『備えあれば憂いなし』
意味:準備をしっかりしておけば、何か思いがけない事が起こっても対応することができる。
このことわざとは少し異なるかもしれないが、予め大袈裟に準備や予想をしておくと、実際の結果は大したことがない…皆さんもこれまでこういった経験をしたことがあるのではないでしょうか。
私はこれを『あまのじゃく現象』と勝手に呼んでいる。
クリニックで検査を終えた私は、大病院へ向かう途中に、通り道である自宅に立ち寄り、病院へ行く準備をする。万が一入院になっても困らぬよう、リュックサックには最低限の着替えやタオル、充電器、眼鏡等の小物類、何泊かは宿泊できる用意をした。
『これだけ用意しておけば、いつも通り拍子抜けする結果になるであろう…😊』
通称『あまのじゃく現象』を信じて、荷物を整える。準備が出来てからすぐに大病院へ向かった。
車内では送迎してくれる妻にも状況を説明する。
私『さっきも電話で少し話したけど、血小板の数値とかが凄い悪くて、もしかしたら白血病かもしれないって。』
妻にも『…うん。』
少し不安そうな顔で返答する妻。何もわからずいつも通りに後部座席に座る3歳の息子。
妻の不安を払拭するかのように私は話を続ける。
私『いや、クリニックなんてどうせ大袈裟だから、どうせ大した事ないって😊ほら、前も心筋梗塞とか何とかって言われて、結局何もなかったじゃん。』
妻『そうだね。今回もそれで安心出来るなら良いよね。』
妻の不安を取り除けたらという思いと、自分の心を落ち着かせたいなという思いで話をしていた気がする。
後ろを振り向くと、目線が合い、ニコニコした顔で『パパ元気じゃん!』と答える息子。
なんだかとても勇気づけられた。
15分程すると病院に到着。私だけ下車して、救急外来で受付を済ませる。流石、大病院だけあって、受付には『2時間』と待ち時間が記載されている。
事情を説明して、紹介状を渡したが、一度待ち合いのソファでタブレットの入力をしながら待機するよう指示があった。
クリニックのおじいちゃん先生は『至急検査してもらうよう連絡しといたから。』とは言っていたものの、すぐには呼ばれない。
『やはり、そこまで緊急性はないんだろうな』と“あまのじゃく現象”を信じ込む私。
30分程経過した頃だろうか。名前が呼ばれ、診察室へ向かう。
救急外来の医師から『この後、すぐに血液内科の先生が来るから』と説明を受け、ベッド上で仰向けになりながら、血圧等を測定して待機していた。
その後、しばらくすると血液内科の先生が来て、説明を始めた。
血液内科の先生『私が血液内科の〇〇です。紹介状とお話を聞きました。今からもう一度血液検査をして、準備でき次第骨髄検査もします。』
なんだか、本格的な検査が始まろうとしている事を肌で感じる。
採血後には、一回り大きなベッドへ移動させられ、少しするとうつ伏せの私の骨髄検査が始まった。前々から骨髄検査はかなり痛みの強い検査であると噂は聞いていたが、病院の医師や看護士さんも脅すように痛みについて説明する。
検査が始まり、腰の真ん中付近に何やら太い針が刺さっているのを感じ始めた。確かにそれなりの痛みではあったが、かなり覚悟していたためかそれほどの痛みは感じなかった。
それよりもベテランの先生が付き添って、若い先生が針を刺していたのか『違う違う、もう少し深く刺してから、ここをこうやって引いて…』その言葉の方が余程私を不安にさせた。
『ベテラン先生が一発で刺してください…。』と。
骨髄検査は無事に終わったが、結果が出るのに少し時間がかかるとの事であり、その間に出来れば家族も呼んでおいてほしいと指示があった。
骨髄検査の結果よりも先に血液検査の結果が出たのか、先程よりも年配の先生が検査結果の紙を持って私のところにやってくる。
先生『血液検査の結果が出ましたが、前のクリニックでも聞いた通り、ほぼ間違いなく急性白血病です。』
名札の肩書や風貌からか言葉には妙に信憑性があり、この時点で私の願いはほぼ打ち砕かれた。
その後も先生は続ける。
先生『ご家族さんは到着してますか?間もなく骨髄検査の結果も出ますので、その結果も合わせてご家族さんも一緒に病状をお話させていただきます。』
すぐに妻にその旨を伝え、至急病院に来るように伝達した。
つい1時間程前までの強がっていた気持ちは全て消え去り、なんだか心にぽっかり穴が空いたような、魂が抜けたかのような、そんな気分になりながら、ほんの僅かな希望を持って骨髄検査の結果と妻の到着を待つ私であった。
続く…。