~ 路上 ~ 作=新川和江
おとうふを買いに行って
はからずも 母に会った
おとうふを買いに行かなければ
会えないおかあさんだった
陽がやや傾きかけた時刻
容れものを持って
西のおとうふ屋へ
おとうふを買いに行かなければ
——わたしも 会いたいわ
この頃すこし老けた妹が
しおらしいことをいうので
ある午後誘って
おとうふを買いに行く
水を張ったボールに
一丁ずつ入れて貰い
西陽を背にうけ 帰ってくる
路上に 母がいる
アルマイトのボールを抱え
おとうふを買いに行った日の母が
そろりそろり 歩いている
——ほんとうだ
まあ おかあさん——
それに今日は 二人も並んで
母が歩いている