「いろんなことがあるけど、まあいいか」って前向きになっていただけたら … (内田理央 2021.8月

 

この奥さん、このぬるぬるのスカートの下、なんにも穿いてねえぜ……!」
 臀部に直接指がやって来た。
 い、いやあっ……。
 さけびはもう声にならない。忍のことを心配するゆとりももうなくなっていた。
 セーターをまさぐっていた数本の手がそれぞれ好き勝手な方向に布地を引っ張ってきた。たちまち――。
(いやっ……)
 ビリビリッと音がたつ。セーターが裂ける。肉体から離れていく。間髪を容れず汗で湿ったブラジャーの――ホックにも指がかけられた。ストラップが外される。
(そ、そんな……っ)
 信じられなかった。裸に剥かれようとしている。まさか電車の中で――!
 口元や首にグイグイと力がかけられていてあいかわらずろくに抵抗もできない。
 ひとりの若者が熟乳にかぶりつくように口を寄せてきた。
 すでに何回も発情の発作をしめしている肉体。そのなかでもとりわけ腋の下からと髪の生え際からの発汗が激しかった。そして乳房の表面もまた際だって汗に濡れていた。メロンをふたつぶら下げたようなボリュームのある乳房。ぬるぬるとした汗にぬめったその皮膚も蛍光灯の光を反射させている。今にもはちきれそうにも見えるほどのそのふくらみは年齢を感じさせない張りの良さを保っているのだ。
 経産婦とは思えないほどの清楚さもほのかに残しながら、その乳輪や乳首は熟した人妻らしい色づきを示しプックリとふくらんでその身を勃ちあげていた。着衣のままでさんざん身体を狂わされたあげくの成れの果てなのだ。
「ああ、おれもあのおっぱいに頬ずりしてえ……」
「しゃぶりてえ」
「今すぐ連れ帰っておれのベッドの上におしたおしてえ」
「おもいっきりのしかかって、おもいっきりブチこんで、おもいっきり出してえ」
 不良たちが手を伸ばしながら口々にそんなことを言っている。かれらの指がふたたびスカートにも伸びてきた。
(い、いやあっ……!)
 しかし――相手の人数の圧倒的な多さにはどうすることもできない。
 とうとう絹江もまた――電車の中で素裸にされていた。
「うわ、すげえ……」
 不良学生たちの視線が胸だけでなく今度は下腹部にも注がれているのがわかった。無数の蛇のように、ミミズの大群のように、指と視線がからみついてくる。太ももの付け根にまでくいこんでくる。凶が凶がしくて邪悪なものが寄って。たかって。
(そ、そんな――いやっ……)
 性欲をもてあました若い男性の視線が圧力のかたまりとなっておしよせてきていた。
 臍の下。下腹部の丘のふくらみを控えめな量の繊毛が飾っている。丘の豊かな隆起は隠しきれてはいない。白い皮膚もかすかな肉裂の褐色もきわめてうつくしい。そこから男心をそそる匂いがほのかに立ちのぼっている――。

「いろんなことがあるけど、まあいいか」って前向きになっていただけたら … (内田理央 2021.8月 

 

(こんな、こんな酷い目に遭っているのに)
 由美子は喘ぎを洩らすまいと歯を食いしばる。弱味を掴まれたとはいえ、こんな卑劣な少年たちの生殖器に翻弄され肉に快美を感じてしまい、身体の奥に潜む敏感な性感が恨めしい。惨めさの極致にいるのに、その快楽を貪欲に楽しむ、もう一人の人格を制御できない。
 顔を背けて破滅に至る恐ろしいなりゆきを思い、歯を食いしばって恥辱に満ちた悦楽を無視し凌ごうとするが、下半身はすでに肉悦の支配下だ。酔ってしまっている。
(か、感じては……だ、だめぇ……)
 悦びの声を洩らしてしまえば、弱味を握った憎い不良たちの権威は増大する。
 だが、守るべき矜持は、すでに崩壊させられている思いもあって、自らの敗北を予期してしまう。自分のなかにある堕落した部分は、癌のように増殖している。
 宮城は腰の動きと同時にタプタプと揺れ踊る豊満なバストを掴み、指を食いこませ変型させながら肉の反発力を楽しみ、自らの快楽を長引かせようとする。
 経験の浅い不良少年の単純で強引な動きでも、敏感な由美子の身体は鬼頭に指と媚薬で充分潤されているために切ない息遣いで応えてしまう。淫液でぬめる性器は摩擦で熱を放ち、揉みたくられる乳房は弾力を増し、乳首は極限までぷっくりと勃つ。
 後ろ手に縛られた腕に、自身と男の体重が加わり、苦痛を意識する。だがこのロープは由美子の免罪符、教え子たちによるレイプであるとの証なのだ。
 もし縛られていなければ、性の愉悦に酔って、卑しい不良少年の背中に手をまわして抱きしめ、脚で男の腰を締めつけ、思う存分自らの腰を使うに違いない。
 己の手首を縛めるロープは世間への言い訳と、自身のこれ以上の堕落をふせぐ消極的な安全弁でもあるのだという思いに至った時、灼熱の快美が腰から湧き起こる。
 死んだように反応しまいとする由美子の意志も、肉は制御できない。肉のシャフト運動をより深く感じるべく、腰を蠢かせてしまう。
「お、おお、ちくしょう。負けんぞ」
 小さな動きですら、膣内を行き来するペニスには刺激となる。仲間の前で逸る射精を怖れる宮城は、由美子の肌にきつく指を食いこませて堪える。
 膣いっぱいの肉棒が、激発の衝動を凌いで、再び動き出す。先に放出した粘液と由美子の分泌する愛液でぬるつく回廊を前後に行き来しはじめた。
 うむむぅ、由美子が呻きを洩らす。鬼頭に散々嬲られ刺激された粘膜を、切ない掻痒感で蠢く肉の通廊を、男の剛直で摩擦される心地よさはどうであろう。
 これが女の悦びなのか、そしてそれは、おぞましいレイプでも得られるというのか。
(わ、わたし……駄目になってしまう)
 底知れぬ深さを持つ快楽の海に沈み込もうとする由美子は、はしたない声をあげまいと、ありったけの意志を総動員して奥歯を噛みしめる。
 肩に横顔を押しつけ快をこらえる美教師を見下ろす宮城は、エクスタシーに追いこみ、その矜持を打ち砕く最高の射精を得んと女体に腰をぶつけつづける。
 狭い倉庫は男たちの倒錯的な欲望の熱気と、熟れた牝の放つ色香でムンムンとしてきた。
「おい。はやく替われよ、こっちもしたくって、たまんねえんだ」
 遠山がなじる。醜い生徒と堕ちた美しい女教師の、一種の闘争ともいうべき、交接を見守る四人の不良たちも、欲情が高まっている。