オレンジ
金木犀の甘い香り
好きです
秋の夜長に咲いた
オレンジ色の小花
ちっちゃい ちっちゃい
お花も
たくさん たくさん
集まると
キラキラして
大きな形に見えるんだね
そおいえば
この甘い香りを
歯が痛くなりそうな
甘さって
表現してたなあ…
詠美さん
大好きな小説家
山田詠美さんの
小説の一文を
思い出した
放課後の音符(キーノート)
って小説の中の
短編「Red Zone」
彼は高校生
新しい恋人は
10歳年上の大人の女性…
彼女は
ショートヘアで
ボーイッシュなひと
ノーメイクなのに
赤い口紅だけを
まとっている
彼女は
高校生の彼に
言葉を伝えた
金木犀の匂いがする
甘くて歯が
痛くなりそう
彼の頬に触れながら
秋には
恋に落ちないって
決めてたけど
もう 先に歯が痛い
そう伝えた彼女
彼は
金木犀を食べたの?
泣きそうな顔で
言葉を返す
そんな彼に
金木犀も食べたの
だから 歯の痛みには
…キス
そう 言葉をかけながら
彼にキスをするシーン
そのシーンを思い出した
この小説を読んだのは
私も 高校生
本当の恋も
愛することも
家族ではない異性に
愛されることも
知らない
子供だった私
なつかかしいな…
たぶん
この文章の本当の感覚は
当時わからなくて
ぼんやりしながら
ドキドキしながら
読んだシーンだったと思う
でも キョーレツに
覚えてた
そして
今この季節に
甘い金木犀の香りで
あの文章の記憶が
よみがえってた
香りと記憶か…
せつなくて
愛おしくて
哀しい恋
君がゆっくり
歩いてく
君の後ろ姿を見送った
もう一度
振り返ってくれたら…
願いは今夜も
届かないけど
心の中で
「好きだよ」
ゆっくり つぶやいた
オレンジの小さな花
甘い香りと
秋の夜露が
舞い降りた街の小路に
消えていく君の影
またひとつ
記憶が降り積もった
おやすみ…
愛してるからね
ずっと ずっと
Mica
