お久しぶりです。
なおざりとおざなりが未だにごっちゃになる私です。
さて、4月観劇してきた『ツミとバツ』
場所はすみだパークシアター倉でした(くらではなくてそうと読むみたいです)
Twitterで検索する場合は #ツミとバツ2025 を使うと便利です
しかし公式アカウントはかなりエゴサ上手なのでハッシュタグ使ってない感想ツイートも見つかってしまったりもします
その場合はあっという間にリツイートされてしまうので公式さんのアカウントに飛べば一か所で色んな感想が見られるので楽かも
内容はドストエフスキー原作の『罪と罰』を現代日本へ翻案した作品ですが、主催のGroup Bさん公式YouTubeで公演を観てから原作を読んでもらってもいいよって言ってくださっていたし現代日本として不自然な箇所はなかったのでご安心を!
出演者さんは以下です
コオリジロウ
犬飼直紀
マルヤマソノカ
山本咲希
コオリミチナ/タナベリサ
田代明
ウラタトモオ
千葉一磨
イワノリョウ/スガヒトシ
大田翔
コオリフミエ
吉川恭子
ヒラルリコ
橘未佐子
マルヤマハルイチ
萬谷法英
(敬称略)
漢字はあえてあてなかったみたいです
あとなぜか公式HPでは大田さんの役名が違っていますが、パンフレットに記載されていたのはこっちの名前なのでそちらを採用しております!悪しからず
ストーリーはシングルマザー家庭の主人公(ジロウ)がバイト三昧で通っている大学の単位を落とし留年が決まったところから始まります
バイトばかりしていた理由は学費で奨学金がかさんでいて焦っていたんでしょう
彼のお父さんは詐欺に遭い自殺してしまっているのでその借金等もあるのかも
しかも主人公は法学部に入って弁護士目指しているんですが法律じゃ自分の父を死に追いやった詐欺師たちを殺人罪には問えないし詐欺罪として5年くらいで刑期が終わったりするしで意欲も下がりっぱなし…
趣味で小説を書いていたこともあって高校時代にネットに公開したミステリー小説は年上の友人(トモオ)には刺さりまくっており、何らかの賞に応募して箔をつけてくれたら勤めている書籍編集部で出版したいくらいまで評価してくれていますがその後は小説書くどころか読む時間もないくらいバイトに明け暮れていたそうです
経済的に困窮していた主人公のもとに姉(ミチナ)の縁談が知らされ「自分が家の金を浪費しているから姉ちゃんは身売り同然で結婚するのでは!?」くらい思いつめます
そこで父を陥れた詐欺師のようにあくどく儲けている質屋(イワノ)を見つけ、空き巣に入ったつもりが強盗殺人になってしまい、彼を追う刑事(ヒラ)や偶然出会った親子(ソノカ、マルヤマ)、姉の婚約者(スガ)が彼の考えに干渉していく…という展開です
この作品はミュージカルなのですが物凄く楽曲が難しくてですね…
下がると思ったら上がったり逆だったり…プレビュー公演観たときは私の脳で音楽を処理しきれなくなって混乱した曲がいくつもありました。予想と違う音へ行くので全く落とさず歌っている演者さんが間違えているように聞こえてしまうことがあってかなり慌てました。すこしずつ慣れた
コーラスワークやハモりが綿密に練られているのはわかるのですが、もうちょっと素直に作ってもいいんじゃないかな…と思っちゃったりしましたね…まぁ音楽やったことない素人なので良さを理解できていないだけなんですが
作中でのSNSの使い方は上手いな~と感じました
ジロウが起こした事件に関する世間の反応であったり、彼が小説をウェブ掲載していたことをヒラ刑事にバレて内容から思想へのカマをかけられたり…現代日本に馴染んでいました
私がジロウだったら本名のわかるアカウント名で小説は載せないかなと思うんですが、高校生時分に作ったアカウントなんて本名でやってる同級生のアカウントとか普通にフォローフォロワーにいたりするから芋蔓だったりしますよね…
作品への感想はそれこそTwitterで語ってはいるので改めて整理するのは別の機会にして、この記事ではそれぞれのキャラクターについて思いついたことを書きます
筆者は天邪鬼かつ偏見が多いため、爽快な内容ではないことあらかじめお詫びします
・ジロウ(主人公)
自意識過剰です。誰もそんなこと気にしてないって!っていうことを自分のせいだ、自分がああしなければ…を考えて生きている感じがありつつ、そうやって先行して自分を責めてますよポーズをとることで「私はすでに私に罰を与えています!これ以上の罰を私に与えるんですか!?あなたはひどい!」と逃げているように見えます。私がそういうタイプなんです。自分の嫌な部分を端正な俳優さんが演じているという珍しい状況
とにかく大学生なら講義を受けてください
・ソノカ(偶然出会った女性)
彼女はシングルファーザー家庭で父は職を失い妻に逃げられ自暴自棄になっていて仕事してないので彼女が色んな仕事をしている大黒柱です。他人に対してめっちゃ優しいのとすぐ相談に乗ってしまう性分があり闇バイトに巻き込まれたりします。ソノカが世話焼きなのは悪いことではないですが人を助けることに酔ってるとか散々に言われたりそのせいでジロウに告解されてしまったり、下手に手を差し伸べるととんでもないことになっちゃう例として存在しているところに胸が痛みます。いまからでも楽しい思い出たくさん作ってほしい
・ミチナ(ジロウの姉)
彼女については演じた田代さんがインスタライブでお話しされていたことが、私がミチナに感じていた「大丈夫かなこの人…」をはっきりと言語化してくれていたのでそれのメモみたいになってしまいますが、ミチナのソロ曲[悲しみは遠く彼方]は2番まであるのはなぜか?ということから逆算して彼女の罪を考えたようです。この曲は結婚するぞ!ハッピーになるぞ!お金にも不自由しない暮らし!最高!万歳!をかなりメルヘンチックに表現しています。でも婚約者はなんかおかしい?あまりに羽振りがいい?「そんなものは見ない!(田代さんご自身の発言で面白かったので使わせてもらいます)」ジロウの様子が変?「そんなものは見ない!」そういう逃避や見ないふり傾向を伝えるもの、と聞いて非常に納得しました。ありがとうございます
・リサ(殺された女)
実はミチナと同じ人が演じている。最初ビックリした
田代さんの感じ悪いスタッフさん再現が本当に上手だけど、実はソノカがやばい仕事から足を洗う後押しをしてくれた頼れる先輩だったと知ったら、お金が欲しくて時計を質に入れたいと訴えるジロウへの目線に意味が見えてきたりしました。個人的にはミチナより好きです
・トモオ(年上の友達)
性格は温和だし親身だし笑顔も爽やかだし定職に就いている完璧超人。圧倒的光。もしかするとミチナの結婚に対して純粋に祝いたい気持ちじゃないのかもしれないけど、コオリ一家の幸せを心から願っている人。彼自身は物凄くまっとうな人なんだけれど、このツミとバツ世界の中では異質に見えてしまうのが面白いです。「なんでここまでしてくれるの?」と訊いても「だって俺たち友達だろ」と微笑んでくれそうです。スガさんはずっと信用してもらえなかったのにね…
・イワノ(質屋)
経済回していると言い張るけど搾り取ったお金を何に使ってるのか不明。ここまで開き直っていられるのは才能だと思うし借金踏み倒し老人(萬谷さん演)を「奥で話しましょうか」とこの後ボコボコにする雰囲気出してたけど老人はカメラを壊せるほどの余力を残していたのできっとそこまで手荒なことはしてない。実はジロウより法律に詳しくて、追及されたら言い逃れできるポイントを押さえているってのも十分考えられる人
・スガ(ミチナの婚約者)
スーツ眼鏡長身敬語ハンサムで歌が上手いのできっと犯人。犯人でした。彼の精神構造は大好きです。倫理や道徳を理解してはいるけど内在化していないのでタブーを軽々やってのける。ヒラ刑事の言う「ひとでなくな」った人。保険金目当てに親しくなった人を次々と…ということはなく、他の登場人物と比較しても愛情の強さでは負けていないくらいの重い人。重いがゆえの退路の断ち方する令和のヤンデレ。創作物ってこういうキャラクターを魅力的に描いてしまえるから、最高で最悪ですよね。リスキーすぎる生き方してるけどそれが性に合ってるならもう何も言えない
・フミエ(ジロウの母)
申し訳ないけれど、彼女の考えはよくわからなかったです。それは私の人生経験が浅いせいだというのはわかる。なぜ姉のミチナより弟のジロウの出産で「自分より大切なものができるなんて…」と思ったのか?ぼんやりと息子贔屓な傾向が見えてしまい、それは改稿で生じた矛盾なのではなく、そこで発露するフミエの人格なのだと思うと、共感したくなかったです。役者さんはとっても温和なかわいらしい人だったのでなんだか安心しました
・ヒラ(刑事)
単独行動をしたり心理戦を仕掛けたり、法律の範囲であればかなり自由に動いてしまうので、私はヒラとスガはかなり似た性質を持っていると感じています。ジロウを追い詰めていくのでジロウからしたら自分をもてあそぶ悪魔のように思えるかもしれないけど、本気の悪魔はジロウをひとでなしの道へ誘うスガなので、ヒラはお釈迦様のようなものなんですよね。彼女はサディスティックな人間かというとそうでもなく、法の裁きにより罰を受け罪を雪ぐことが犯罪者に残された唯一の救済と思っているからこそ、ジロウの罪の意識を刺激し、自首を促したのだと思います。その過程を楽しんでいるのはそうかも
・マルヤマ(ソノカの父)
「私が悪いんです…私がちゃんと働かないから…」そうですねとしか言えない。優しいのはわかるし、こういう人はほっとけないし、この人も色んな人をほっとけないんでしょう。でもキャパシティ超えた問題を抱えようとして一緒に溺れてしまうタイプじゃないかなあと。目の前で失われかけた倫理を守るために別のところへ問題を皺寄せしちゃう、倫理の自転車操業。でも善人なのは間違いないので、彼が落ちぶれていってしまう世界って、優しさのテイカーばかりのぼんやりと絶望が覆う世界ですね。アルコール依存症は治療が必要だから、ソノカも一緒に溺れていってしまう傾向だったのがさらに悲劇。彼のことは「なんか優しくてだめな奴」略して「やさだめ」と呼んでいきたいです。小さくてかわいいやつがちいかわみたいなノリで。あの居酒屋は家に居場所がないマルヤマさんの逃げ場だったのに、そこにいる人たちは(当然そんな義務はないわけだが)彼のことを福祉につなげたりはしなかった。網の隙間からこぼれ落ちてしまう貝殻みたいな存在
名前のある人物はこれでおしまいです
ハンチングおじいちゃんやハイヒールおばあちゃんに関して書きたい気持ちもありますがあまりに更新していないのでこの段階で見切りをつけます
今後も改稿を重ねて変化していく作品だと思うので、先が楽しみです
おまけ
撮影可のカーテンコールの萬谷さん
しもてに座りすぎました
ニコニコ〜
芸術的