看護師になる前、私は小学校の先生をしていたんだ。
小学校の先生って何かすごくイヤなイメージがない?
モンスターペアレンツとか学級崩壊とか…
私の時は学級崩壊はなかったし、明らかなモンペもいなかったんだけど…
でも、とある事件で心がポッキリ折れてしまったの。
体育の授業で毎年相撲大会というのがあった。
何回か体育で相撲の練習をして、本番を迎える形でやってたんだけど。
私は相撲なんてよくわからなかったから、授業では簡単にルール説明だけして、あとは子供たち同士で半ば自由にやらせてた。
子供らはとても楽しそうにやっていたよ。
相撲大会は、男子は男子、女子は女子でわけてやっていたし、対戦相手はできるだけ体格を合わせてやるんだ。
そうしないと色々危ないからね。
でも、トーナメントが進むにつれて、体格差とか段々関係なくなっていくんだよね。
そうは言っても、小学生同士の体格差なんてたかが知れてるし、ちゃんとマットを敷いてやっていたから、安全性に問題はない…
と思っていたんだ。
ところが、準決勝で背の順が1番の子と、後ろから2番目の子が対戦することになって…。
1番の子は運動神経が良くて、結構頑張ったんだけど結局負けちゃったの。
まあ、そこまでは良かった。
ただ、その子が倒れたときに、大きい方の子が乗っかる形になっちゃって倒れた方の子は手首を骨折しちゃったんだ。
で、お察しの通り、その子はすぐに病院に連れて行って保護者にも謝罪したんだけど、お母様は半分パニックになってて。
「どうしてそんな体格の違う子同士を対戦させたんですか!」
「ちゃんと受け身や投げ方の練習はしたんですか!」
なんて、まあ怒り狂ってた。
私としては、やっぱりそれなりに覚悟をもって教師になったわけだから、そんな保護者さんの気持ちは汲み取ってあげたいって思ってたよ。
治療の間まともに勉強もできないし、もし手首が元に戻らなかったら…?
なんて考えたらお母様が感情を荒げるのは当たり前のことだと思うんだよね。
それに、この親の言っている「体格差を考慮していないのはおかしい」「投げや受け身の練習もろくにせずに試合をするなんておかしい」っていう言い分は、実際にその通りだと思う。
だから、そういう感情を受け止めてあげたいとは思うんだけど…
でも私は自分で思うほど強くはなかったんだ。
手首にギプスを巻いたその子を見ると申し訳ない気持ちになるし、その親と定期的に面接とかするのかと思うと、何日も前からご飯が美味しくなくなる。
あと、小学校の先生って子供と一緒に給食を食べたりするから勤務中の休み時間はほとんどないし、教材作りのために家に持って帰って仕事するなんてこともしょっちゅうあって、そういうところも疲れていた。
そんなわけで、私は教師は辞めて看護師になったんだ。
それが良かったのか悪かったのか…でいうとかなり良かったって思ってる。
看護師は休憩時間はちゃんとあるし、持ち帰り残業なんてものもほとんどなかったしね。
夜勤がしんどいんだけど、手当がつくからまあ仕方がない。
看護師になって思ったことは、学校の先生ってほんっとうに立派だということ。
そして、骨折した子のお母様に感謝?してること。
だってあの事件がなかったら、向いてもいない教師を無理に続けていつか心が病んじゃってたかもしれないもんね。
私なんかに感謝されても迷惑だろうけど。
教師ってよほどの覚悟と信念がないと続けられないわ。
本当尊敬する。
