自閉症スペクトラムのわが子、コロナ禍の帰国生受験②
前回からの続きです。帰国生高校受験で一番最初に受けた学校から不合格通知を受け取った自閉症スペクトラムのわが子。すべり止めとして受けたところだったので、試験の日程的にも、もう後がなくおそらく大丈夫だろうと言われた第二志望校が不合格ならば、模試でE判定の本命の第一志望校は絶対難しいだろうとのことで、二次募集、三次募集の学校について細かく調べてくださるなど、日本の中学校の担任の先生からも大変心配されてしまいました。もともと、わが子はできることとできないことの間にかなり凸凹があり、成績も科目によってまったく違うので、受験科目や入学してからのことを考えて国公立ではなく私立を希望していました。得意科目で受験できるところを探したところ、最初に落ちた第二志望校の高校とわが子の本命の第一志望の高校は条件がぴったりだったのでそちらに願書を提出したのですが、不合格となった第二志望校の帰国生受験は海外育ちならではの国際性の上におしなべてどの教科も優れた学力がほしい、ガッチリと勉強して伸びる子がほしい、というわけで、明言はしていないものの、わが子のような発達障害のある場合は受け入れが難しい、ということなのだろうと思いました。さまざまなバックグラウンドを持つ多様性のある生徒を求めつつも、その学校ならではの絶対に譲れない一線を死守しなくては学校経営が成り立たないというのもまたきれいごとだけでは済ませられない事実なのだろうとも思います。帰国生を多く受け入れる学校は偏差値がさほど高くはない場合も多いですが、日本とは違うカリキュラムで学んだ子たちが多いため日本の模試では測れない部分が大きいのでは、という気がしています。一方で、実は保護者の私は、わが子の模試は3教科5教科だと毎回E判定になるものの、得意科目の英語や国語それぞれ単科だと途端に一桁から二桁の順位になることに、もしかするとこれはいけるかも…と一縷の希望を見出していました※理数が凹なんです中3の1学期、2学期までは成績が受験にそのまま影響するので、絶対に提出物を忘れないことや、定期テストはひたすら努力し、できるだけ上の評定を取れるように塾も国数英の教科を受講していました。ですが2月期の期末テストが終わり成績が決まってからは、塾をやめることにしました。本人も要領がいいというのかもう受験にない教科はとりあえず必要ないし、その分、受験科目だけに力を入れた方がいいんじゃね?とあっさり塾をやめると言いました。塾の先生や学校の先生からは万が一、本命校がダメな時は二次募集以降の受験のために他の教科も必要になることを心配されたのですが、先の見通しを持ちにくい特性のわが子に万が一に備えて…というのは今さらあり得る選択肢ではなく受験科目に英語や英作文があったので、英語に特化した受験勉強に切り替えたのです。なんでもそうなのでしょうが、帰国生受験も独特のテクニックみたいなものがあり、受験まで1〜2ヶ月の短期間では一人で過去問をがむしゃらにやるよりも、ピンポイントで受験校に合わせてた学習を的確にやった方がよいと考え、留学に特化した塾を見つけ、受験科目、受験校に合わせたプライベート授業をオンラインで受けることにしたのです。面接の練習もそちらで受けました。やはり合否データの蓄積された塾はお金を払うからには利用し倒す覚悟で使いこなして元を取りまくるくらいでなければもったいないと思います。第一志望校、第二志望校ともに英語、英作文、日本語作文、面接など帰国生枠の受験内容なので、英語を本人のレベルと志望校に合わせてよりハイレベルに引き上げ受験日までに仕上がるよう、細かくリクエストして指導を依頼しました。留学のための本格的なところだったので講師の先生も学生アルバイトではなくきちんとしたキャリアのある先生で、毎回の授業の内容や弱点などもきちんと保護者に報告書がきました。私たち家族が滞在していた国は公用語が英語ではなかったので、英語はわざわざ勉強しなければ身につくものではなかったのですが、それでも海外で暮らしていると正確な文法はできなくともなんとなく理解できる、なんとなく話せる、になってしまい、いざ日本に戻っての受験になると文法ができない、という、日本の海外生・帰国生あるあるの弱点がわが子も全開になってしまっていました。インターから留学した上の子は、日本語で英語の授業を受けることは逆に難しい、とよく言っていました。学びの組み立て方というかアプローチの仕方がまったく違うのだろうと思います。話が横道にそれてしまいましたが英語のプライベートレッスンで過去問を解いては間違ったところを講師の先生に解説してもらう、ということを繰り返していくうちに、本人は弱点が自分でわかるようになったようで、すごくわかりやすい、いい感じがする、と手応えを感じていました。この頃には、コロナ禍で散々オンライン授業を受けてきていたので、ZoomやGoogle Meetなどにもずいぶんと慣れ、オンラインの方がむしろラク、という感じでまったく問題ありませんでした。帰国生受験は、日本語で授業を理解できるか?を見るために、面接では英語のレベルよりも、日本語のレベルを見ることが目的とはっきり言われているところが多く、受験生の第一言語やバックグラウンドにもよると思うのですが、わが子は受験したどの学校でも面接で英語で質問されたことはなかったそうです。また、帰国生受験で慣れていないと難しいのが英作文の試験で、時事に絡んだテーマに沿って相当量を書かされたり、同時に日本語を書く力を見るために日本語で作文も書かせるところもあります。わが子も最初はまったく英作文を1行も書くことができず、無理だと言ってパニックになっていましたその様子を見た私もやはり志望校を変えるべきか?と真剣に考えたりもしました。英語のプライベートレッスンでも英作文を取り入れてもらっていたのですが、対面ではないオンラインでは講師の先生とのやりとりに限界があり、しかも週2〜3回で毎日というわけではなかったのと、年末年始の休みに入ってしまいレッスンが空いてしまったので、IDIY(アイディー)というアプリでネイティブの先生に添削してもらうシステムを利用しました。これが非常によく、帰国生入試でよく出される英作文のテーマに沿って英作文したものをアプリを通じて送るとネイティブの先生に添削されて返ってきて、日本人向けに作られているのかきちんとしたシステムで、先生も選ぶことができ、添削の内容も正しい文法とよりスマートな言い回しなどを教えてくれ、どこが間違っているのか、どこをどう直したらよりよくなるのか、大変わかりやすく、とても役に立ちました。終盤になるとより早く添削されて返ってくるIDIY Businessというのを利用し、試験の前日までこちらは使用しました。英作文も展開の仕方がだいたい決まっていてそれに慣れるとどんなテーマでも書けるようになり、英語圏で暮らしていたわけでもなくインターナショナルスクールでもなかったので、高度な英作文を書く、というよりは、自分の知ってる単語を使って海外での生活や経験を必ず絡めながら自分自身の考えを書く、ということを目標にしました。受験でそれぞれ同じテーマで日本語の作文を書いてから英作文を書く、という出題もあったので、時間と字数を決めて毎回異なるテーマについて日本語で自分の考えを書き、次にそれを英訳する、というやり方をしました。英作文は自分の書いた日本語の作文を厳格にそのまま英訳するというよりも、同じ意味で自分の考えを書ければよい、という考え方でしました。英語で表現する、ということが大切と思ったからです。実はうちの子はどういうわけか、この自分の考えを言語で表現する、いうことが得意だったのです。そして、結局、E判定で3教科5教科の模試の偏差値では40以上も足りなかった普通科の第一志望校に無事、合格することができました。コロナ禍の中、本当にひさしぶりにホッとする出来事だったと思います。お世話になった日本の中学校の英語の先生は、何十年という教師生活の中でわが子が合格した学校には教え子で合格した生徒がそれまで一人もいなかったとのことで、初めての合格者だと大変喜んでくださいました。自閉症スペクトラムという発達障害と凸凹のある学習障害の帰国生受験で、小学生の頃から日頃の成績は最低限できるところで必死に頑張ってきた感じでしたが、奇跡的に得意だった英語と国語(日本語)とで、わが子に適した試験科目と校風を見極め受験した感じでした。コロナ禍のため日本の学校と海外の学校との二重学籍で、時差や言語の違いのある現地との書類のやり取りや連絡が、日本でお世話になっていた中学校の先生方には本当に大変だったようで、行き違いもたびたびありました。また、国をまたいだ手続き関係で何度も問い合わせをしなければならず、どこの受験校の先生方や事務所の方にも大変お世話になったと思います。受験校の校長先生自ら出願手続きの件で自宅まで電話してきてくださったところもあり、コロナ禍で大変だった反面、帰国生ということで配慮をしていただいたことが深く心に残っています。高校入学後は再びの環境の変化で、慣れない電車通学や相変わらずのたくさんの忘れ物など大変なこともたくさんありました。受験にあたってはわが子の自閉症スペクトラムについては学校側には一言も話さず受験したのですが、入学後すぐに学校のカウンセラーの先生に相談し、わが子の発達障害について先生方で共有してもらい、わが子の学習の進め方について配慮をしてもらうことができました。学校見学等で垣間見た、この手厚い先生方の指導のあり方が、わが子を入学させたいと思えた決め手でもありました。進学した学校は、わが子のように発達障害を抱えている子や身体的な障害を抱えている子もいれば、文系、理系、医学系、芸術系、スポーツ系、帰国生、外国籍の留学生等、ありとあらゆる生徒が混在しながら伸び伸びと学校生活を送っている、という印象です。わが子は自閉症スペクトラムの診断を受けたのが海外に住んでいる小学校高学年の時だったので、療育を受ける機会もなく、親子とも小さい頃から何でこんなに大変なんだろう?と手探りで葛藤しながらの毎日で、何より本人にとって学校生活は言うに言われぬ苦労があったと思います。高校に入学してようやく理解してもらえる環境で、落ち着いて、どのように工夫してこれから生きていったらいいか?をカウンセラーの先生に相談しつつ、毎日の学校生活が送れるようになり、部活や勉強に励みながら一番伸び伸びと過ごせるようになった気がします。それでも発達障害なので、まだまだ親がフォローしなければならないところもありますが…。わが子にはこれから先、大学進学や就職とまた大変なことがあると思いますが、コロナ禍で頑張ったこと、乗り越えたことを力に変えて、わが子らしく頑張っていってほしいと思っています。※次回はコロナ禍で判明した衝撃の事実についてです。