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まるで太陽が爆発でもしたかのように弾ける強い日差しの中、1人の男が品川プリンスホテルのプールサイドに立った。既にロマンスグレーと言える歳に差し掛かったと見えるその男だが、真っ白なガウンに包み込んだその体は精悍に黒く日焼けし、肌と同じくらい黒いレイバンのサングラスが良く似合っている。
男がプールサイドを歩き始めると、周囲にいる人間すべてが、そう文字通り老若男女すべての人間が、呆然とした表情でその男に注目した。いや正しくは、その男の後ろを歩く、美女二人に目を奪われていたのだった。
彼女達の名前はCheyenneとVivienne。寸分たがわぬように見える美貌は、双子であろう事が容易にうかがい知れる。しかし特筆に値すべきは、際立つその美しさだった。180㌢を超えるだろうその男の側にいて、決して小さいとは思わせないすらりと伸びた小麦色の肢体。細く長い腕と足とがその美しさをより一層、際立たせていた。簡単に言うとそう10年前の道端ジェシカに永遠の美女峰不二子を部分的必要に応じて加味した、といえば想像しやすいだろうか。二人揃っての奇跡的なプロポーションは、神の偉業としか表現のしようがない。「美しい」という言葉では到底表し切れないその二人に違いがあるとすれば、強力な太陽光を跳ね返すかのように眩しく輝く、グリーンとピンクの、小さなビキニの色だけだった。

史上初の双子ボンドガールをハリウッドから熱願されたのを、あっさりと蹴ったという経緯を持つ2人は、女豹を彷彿とさせる表情としなやかな動きで、男につき従うようにしてプールサイドを歩いた。そして二人の腕は、微妙な距離を保って男の両腕に絡まされていたのだった。男は二人をプールサイドのサマーベッドへといざなうと、1人ずつ真っ白なベッドへと横たえた。男はその真ん中のベッドに腰掛けると、既に運ばれていた華やかな色のカクテルで喉を潤し、ナゼかシニカルな笑みを口の端に浮かべた。

・・・そこだけ異空間をさえ感じる状況に、周囲の人々の目は強烈に惹きつけられざるを得なかった。そしてその全ての視線が、見事に同じ事を物語っていた。

「何でこんな男が・・・」

男はおもむろにガウンを脱ぎ捨てるとサングラスを外し、頭上の太陽を睨みつけた。
その視線はまるで、獲物を狙う猛禽類のようだ。

ベッドからゆっくりと体を起こしたCheyenneとVivienneが、その男、Firoswiに視線を向けると、少しだけけだるそうに話しかけた。

***以下C:Cheyenne V:Vivienne F:Firoswi***

C「次は・・・何を、仕掛けるの?」
V「油田、金鉱、ああエクアドルのダイヤモンド鉱をすべて買い占めてみるのも、いいかもね。それともまた、世界中の証券を買い占めてみる?これからまた世界が大きく動く時。タイミング的には、悪く無いわ」
F「はっはっは、さすがは我がゴールデンハッピー財閥が誇る敏腕セクレタリィ達だ。それも、面白い。だがもうマネーゲームは飽きたよ。簡単過ぎて、面白くないんだ。たった数年で、既に地球を丸ごと買えちまうぐらい、世界中の富を集めてやったからな」
C「じゃぁ、次は、何をするの?止まってられる人じゃないでしょ、あなたは」
F「ふっ・・・・」
CV「?」
F「宇宙・・・」
CV「えっ!?」
F「宇宙だ。地球は狭い。次は手が届く限りの、宇宙を手に入れる」
C「ど、どういう事!?」
F「11年前のあの事故以来、世界はまだ、放射能の脅威に怯えている。原発ももちろん縮小の一途を辿る一方だ。「Delete the Nuke」は、今や世界共通の合言葉でさえある。がしかしだ、それはつまり、核が制御不可能な物であるからにすぎない。もしも、その核を完全にコントロール出来たとしたら・・・」
V「まさか・・・そんな事が出来るの!?」
F「実はすでに40年以上も前、宇宙の果てイスカンダルという星に、『放射能除去装置』という分かりやすい名前のマシンがある事が分かっていたんだ。そいつを・・・手に入れる」
V「そんな・・・」
F「そうすれば、あらゆる核の脅威から人類は開放されるんだ。おっと、綺麗事を言うつもりは、ないんだぜ?核を完全にコントロール出来るようになった俺に、地球上の誰が逆らえる?人間が認知できるあらゆる物質、もちろん夜空に浮かぶ幾万の星すらも、我らゴールデンハッピー財閥が手に入れるのさ。そして片っ端から、開発を始めてやる。太陽系の惑星にさえ、無限の鉱物・資源が眠っているんだ。そいつを全て手に入れた時文字通り、我々は全世界を、手に入れる事になる」
C「でも、それこそどうやってイスカンダルまで行くというの!?」
F「・・・ヤマトさ」
V「えっ!?」
F「戦艦大和。第二次大戦で海に沈んだ戦艦大和に、イスカンダルまでの宇宙を渡る船に生まれ変わってもらった。既に奴は長い眠りから目覚め、雄叫びを上げる瞬間を待ちわびている」
V「フフ・・・すべて、計算済み。準備も万端、てわけね」
F「クックック・・・その、通りだ」
C「私たちも、イスカンダルへ?」
F「ふ、もちろんだ。そしてこのプロジェクトがうまく言った暁には・・・」
V「暁、には?」
F「報酬として君たちに、太陽系の惑星を一つ、プレゼントしよう」
CV「ほ、本当に!?」
F「ああもちろん。そうだな、明けの明星、宵の明星。金星なんかどうだい?」
CV「す、素敵・・・・」

F「ふっ・・・・ヴィーナスこそ、君たちに相応しいのさ」 (ニヤリ

F「おっと、少々おしゃべりが過ぎたようだ。次のスケジュールはどうなってる?」
V「この後18時12分から、ロシアのプーチン大統領との会食です」
F「・・・ふっ、あいつか。大統領に返り咲く時には、随分手を貸してやったからな。しょうがない、付き合ってやるか。そうそう、奴はどうやら君たちにおかしな感情を持っているようだが・・・・」

C「ふふ、私たちの恋人は・・」
V「ゴールデンハッピー財閥だけ」
F「はっはっっは!グーッド」

Fはまたガウンを羽織ると右手をChiennneに、左手をViviennneに差しだした。二人の手を受けると音も無くすっと立ち上がらせ、また両腕に二人のしなやかな腕を絡ませると、ホテルサイドに向かって歩きだした。
と突然、Fは右腕をゆっくりと天に向かって突き上げた。そしてはるか彼方、無限に広がる宇宙の一点を指差すようにして、一言大声で叫んだ。



                「It's a time to start 'The GAME' !」















...エピローグ

その30分後・・・ホテルのロビーの柱の陰にて。
美しい双子に対して卑屈なまでにペコペコと薄くなった頭を下げ、「アルバイト料」と書かれた封筒を手渡している男の姿が合った事は・・・歴史の闇に封印されたのであった。