報道によれば、尖閣諸島付近での中国漁船と日本巡視船の衝突事件に関し、中国の温家宝首相が21日、ニューヨークで、「日本に勾留(こうりゅう)されている漁船船長の即時無条件釈放を要求、応じなければさらなる対抗措置を取る。」と警告した。


日本の法制度を無視した露骨な脅迫だ。


温首相の発言は、これまで戴秉国国務委員はじめ中国側が外交ルートで行ってきた要求と基本的に同じである。


温首相は共産党最高指導部の一員であり、今回の発言は「中国の党、政府が一切譲歩しない方針を固めている。」ことを表わしている。


中国側はすでに、閣僚級交流や東シナ海の天然ガス共同開発条約交渉の中止などに加え、日本ツアーの中止など民間交流にも影響が拡大している。


さらに、追加措置の検討にも入っており、そこには経済交流の制限や、尖閣諸島海域への艦艇派遣といった強硬手段も含まれている。



日中関係は小泉純一郎政権の時代も、靖国神社参拝問題などで冷え込んだ。


中国で大規模な反日デモが発生したが、実務関係や経済交流への影響はほとんどなく、日中貿易は拡大し「政冷経熱」といわれた。

それは双方が、政治的対立が実務関係に及ばないよう、冷静に対処した結果だった。

 


中国側が強硬姿勢を続ける理由は、

1石油資源が埋蔵されている尖閣諸島を我が物にしたい、

2東シナ海での海洋権益を確保したい

という目的に尽きる。


日本固有の領土である尖閣諸島の日本の領有権を認めず、中国漁船の拿捕(だほ)、船長の勾留を非難する背景だ。


しかし事件は、日本の領海内で中国漁船が不法操業し、巡視船に体当たりして逃亡を企てたという単純なものだ。


日本当局は、公務執行妨害容疑で船長を取り調べる司法手続き中であり、それに中国が圧力を加えるのは内政干渉以外の何物でもない



中国の強い圧力に対し、日本政府が中国側に自制を求め、「粛々と法手続きを進める」のは当然だ。


だが、中国側の対抗措置に、手をこまねいているだけでよいわけはない。


在外公館を通じて、各国に尖閣問題についての日本の立場を説明するなど積極的に発信して対抗する必要がある。

 

日中が敵対関係に陥りかねない事態は双方にとって不幸だ。


司法の結論を待ち、政府は中国側との対話を模索し、事態の拡大を防ぐ努力をすべきだ。



とはいえ、事態は急を要する状況に陥ってきている。


共同通信の報道によれば、23日、中国河北省石家荘市の国家安全当局は、「中国河北省内の軍事管理区域に許可なく侵入し、録画をしていた疑いで日本人4人を取り調べている。」と新華社が一報を配信したとのことだ。


現在、4人が本当に拘束されているのかどうかは不明だ。


日中関係筋によると、4人は日本の建設会社フジタの関係者で、遺棄化学兵器関連事業を受注する準備のために下見に来ていたとみられるという。


在北京の日本大使館は「事実関係を確認中」としている。

 

新華社は一報配信の直前、「『軍事管理区域に入った4人の日本人を調べている』との重要原稿を間もなく送る。」と配信先に予告した。


こうした事件をめぐって重要原稿の配信予告を行うのは異例だ。


4人の取り調べは漁船衝突事件での船長逮捕に対する報復といえよう。


今後、4人の身柄の扱いについて中国側が、日本で拘置中の中国人船長の釈放を求める取引材料にするのは間違いないだろう。




また、さらなる報復が行われることが分かった。


それは、レアアース=希土類の日本への輸出を禁止するというものだ。


これは日本の産業界にとっての脅威だ。


かねてより中国は「採掘に環境汚染を伴う。」など理由をつけて、レアアースの輸出枠を削減してきた。


尖閣諸島における漁船衝突事件以降、産業界は中国の出方に警戒を強めてきた。


全面的な対日禁輸の場合、レアアースのほぼ全量を輸入に頼り、世界の消費量の約4分の1を占める日本の産業界に影響が及ぶことは避けられない。


一般的なHV1台あたり30キログラムが使われるなど、充電池やモーター用磁石に使われるレアアースは、日本企業が得意とする省エネ・環境技術に不可欠だからだ。


中国が輸出禁止を正式に表明しない背景には、世界貿易機関(WTO)のルールへの抵触を懸念するからである。


正当な理由を欠く禁輸は批判を招くからだ。


中国のレアアース関連企業には国有企業が多いとされ、「コントロールしやすい」(大手商社)という。


今のところ産業界に目立った影響は出ていないが、原材料の入荷が不安定になれば、生産や出荷といった事業計画の見直しに波及する。


大手自動車メーカー幹部は「次世代車の生産への影響が懸念される。」と話す一方、大手電機メーカーも「影響は大きい。」と見ている。


今年7月、中国は下半期向けのレアアースの輸出枠を約8千トンとし、年初からの合計が約3万トンと昨年の約5万トンから大幅に減らす方針を示すなど「戦略的に利用する姿勢」(関係筋)を鮮明にしている。


レアアースの安定供給確保策として日本政府はアフリカ大陸などでの資源開発援助の拡大や代替材料やリサイクル技術の開発に取り組んでいるが、いずれもまだ緒に就いたばかりだ。


経済外交の有力な武器ともいえるレアアースは、日本経済を支える製造業を脅かしかねない存在となった。



まったく、卑怯なやり口だ。



今までにODAで約6兆円にものぼる援助を日本から受けておきながらも、「反日」を声高に叫び、破壊活動を正当化する。


正に、やっていることは恩を仇で返すようなことばかりだ。



極論かもしれないが、この際、中国から日本企業が完全に撤退してはどうだろうか?