改札を駆け抜けた僕の目の前で、無常にも扉は閉まってしまった。
電車は、隣の神田駅へ向けて走り去っていく。
東京メトロ銀座線、末広町駅。深夜の12時を少し過ぎていた。
電車は、隣の神田駅へ向けて走り去っていく。
東京メトロ銀座線、末広町駅。深夜の12時を少し過ぎていた。
「ふぅ・・・。」
僕は少々飲みすぎた頭を振りながら、ベンチへ向けてホームを歩いた。
次の終電まで、まだ10分程ある。
改札から20m程右に歩いた先にあるベンチに座ると、文庫本を開いた。
今の雰囲気にはちょうど良い、最近お気に入りの、ライトなホラー。
2-3行読んだところで、本の世界に引き込まれていった。
次の終電まで、まだ10分程ある。
改札から20m程右に歩いた先にあるベンチに座ると、文庫本を開いた。
今の雰囲気にはちょうど良い、最近お気に入りの、ライトなホラー。
2-3行読んだところで、本の世界に引き込まれていった。
バタッ・・・ガッシャン!!
直後、本に目を戻した僕の鼓動は、激しく高鳴っていた。
い・今、目に映ったモノって・・・。も・もしかして・・・。
メイドさんのようでいて、微妙に違う。黒と、レースで包まれたその肢体。
黒光りする革靴に、おかしな・・・帽子!?
い・今、目に映ったモノって・・・。も・もしかして・・・。
メイドさんのようでいて、微妙に違う。黒と、レースで包まれたその肢体。
黒光りする革靴に、おかしな・・・帽子!?
ゴ・ゴスロリ・・・!?
う・うわさには聞いていた。でも見た事は無かった。一瞬だけだけど、確かにあれはゴスロリだ。
ただ前に腕を突き出して、変な動きをしていた。まるで納豆の糸を引くような・・・??
僕はもう一度、そっと視線を送ってみる。
ただ前に腕を突き出して、変な動きをしていた。まるで納豆の糸を引くような・・・??
僕はもう一度、そっと視線を送ってみる。
∑∑( ̄□ ̄;
こ・こっちに向かって歩いてくる!!!
再確認した視覚情報、かなりキツかった。
小太り、日本人顔、どスッピン。そしてナゼか、銀縁眼鏡。
そして、あの奇妙な動作。腕を突き出し、右手を上げ下げ・・・。
あれは・・・そうかまるで麺類を冷やすような・・・。
小太り、日本人顔、どスッピン。そしてナゼか、銀縁眼鏡。
そして、あの奇妙な動作。腕を突き出し、右手を上げ下げ・・・。
あれは・・・そうかまるで麺類を冷やすような・・・。
・・・とぅろぅ・・・ーとぅるるるるおおお・・・
左手に持った、白い四角い箱。右手には箸。箸と箱を結ぶ、焦げ茶色の麺!!!
ペ・ペヤングだ・・・。
ゴスロリ少女・・・いや、僕の目は一見して、30に近い程の年齢を見て取っていた。
そのゴスロリ女が、ペヤングの麺をあげたり下げたりしている。ひ・冷やしているのだ・・・。
そして、彼女との距離が近づくにつれ、その言葉がはっきりと聞こえてきた。
そのゴスロリ女が、ペヤングの麺をあげたり下げたりしている。ひ・冷やしているのだ・・・。
そして、彼女との距離が近づくにつれ、その言葉がはっきりと聞こえてきた。
・・・とぅろぅ・・・。-とぅるるるおう・・・。めーーーとぅるるるるおうーーーー。
なんだよ!なんなんだよ!!どうしてゴスロリが深夜にペヤングで巻き舌でメトロ!?
こ・怖い・・・。これは酔いのせいなんだろうか。
アルコールが、あるはずの無いものを、見せているのだろうか?
アルコールが、あるはずの無いものを、見せているのだろうか?
僕は、手元の文庫本のタイトルを見る。 乙一著・・・「GOTH」
( TДT) をいーーーー!!!!
・・・とうるっるるっるるをおおおおお。めええええええとぅるるるるるおおおおお・・・・
あっという間にゴスロリ女は近づいてきた。
気のせいか巻き舌のメトロも長くなっているような・・・。
気のせいか巻き舌のメトロも長くなっているような・・・。
・・・とうるっるるるるっるるをおおおおお。めえええええええと・・・。
((;゚Д゚) とま・・・った・・・。 左斜前・・・1メートル。
僕は、背もたれに預けきりだった体重を、ゆっくりと両足に戻していく。
僕は、背もたれに預けきりだった体重を、ゆっくりと両足に戻していく。
逃げなければ・・・。
ひいいっ!!
声が出てしまったかもしれない。逃げたい。逃げたいのに、全身固まってしまって逃げられない。
彼女が、一つあけたベンチに座ったのだった。
彼女が、一つあけたベンチに座ったのだった。
めえええとうるっるるるるっるるをおおおおお。めえええええええとるうううううおおお。
呪文は続く・・・。 怖い・・・あまりに怖すぎる・・・。
めえええええええええええええええええええええええええとぅっ!
また・・・呪文が止まった。 僕は、またそっと彼女に視線を送った。
その、瞬間!!!
ぞばっ!!!ぞばばばばばばばばっばっ!!!
食いだした!!!えっらい勢いで、食いだした!!!!
ぞばばばばば!!!!ぞばあああああああああああああああ!!!!
。゜(゚´Д`゚)ノなんだお、なんなんんだおおおお!!!!
ぞばばっばばばば!うぐ!ぞばばば!!!うっぐ・・・
(((( ;TдT))) こえええええええよおおおおお!!!!
ぞっばばばばばばば!!!!うえっく・・・
こええええええ・・・ええ・・ええ??
ぞば・・・ふええん・・・。
泣いてる? の?
ぷっくりと盛り上がった頬を、涙が流れていた。
それは思いのほかピュアな光を帯びていて、僕をドキリとさせた。
それは思いのほかピュアな光を帯びていて、僕をドキリとさせた。
ぞばーーーーー!!! ちるるるる・・・ちるっ。
最後の、一本が・・・吸い込まれた。
すっっ。 彼女は、立ち上がった。
僕は彼女を見つめた。 もう、怖くは無かった。そして彼女はもう、泣いていなかった。
彼女は僕と目を合わせたまま、フン、と軽く鼻息を漏らす。そして。
彼女は僕と目を合わせたまま、フン、と軽く鼻息を漏らす。そして。
つぱあああああん!!
食べ終わったペヤング容器と箸を、深夜のホームに叩きつけた。
そしてそのまま、僕に背を向け、歩き出した。
そしてそのまま、僕に背を向け、歩き出した。
その、瞬間。
終電が、滑り込んできた・・・。 彼女は遠く、ホームの先に立っている。
僕は彼女の投げ捨てたペヤングの容器と箸を拾い上げると、ゴミ箱に入れた。
彼女に何があったのだろうか・・・。
ゴスロリファッションに身を包んだ彼女に、何があったのだろう。分からない。
ゴスロリファッションに身を包んだ彼女に、何があったのだろう。分からない。
僕はまだ少しふらつく頭を振りながら、銀座線最終電車に乗り込んだ。
箸にうっすら付いていた、ピンクのリップが、妙に印象的だった。
箸にうっすら付いていた、ピンクのリップが、妙に印象的だった。