

 何を言いたいかというと,いくら高い報酬をもらっても,出来っこないことだってある.
 もっと具体的に,この新聞記事に沿って云えば,2200万円の年収をもらったからと言って,沢山当直やりなさい,救急もじゃんじゃん診なさい,って云われたら「おれのルールを理解していない,困った依頼人だな」というのが,私の本音だな.

 例えば,尾鷲市立病院で50代の産婦人科医に年収5520万を提示し,招聘したが,実際の勤務内容は,分娩室の隣に部屋を作り,そこで寝泊まりしていたそうである.結局,1年間で休暇は2日間だったという.このような勤務をこの産婦人科医のような50代の人が3 - 4年続けると,本当に過労のためポックリと逝ってしまうことがある.

 病院での医師の仕事を云うのは,ややもすると365日,24時間拘束というのもあり得る.したがって,年収2200万は結構だが,この後が大事である.以下,箇条書きにする.

 ○当直は月に何回か.また,当直料は1日いくらか.法令では,当直とは寝当直を意味するが,本当にそうか.当直と称して救急外来に張り付かせ,べろべろになるまで仕事をさせても,「これが当直である」と言う悪質な病院もあるが,お宅はどうか?  当直料は2200万に込みなのか.

当直とは・・・常態として、ほとんど労働する必要のない勤務で、原則として定時的巡視、緊急め文書文は電話の収受、非常事態に備えての待機等を目的とするものに限ること(労働基準法より)


 ○救急外来はやっているのか.あるいは,24時間外来は空いていて,それに対応しなければならないのか.時間外手当は法令に基づいて支払われるのか? あるいは,年収2200万に込みなのか.
(時間外手当の法令に関してはこちらをクリック)

 まずは,このことが明らかにならなければ,安易に飛びつけないであろう.

 だから,高い給料を提示することも結構だが,当直,拘束時間,休暇等に関しても明示する必要があるのだ.(医師待遇 問診票  参考)


2.研修日 アルバイト日

 新聞に(注)を入れておいたが,週に1日の研修日を設けている病院もあるが,この時間でアルバイトをすると,年収が300-400万円くらい上がる.また,比較的人的に余裕のある病院であれば,週1日以外にもアルバイトや手術に他の病院に呼ばれていくなどして,もっと,稼ぐことが出来る.(注)の医師の発言はこのことを意味している.

 つまり,札幌市内で勤務していてもやりようによっては,その位の年収を上げている医師もいるのである.もちろん,この時こそ,本当の意味での医師の技量,そして,人間関係,信頼関係が大きくものを言うのである

 (研修日に関しての参考記事はこちらをクリック


3.夕張市立病院の今後


 夕張市が財政破綻したことは別に考えても,夕張市立病院に現在勤務している医師は5名しかいない.そして,そのうち2名は,辞意を表明している.残りの3名の内,1名は歯科医である.つまり,2名の医師が夕張市立病院の120ベッドを管理しなくてはならないわけだが,これは無理である.現在,病院廃業の危機に瀕していると言って良い.

 問題は,なぜこうなるまで放っておいたか,ということである.地域中核病院,あるいは,いやしくも,「市立病院」という名前を冠しているところは,医師が10人以上いなくてはならない.そうでないと,当直業務ができなくなる.何度も云うように,独りの医師が出来る当直は月に4日までである.これを超えると嫌気をさして辞めていく医師が続出することになる.だから,常勤医が10人を割りそうになったら,必死にいろいろとやっていかなくてはならない.

 研修医制度が始まり,医局に新人の医師が入局しなくなった.医局の関連病院は,往年の20%ほどになるだろう.そして,医局の関連病院は,地域の中核病院が多いので,何もしないと,70-80%の中核病院(市立病院,労災病院,協会病院,赤十字病院,厚生病院など)が,医師不足のため崩壊するだろう.札幌や旭川にある大きな病院は,今後とも医局からの医師派遣を受けられるであろうが,それ以外は未知である.医科大学のある,札幌,旭川以外の中核病院と言われているところは,医局以外から医師を募集しないとどうにもならなくなるだろう.

 したがって,早急に医師募集のノウハウを身につけなければならない.そのノウハウを身につけるためには,A企画に相談するのもひとつの手であろう.

 追)旭川,と先ほど言ったが,旭川医大の医局に入局する医師数は激減している.「このままでは本体(大学)もあぶない」(旭川医大関係者)という声すらも聞かれる.

夕張市立病院
夕張市立病院

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江別市立病院、産婦人科も医師ゼロ 北大派遣打ち切り

2.産婦人科医の引き上げ

江別市立病院、産婦人科も医師ゼロ 北大派遣打ち切り、来春にも  
                   2006/09/20 北海道新聞

 【江別】江別市立病院は二十日、現在二人いる産婦人科の常勤医のうち一人が年末までに辞職、残る一人も北大が派遣を打ち切るため来春で辞職すると発表し た。このため産婦人科は、後任の医師を確保できない限り、本年度末で休止となることが確実となった。同病院では九月末までに内科の常勤医師全員が辞職する ことが決まっている。

 同病院の産婦人科は八月まで三人の常勤医師がいたが、一人が同月末で帯広市内の病院に移り、九月から二人体制となっていた。同病院によると、二人のうち 一人は年内に派遣元の金沢医大に復帰。残る一人についても、派遣元の北大産婦人科医局から「来年四月からは派遣できない」との連絡があったという。

 このため、同病院は十二月一日以降の新規の出産予約の受け付けを停止した。既に同病院にかかっている妊婦についても予定日が十二月十六日以降の場合は、別の医療機関を紹介する。

 産婦人科は当面、主に婦人科外来の診療に当たるが、十月二日以降は新患は受け付けないという。

 同市の小川公人市長は「二十二日の市議会厚生常任委員会までコメントできない」と話している。

関連ホームページClick here

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 そうこうしている内に,産婦人科も総引き上げとなるようである.私の予想したとおり,もう,沈没船から逃げ出す鼠のようにワーーーと医師の撤退がこれから始まるだろう.もうすでに病院としては機能していない.
 江別市立病院の外来表を見るとそれがよく分かる. 

 内科医師は9月一杯で退職であるが,半月前から有給休暇を取って事実上,すでに解散状態である.外来はまったく埋まっていない.(外来表 クリック  平成18年9月22日現在 ).



3.頑迷な固執
 しかし,この場に至ってまで頑迷にも,愚かにも,江別市立病院は,まだ,夜間の救急外来を続けようとしている.
 江別市立病院の出す募集要項を見ると,夜の7時から朝まで勤務できる求めている  .昼の医師もいないのに夜の医師を捜してどうするのだ.なんという愚かさであろうか.(江別市立病院 医師募集)

 江別でやっていた救急外来は,病院とは切り離され,市役所の建物の中に移されるという.しかし,ここで誰が救急の当直をするのだ.やっぱり市立病院に勤務している医師か.そうだとすると,今までと状況はまるで変わらない.
 救急外来に固執したため全戦線が崩壊し,病院機能が喪失する状況を招きつつある.

 江別市立病院は病院として残りたいのであれば,即,救急外来を停止しなくてはならない.また,市役所の中の救急室に市立病院の医師を関わらせてはいけない.その様な事を明確に宣言しなければならない.それが,病院再興の第一歩となろう.それを今やらなければ,きっと近い内に瓦解するであろう.

4.誰が彼らを嗤えるだろうか

 しかし,これは江別の市当局者の無能さに責任の全てを帰せばそれで良いのだろうか.彼らの無能さを思いっきり罵倒するのは簡単だ.

 しかし,私はそうはしない.彼らは分からなかったのである.人間というものは前例のないことは分からないものである.

 今までは,医局の言うことを聞いていればそれで良かったのである.時に,すごく高い医療機器を買え,などの無理な要求もあったかもしれない.

  安いものなら,すぐに買えばよいし,高いものであれば,2 - 3年放っておいて様子を見ている.何度も医局から言われるようなら,「これは本当に必要なものかも知れない」と考え,ちょっと近隣の病院に様子を聞いて, そして,「医局の皆さんの勉強になるのなら,うれしいですよ」などと,ちょっと勿体を付けながら購入しておけば良かった.

 しかし,研修医制度が始まって状況はがらりと変わった.これからは病院は自分の頭で,医師を捜し,必要な物品を買い,医師の人数と業務のバランスは取れているかを考えていかなければならない.新しい時代が来たのである.

 もう,分からない,では済まされない.ちょっとした対応のミスが,病院崩壊にまで及ぶ大被害をもたらすこともある.

 このホームページを熟読され,諸事に間違いのない対応をされることを私は望んでいる.

平成18年9月22日

関連ホームページClick here


当たり前であったが,札幌医大にも派遣を断られた江別市立病院

当たり前であったが,札幌医大にも派遣を断られた江別市立病院
   ・・・が,まだ頑迷に,救急外来を手放さないとは!
関連ホームページClick here

1.札幌医大に医師派遣を要請するも断られる


 

江別市立病院に常勤医の派遣は困難 札医大が中間報告  
                         2006/09/20  北海道新聞


 江別市立病院の内科の常勤医が九月末で総辞職する問題で、常勤医の派遣を要請されていた札幌医大は十九日、医学部教授らで構成する医師派遣調整部会を開き、「十月一日からの派遣は困難」との中間結果をまとめた。北大の各医局からの派遣も難しく、内科医不在という異常事態がいつまで続くか、依然として不透明だ。

 同病院は八月下旬、札医大に内科の常勤医三-九人を十月一日から派遣するよう要請。内科の四講座(医局)が検討したが、派遣できると回答した講座は無かった。

 十九日の調整部会で、部会長の島本和明・札医大病院長は「社会的影響が大きく現時点で派遣不可と最終決定はしない。(常勤以外でも)どのような形なら派遣できるかを含め再検討したい」と述べ、十月中旬にあらためて結論を出す方針を示した。

 これまで内科医を派遣していた第一内科をはじめ、北大の各医局も派遣を要請されているが、「道内の多くの病院で医師が足りない中、江別だけを北大ぐるみ で支援するのは難しい。医局だけに頼らず、医師の公募を積極的にすべきだ」(医学部教授)との声が上がっている。

やけ酒


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【コメント】
 江別市立病院は札幌医大の医局にも院長も派遣含み(これは独自調査で判明)で医師派遣を要請したが,断られたようだ.

  江別市立病院の院長人事は北大第一内科の人事の一環であった.北大第一内科の推す人を院長にする代わりに,江別市立病院は北大第一内科から手厚い医師の派 遣を受けていた.世の中,何事もギブアンドテイクであろうし,この関係がちゃんとしてれば,両者の関係も末永くちゃんとするものだ.

 しかし,江別市立病院は,自分の所の医師を院長にしようとした.このギブアンドテイクの関係を崩しにかかったのである.


 そうなると,当然,ギブアンドテイクの関係が崩れたのだから,この業界の「しきたり」に従って北大第一内科は医師の引き上げをすることになる.また,折りもおり,内科医師らは日頃の激務がたたって青息吐息.まさに,引き上げの期は熟していたのである.

 本来,このようなことをしようと思ったら,事前に何処かの医局に声をかけておき,医師が引き上げられてもすぐに補填できるようにしておかなければならない.


 江別市立病院はあまりに無策だったし,また,時代が悪かった.研修医制度が始まってからどこの医局も医局員が入らなくなって人手不足.今までのジッツ(関連病院)を縮小するのに懸命なのである.

 江別市立病院は今まであまりつきあいのなかった,札幌医大にも声をかけたという(耳鼻科には札医大の耳鼻科の医局から人が派遣されていたようだ).

 一連のゴタゴタで,江別市立病院が推していた医師も院長になるのを辞退した.よって,江別市立病院は札幌医大に院長も含めて医師の派遣を要請したという.
 
 医局制度が崩壊した今,北大も札幌医大もないと思うし,こんな事を言うのは,個人的に嫌で,また,ちょっと時代遅れなせりふであると分かっていながら,あえて言わせてもらうと・・・・

------ああ! 札幌にありながら札幌市内とその近郊に有力なジッツを持たない札幌医大にしてみたら,これは,垂涎の好条件であった---------

 しかし,研修医制度が始まって,時代はもう変わったのである.

 もうすでに札幌医大も,医師を派遣できる力はないのだ.札医大の内科系の医局には例年10人以上の医局員が入ってきていたが,今やどこも往年の1/3程度.とてもじゃないが,江別市立病院に医師を派遣できる医局などありはしない.

 もっとも,一連のゴタゴタのあったところにあえて行ってみたいと思う人もいるはずがなのであるが・・・・


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臨床研修医制度の問題点  近畿医大 浜西教授 ご指摘

臨床研修医制度の問題点  近畿医大 浜西教授 ご指摘


近畿医大 整形外科教授 浜西先生のホームページより
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 近畿医大 整形外科の浜西教授が,ある新聞に対して臨床研修医制度の問題点を述べており,私,大いに感じるところがあったのでご紹介いたします.

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タイトル:新臨床研修医制度のもたらしたもの

---新聞様
 近畿大学整形外科主任教授の浜西千秋と申します。
 御紙の一昨日の記事について聞き、それを今日手に入れて読ませて頂きました。

 『研修医戻らず細る地方大学病院』という特集であります。よく調べられていると思います。
 さて細って行くのは大都会の私立大学も同様であります。

 私が今日メールを差し上げたのは新臨牀研修制度のもたらそうとしているものは、もはや大学vs一般病院、都会vs地方などという構図、その打開策は研修プラグラムが魅力的な病院こそ研修医を集める、地方はせめて外国留学させるなど待遇をよくする位しか引き止められない、といった単純な問題ではないということを御理解頂きたいと思ったからです。

 御紙は研修第一期生がこの4月以降、どのような専門科を選択したかを調査されたでしょうか。調査されれば大学に残るとか戻るとかの問題ではないことにお気付きになられることと思います。


 【整形外科3割強の減少,産婦人科は半減,眼科は2割減少,脳外科は75%減少】

 私は整形外科医ですので研修医が大体の進路をきめる2月末に全国の83大学医局にアンケートを行いました。大学医局とそれまで関連病院であった大病院が独自に専攻医として雇用した数を問い合わせたものです。計432名と言う数でした。

 今日現在、日本整形外科学会で新入会の手続きを済ませたものは393名ですので、430名を上回る事はないかもしれません。だとするとこれまでの入会者数は2001年683名、2002年648名、2003年621名でしたから3割以上の減少となります。

 昨日、産婦人科学教授を介して産婦人科学会に問い合わせましたら今年の新入会員は現在230名程度で2001年からの451、430、420名に比較すると半減しています。

 眼科では今年の大学とその関連病院の入局者は315名、それ以外の施設に入った者も 合計して355名で、以前は平均460名位でしたので2割の減少ということになります。


 そして脳外科学会では本年一月から現在迄なんと計60名の新入会しかなく、しかもそれには卒後1年目、2年目の研修会員も含まれているそうです。3年目の医師がうち半数の30名とすればそれまで2000年より229、226、218名の新入会者がありましたから約八分の一まで激減したようです。

 大所帯の外科学会の数はさすがに調べておりません。
これらの結果を御紙の方々はどのようにお考えになるでしょうか。
このような傾向が続くと、近い将来どのよう医療状況になるか推測していただきたいと存じます。
 研修医が何科を専攻としたか是非、御紙で調査して頂きたいと存じます。


【研修医はどのような考えで自分の専門とする科を選んだか】

第一期研修医の選択動向に関して私見を述べさせていただきます。

(1) 彼等が敬遠したのはかなりの技術的修練が今後、必要とされる科です。(将来メスをふるえる医師はもう不要だと思われるでしょうか。)

(2) 彼等が敬遠したのは、即、命を扱う科です。(近畿大学では内科入局者は多いのですが白血病のようにすぐに様態が急変し、生死ぎりぎりの状況をよく扱う血液内科にはゼロです)

(3) 彼等が敬遠したのは手術や治療で緊張を要求されストレスの多い(指導医が疲れ果てている)科です。

(4) 彼等が敬遠したのは手術や治療の結果が医療トラブルとしてマスコミにとりあげられやすい科です。

(5) 逆に彼等が選んだのは修練が不要で、一人前の医者らしい顔が早くできる科です。(どのような科か御推測下さい)

(6)彼等が選んだのは早く一人前に作り上げてくれそうな、患者が多くて何でもやらせてくれるらしい(医師が少ないので当然の)病院です。一昨日の記事にも出ていました『腕を磨くには一般病院の方が良い』という選択です。彼は何科を選んだのでしょうか。患者で腕を磨くのはまさか手術技術ではないことを願います。

(7) 同じ科であれば彼等が選ぶのは大きな関連病院を沢山持っている大都会の医局です。これまでにも大医局集中はありましたがその傾向は顕著です。整形外科では入局者数上位13医局に45%が集中しています。

(8)同じ科であれば彼等が選ぶのは待遇のよい病院です。これまで内容が悪くて大学関連病院になれなかったクラスの病院から、驚くような高給が卒後3年目の医師に提示されています。研修医にとって前代未聞のこれほどの誘惑があるでしょうか。新制度で問題の多かった病院でも金さえ出せば若い医師がいくらでも雇える道が開かれたのです。

 新制度で卒業生は全てなんとか自分で研修先を探すようにとマッチングを強いられました。その結果半数以上は大学医局関連研修から離れます。これには大学院での基礎研究も含まれますので日本の医学研究の大半を支えていた、医師による世界的研究は消えてゆくだろうことは御推測いただけると思います。

 もちろん新制度は研究のみならず医学教育の荒廃をも間違いなく招きます。
 医学生の教育に必須の解剖、生理、薬理、病理など基礎系の教室に何名入局したかお調べ頂きたいと存じます。
 7000名の研修医の中でおそらく殆どいないのではと推測します。これから医学生の教育は医師国家試験予備校の教師に依頼するしかない大学が増えて行くかもしれません。

 関東の私大の調査でわかった事は、本院の医局には入局者がいないが、分院の医局には結構いるということです。これは何を示しているのでしょうか。本院スタッフには学生の教育義務があるのに、分院にはないからです。また臨牀に専念できる分院の方が待遇が良い大学もあります。これでは本院には絶対に来ません。これも医学教育の荒廃につながるでしょう。

 一旦大学を離れた研修医が大学関連研修に戻る事はおそらくあり得ません。待遇が違い過ぎます。卒後2年で結構稼げる、これまでは考えられなかった待遇に味をしめた研修医は、その生活を維持できる病院を探すのが当然です。もし病院が一杯になって雇ってくれる病院がなければどうするでしょう。30数社ある民間斡旋業者に登録してその斡旋に依存するかもしれません。短期研修だけ経験し、見よう見まねで、病院の要望のままに何科の医師にでもなりかねない大量の医師群の出現は国民にとって危険ではないでしょうか。
 このあたりも調査していただければ大変な事情に気付かれると思います。

【結論】

 結論を申しますと、新臨牀研修制度は『医師としての人格育成や初期診療能力の修得』が目的であると謳っていますが、結局,研修医の功利性、利己性、端的に言えば欲望を解き放った制度でした。これまでのストレート入局時代には夢を感じ、面白そうだとか、自分にあっているとか、生き甲斐を感じる科にそのまま飛び込んで行けました。ところが2年間の初期研修と言うブランクの間に夢がしぼんでしまい、結局選ぶ基準が、早く一人前になれる科と楽さ加減と待遇だけになってしまいました。彼等に同情こそすれ非難する事は出来ません。

『地方大学・病院は自治体と協力しながら智恵を絞る必要がある』という一文はいかにも新制度を肯定した上での地方突き放しにきこえます。地方に住んでこれから医療過疎に直面してゆく国民を代弁しているとは思い難いものがあります。そんなことで一旦解き放たれた医師達の欲望が変えられるとお思いなのでしょうか。沖縄の例は模範例なのでしょうか。

 医局の人事は見事に破綻しました。これはマスコミや厚労省の狙った通りでしょうが、あまりにも早く実現し、そしていびつな形で、まず患者さんや地方の国民や弱者に影響しました。こうなった事態は記事を書いておられておかしいと思われないのでしょうか。これまでの御紙が主張してこられた医局解体は、その担って来た役割も否定するわけですから、『負の連鎖』を招くのは当然ですが、それは予想もされていなかったのでしょうか。

 長文、乱文になりました。ご意見、お問い合わせ等あれば何でもお答えするつもりでおります。

 御紙の今後の正しい真剣な論調を期待しております。


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尾鷲のことを一つの教訓にした上で・・・産婦人科医を招聘する一つの方法

尾鷲のことを一つの教訓にした上で・・・産婦人科医を招聘する一つの方法

おカネの出し方を工夫しろ.報奨金を検討すべき

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 私がネットでいろいろと調べたところ,尾鷲市立病院の他の常勤医の年収は1500万円ほどで,だいたい私の予想通り.
 それから比べると,5400万というのは高すぎる,という意見は理解できる.

 しかし,私見を述べよう.いくら出そうが,それは管理者である,尾鷲市が決めることで,本来,他の医師がどうこう言う事ではない.

 今や,志望者が激減し,産婦人科医や小児科医は,人間国宝並みに珍しい専門家になってしまいつつある.昔,産婆さんが赤ちゃんを取っていたが,それと同様に,お産を助産婦に任せる,とまで,現在の患者の意識は行っていない(法律上は可能であるが).

 だから,産婦人科医を求めるために,尾鷲市のように高額な年俸を約束するのも一つの手であろう.一つの病院で全部の科の全部の医師が同じ給料でなくてはならないと言う規則はもちろんない.

 しかし,現在,勤務医の意識がそこまで行っているか.今まで,一つの病院に勤める勤務医の給料は同じ基準で決められていた.その基準は医師になってからの年数のみであり,科別の給料の違いはなかった.したがって,尾鷲市立病院で産婦人科医をその基準を無視して,高額の給料で引っ張るというのは,今まで日本で前例のないことだったのだ.

 しかし,新しいシステムが医師団の理解を得られていたか.得られてはいなかった.医師というのは,他科の,そして病院全体の協力がないと仕事など危なくてできないものなのだ.変な嫉妬などがあり足などを引っ張られると仕事など出来ないのである.

 だから,この産婦人科医も5400万の年収を蹴っても辞めるのである.また,尾鷲市は,あまりに高い年俸も問題があると言うことで,年収2800万円でで産婦人科医を募集しているようだ.
 ただ,将来的にはこのやり方も理解されるようになると私は思う.個人的には尾鷲市の高額の給料をドーンと提示するやり方に私は拍手を送りたい.

 産婦人科医はますます減るだろう.希少価値がどんどん出てくる.その様なかの医師は年俸が高くてもやむを得まい.
 
 しかし,そんなことを言ってもしょうがない.今どうするかを考えなくてはならない.そのことをこのホームページを記するに当たって私は常に考えているのである.

 私なら,報奨金を付けるやり方で対処するだろう.
 尾鷲市が産婦人科を求めるなら以下のように私なら給料体系を組む.

 まず,産婦人科医の給料は,他科の医師と同じ,1500万とする.これを違えてしまうと,嫉妬だけかってあまり良いことはない.今,年収2800万円で産婦人科医を募集しているが,こんなやり方でも5520万の時と同様に他科の嫉妬を買うだろう.

 どうするか.報奨金を付ける.
例として,お産一件当たり10万円の報奨金をつける.やればやるほど増えてゆく.

【お産に対する報奨金】
 尾鷲市立病院の1年間のお産の数が150件だったという.一件10万であればお産の報奨金で,1500万になる.年収は3000万である.


【時間外手当をキチンと払う】 
 また,きちんと時間外手当も払う.これがどのくらいのものになるかざっと計算してみよう.年間150件のお産だから,1ヶ月 12?13件である.一回のお産5時間ほどかかったとして,全部で60時間ほど.もちろんこれが全部夜中になるわけではない.いろいろその他の時間外を見込むと,100時間ほどになるのだろうか.時間外の計算は,このホームページで計算しているように(クリック),勤務した時間によって異なるが,多くみて1時間1万円としても月に100万,年間1200万円となる.
 すると,これで年収を合計すると4200万円.もちろんこのようなことを実際するならば,もっと綿密に病院の事情,その科の事情など色々なことを考えなければならない.ここでは,あくまでも一例と言うことで示した.

 私の言いたいことは,同じカネを出すにしても,このような出し方をした方が,病院側,産婦人科医師側,そして他の医師の嫉妬も和らぐのではないか.おカネの出し方というのもすごく大事なことである.

 また,この産婦人科医師は1年間の内で,休みを取れたのは,たった2日だったという.もうこんな時代だから,思い切ったことをしなくてはいけない.今や人間国宝級に希少となった産婦人科医を招聘するのだ.


 例えば,土日は休みとする.少なくとも外来の患者は取らない.その日に産気づいた場合は,他の産婦人科病院に行ってもらう(注).あらかじめ,妊婦は,他院もあわせて通ってもらう.妊婦にとってはその分,大変だろうが,もう産婦人科医がいないのだ.24時間いつでも一人の主治医に面倒を見てもらうというのは理想だろうが,今日では無理なのだ.これは患者も分かるべきだ.

 24時間いつでも,という体制は独りの産婦人科医では無理.この尾鷲の産婦人科医のように疲弊して産婦人科医は街から去ってしまう.

 産婦人科医も,消耗の果てに,婦人科専門のクリニックで開業したり,産婦人科それ自体を辞めて,老人病院や老人施設に勤務し直す人も実際に多いのである.


【もっと画期的な方法】
 もっとアイデアがある.例えば,土日だけ完全に休ませるとなると,患者の方もいつその日に当たるか,不安でしょうがない.また,医師にしても,病棟には,産婦人科の入院患者がいるのでしっかりとはなかなか休めない.

 それを解決するために,3週働いて,1週休む,というローテーションを提案させていただく.そうすると,その1週間の間は,病棟を空にするか,安定した患者のみを入院させておく.
 何かあった場合には,近くの別の産婦人科に行っていただく.このような思い切ったことをすべきではないだろうか.
  
 このやり方が非常に良いとなれば,もう一人の産婦人科医が勤務してくるかも知れない.そうすれば,全部の日をこのパターンで覆えることができる.そうなれば,その街は産婦人科医不在と言う問題を解決できるわけだ.
 
 また,産婦人科の外来は週2日か3日にして,とにかく産婦人科医の負担を和らげ,夜の緊急時に働けるようにしておくことも産婦人科の場合,大切であることも付け加えておく.
 (まあ,このようなシフトを組むと,時間外給もかなり減るし,お産の数も減るので,給料は下がり,他の勤務医と同じくらいになるかもしれない.しかし,それは産婦人科医の納得のいくものになろう.なにしろ,1週間の休みがキチンと補償されるのだから)
             


 注)この場合,近隣の病院ともあらかじめ,了解を取っておくことは言うまでもない.近隣の病院にとっても,近くで産婦人科が起動してくれていれば,患者が分散し,自分たちの業務が分散できるのであるから,良しとされるだろう.

 はっきり言って,研修医制度がはじまって以来,産婦人科医を希望する人は,激減している.今までは,卒業と同時に自分の進むべき科を選んでいた.私もその口だが,純粋に自分のやりたいものということで,進路を選択した.私が卒業したのは今から約20年前だが,この時,実は産婦人科や小児科が特に忙しい科であるという認識はなかった.

 具体的に,仕事がキツい科は,胸部外科が最もキツイと思った.脳外科,整形外科も大変そうだ.あと,内科系は,カンファレンスや実験,研究で本当に医局員がキツイ生活を送っているようであった.そのような認識だった.

 まあ,卒業して2年間.人間は歳とともに現実的になる.結婚する人も多い.「余暇」も「お金」もだんだん欲しくなる.そうすると,忙しい科である,産婦人科,小児科は敬遠される傾向が出てきたのである.それが,今の産婦人科医減少の原因である.

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3千万円で産婦人科医師を公募すれば大学の助教授クラスが飛んでくる?


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3千万円で産婦人科医師を公募すれば大学の助教授クラスが飛んでくる
 
【コメント】
 3000万で産婦人科の助教授が飛んできて勤務してくれる,とは,この尾鷲市議会生活文教常任委員会で浜口議員より出た.その議事録を下記する.

 この浜口議員という人も,市議会議員という立場,また,このような公開の会議で暴言が過ぎるのではないだろうか.実際,浜口議員の言うように産婦人科医が勤務してくれるのなら問題はない.しかし,実際はそうなっていない.気配もない.彼の発言は荒唐無稽のものであったわけだ.
 私の経験で言えば,このように,市議の先生がうるさく口をつっこんでくる市立病院にろくな所はない.
 例えば,美唄市立病院.ここも,何かちょっとしたトラブルがあると,よく市議が怒鳴り込んできたという.例えば,夜中に歯が痛いと言って,市立病院を受診した患者が居たが,市立病院には歯科がない.診療を断ったところ,数日後,市議が怒鳴り込んできたという.
 市民の訴えを聞いたら,何かをするのが市議の仕事.怒鳴り込むのも元気の良い市議の先生には,お安いご用というわけだ.しかし,時と場合を考えなくてはならないだろう.
 美唄市立病院はどうなったか? 数年前,医師がドミノ式に辞めていき,病院機能は瓦解.今,老人施設としてやっている.このような現象も,今は珍しくない.

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市長に更新交渉一任・・・市議会生活文教委 総合病院の産科医師

 尾鷲市議会生活文教常任委員会(与谷公孝委員長)が25日午前開かれ、尾鷲総合病院の産婦人科医師との契約更新について「率直な意見を聞いて最終的な判断をしたい」と意見を求めた。委員から「産婦人科の存続は必要。交渉を見守りたい」と市長に一任の意見が出た一方で、「市長は議会には事前に基本的な考えも示さなかった。4800万円でも他の医師には納得してもらえないむちゃくちゃな高額だ」と強い反対意見も出た。
 市長は21日に開かれた全員協議会で、今月末で1年契約の期限が切れる産婦人科医師(55)との更新交渉について、「医師側は現報酬額の5520万円に月2日の休みを求めており、市が提示した4800万円と休日分の上乗せ分との溝が埋まらないため交渉は難航している」と報告。「議会の意見を踏まえて最終的な判断をしたい」と議会に意見を求めていた。

枡田勇委員: 産婦人科がどうなるのか出産を控えた妊婦の不安は大変だ。契約ができなくても3カ月ほどいてくれるのか。通院している人たちにはちゃんと説明しているのか。

湯浅英男事務長: 医師との契約交渉と同時にそのことも話をしており、契約ができない場合でも相当の期間はいてくれることを確信している。妊婦の状況によって2~3カ月は心配しないよう医師から説明している。

枡田委員: 医師から休みの要求があるのは当然のことで、市長の言う休日の買い上げは労基法で認められていない。

市長: 医師から休日の応援がいない場合にそれに見合う手当の要求があり、買い上げの表現は適切ではないと思う。

枡田委員: 休みのない労働環境をどう考えているのか。
湯浅事務長: 雇用形態は常勤ではなく常駐となっている。拘束は月、水、金の外来診察、入院回診、出産で、そのほかは自由時間。院内の部屋で待機しているが、リラックスできる時間もある。常勤の休日は当てはまらない。

市長: 緊急な状況でこの1年、1人で助産師とやってくれる覚悟で来てもらった。もし交渉が決裂しても3カ月ほどはいてくれると思う。議会の意見を踏まえて来週早々には医師と交渉したい。

三鬼孝之委員: 現状の報酬で更新できればよいと思うが、休日分を保証すれば5520万円に上乗せとなり、6千万円以上となってしまう。他の医師との感情も出てくる。1人の医師で年間の出産数は150人が限度とされ、この1年で152人と限度を超えている。苛酷な労働が続けば医療事故も懸念される。市長が示している4800万円はともかく、粘り強く更新できるよう交渉してもらいたい。

三鬼和昭委員: 昨年はいろんな状況から政治判断で5520万円となった。市長は今回4800万円を提示しているが、1人での厳しい労働条件でどの額が妥当なのかわからない。市長の交渉を見守りたい。

内山鉄芳委員: 産婦人科がなくなると妊婦にとって紀南病院や松阪に行くのは大変なことを考え、5520万円を認めた。全国的に産婦人科医師が不足し、年間150人の出産が限度とされることも考えると、5520万円が高いのか安いのかわからない。他の医師との感情問題もある。4800万円に下げても他の医師との確執は避けられないと思う。院長を含めて他の医師と話し合って納得してもらえれば4800万円でも5520万円でもよい。産婦人科がなくなると患者も減る。

市長: 内科を中心に医師はとにかく医療に努力してくれている。この1年、5520万円で院長に院内の医師を説得してもらった。それでも医師から「われわれは懸命に働いている。次の報酬は納得できるように」と何回か直訴を受けた。院内の感情も踏まえて慎重に検討して4800万円を提示した。

高村泰徳委員: 院長給与を最大限度に抑えた交渉をしてもらいたい。

津村衛委員: 市長はフェアではない。交渉中に金額を公表したのは自己防衛だ。妊婦は安心して医師の診察が受けられないし、不安を駆り立てた。

市長: 報酬額が注目されている。双方の考えをオープンにして議会や市民がどう考えるのか、決して公表したことはマイナスとは考えていない。

津村委員: 公表の結果、妊婦には不安を抱かせてしまった。4800万円や5520万円の報酬は10年も続かない。4800万円で1年だけでも続けてもらい、その間に三重大にも要望して存続に取り組んでもらいたい。


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むちゃな高額やめろ 他の医師不満当然だ

浜口文生委員: 市長が提示した4800万円には反対だ。議会でこんな議論をしなければいけないことは不愉快だ。1年前の交渉で議会に相談もなく5520万円を決めたことがボタンの掛け違いだ。他の医師も理解しているとの説明だった。産婦人科医師を除く現在18人の医師の平均給与はどの程度なのか。

湯浅事務長: 平均で年収約1500万円。

浜口委員: 提示の4800万円は3倍以上だ。他の医師がむくれるのも当たり前であり、市長のやることは後手後手だ。こんなことでは他の医師が三重大に帰ってしまう。もっと早く議会に基本的な考えを示すべきだった。6万3千人の署名は三重大や県に出したもので、市長への要望ではない。4800万円を出すこと自体が話にならない。
 医師がいなければ総力を挙げて探せばよいのに、1年前にそれもしなかった。仮に3千万円で医師を公募すれば大学の助教授クラスが飛んでくるという話もある。風聞として産婦人科医師の開業時の話がいろいろ入ってくる。第一に他の医師が納得できる額が求められるのに話にならない高額だ。

市長: 6万3千人の署名は三重大や知事に出したものだが、病院開設者の市長の責任も当然のこと。1年前に私も医師確保に努力してきたし、病院のホームページでも募集したが、自治体病院で給与額は出せない。医師が見つからない状況で、手取額から計算して5520万円で来てくれることになった。産婦人科を残すために判断した。今回は手取額の条件も踏まえた中で4800万円の提示は市として最大限の額。

浜口委員: それは市長の詭弁(きべん)であり、1億円でも出すはずだ。だから事前に議会に市長の基本的な考えを示すべきだった。自治体病院は給与額を公表できないというが、医師個人の給与は個人情報保護法に抵触するものの、個人情報でない公募額には問題はないはずだ。1年前に医師との間で報酬額を公表しない約束をして話を進めていた。4800万円はむちゃくちゃな額だ。

枡田委員: 4800万円に減額したが、その根拠を他の医師や市民にどう説明するのか。

市長: 医師側の希望には手取額があり、その額から逆算すれば4800万円になる。

枡田委員: 4800万円に休日分をプラスすれば実質は5千万円以上になるのか。

市長: 三重大からのアルバイト医師で時給7千円。産婦人科医師はそれ以上の時給を求めているので、アルバイト医師がいないと5千万円以上になる。

中垣克朗委員長: 紀南には新宮を含め産婦人科医師が9人もいる。紀北は1人だけだ。この問題をどうするのか考える必要がある。9月に出産を控えて松阪の病院へ行った人もいる。里帰り出産でも家族が心配している。尾鷲市だけの問題ではなく、国レベルで対応しなければならない問題だ。市長攻撃は誰でもできる。とにかく頑張ってもらいたい。

市長: 産婦人科の医師不足は国の問題であり、厚労省などに対応を陳情した。現実には妊婦の不安があり、現在の医師は責任感が強いので契約ができなくとも数ヵ月は残ってくれると確信しているので安心してほしい。

三鬼和昭委員: 仮に別の医師が来ても三重大の応援は難しい。高額報酬でも市民が必要とするのなら更新できる交渉が必要だ。

                      関連ホームページ

カネを出せば,助教授クラスの産婦人科医は飛んでくるのか?

【新聞より】尾鷲市で産婦人科医消滅の危機

 尾鷲市の伊藤允久市長は三十一日の会見で、尾鷲総合病院に迎えた産婦人科医師との交渉決裂の原因が報酬額の折り合いではなく、医師の高額報酬への攻撃、中傷が原因との見解を示した。五嶋博道病院長も「報酬の条件もあるが、気持ちが切れた方が大きい」と認めている。

 伊藤市長によると、七月中旬から八月中旬までの二年目の更新交渉で、「最長で来年三月 まで残る、と医師から言われていた」といい、同市長が八月二十一日、市議会に交渉経過を説明し、 二十五日に再度開いた市議会委員会で交わされた、 一部市議(浜口市議)の「三千万円出せば 大学病院の助教授が飛んでくるのに、四千八百万円は高過ぎる」「津で開業したころの うわさもいろいろ聞こえてくるのに」などの意見を知った医師が「残る気持ちをなくした」という。

 伊藤市長はこれまで「医師は非常に責任感が強く、交渉が不調に終わっても、三カ月は残ってくれる」と繰り返していたが、八月三十日夜の交渉で、医師は市議会での議論を  引き合いに出し「気持ちが続かない。九月中の出産予定者までは引き受ける」と期間短縮を申し出た上「事故があったら大変だから」と語ったという。
尾鷲市の位置を地図で確かめよう

                                  関連ホームページ  
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○解析○

 1年前,尾鷲市立病院で,年収5520万円で産婦人科医を招聘した.この記事は,医療関係者だけでなく,国民を驚かせたはずである.しかし,1年で辞職することになった.

 辞職する理由はいろいろあると思う.
まず,新聞の報道によると・・・
  ○あまりに激務で,ほとんど,病院に泊まり込み状態.
  ○ある市会議員が,「3000万円も出せば,助教授が飛んでくる(すぐに勤めてくれる)」と暴言を吐いたことに産婦人科医が衝撃を受け,継続して勤務する気持ちを失った参考記事:市議会生活文教委議事録 Click ).


 どこにでもこのような元気の良い議員さんはいるものである.もちろん,この浜口議員の言うように3000万で立派な産婦人科の先生が飛んできたかと言えばその様なことはなく,産婦人科医の後釜は見つかっていない.

 その他に考えられることは
  ○年収がすごく高いため,病院職員の嫉妬をかってしまった.特に,同僚の医師の嫉妬をかってしまい,非協力的だった人がいたのかもしれない.

 一般の人は医師は非常に強い人間だと思っているのかも知れないが,実はある意味でひどく弱い人種である.

 当たり前のことであるが,医師は市民の支持と,同僚の医師,病院職員の協力があって初めて仕事ができるものである.ただでも今や訴訟されることが多いのに,まわりが非協力的だったり,嫉妬のため変な感情が周りにあることを感じると,足を引っ張られているような感じがして,医療などできない.今や変に訴訟されたりすると,1億円や2億円取られてしまう.

 この産婦人科医は5520万円の年収をもらっていたと言うが,訴訟のことを考えると割の合う話ではないのである.


 おまけに,市会議員の様なえらい人から誹謗されるようなことを言われると,「もうここでは働けないな」とすぐに思うものである.市会議員にその様な批判的なことを言われると言うことは,市民から言われているのと同じ事である.つまり,尾鷲市民の支持がないと言うことといっしょなのである.これはかなりのダメージになる.

 この産婦人科医が「事故があったら大変だから」と語った気持ちが私にはよく分かるのである.

 他の尾鷲市民病院に勤務している医師も「次は自分かな」と疑心暗鬼になっているはずである.関係者の話によると,実際に尾鷲市立病院は市議会の干渉がすごいらしい.つまり,ひどく雰囲気の悪い病院のようだ.このような病院はどこにでもあるのだが.辞職したのは,産婦人科医であるが,医局の雰囲気はどうなっているのだろうか.

 ともあれ,産婦人科医を招聘するのにカネを払ってもダメとなるとどうすればよいのか.私は産婦人科獲得のための大胆な作戦を進言したい.( 現在 鋭意執筆中)

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