さて翌日。
 何やらとっても場末感の漂うビジネスホテルで目を覚ます玲。どれぐらい場末かって、朝食に降りた先が喫茶店としても営業できる形態になっていたのだけれども、そこのテーブルが昔懐かしインベーダーゲーム組み込み仕様だったぐらい。
 しかも球面ブラウン管のこちら側と向こう側が、それぞれ二段ずつ半透明に色分けされている仕様と来てはもう懐かしすぎて。
 思わずミックスジュースが欲しくなったぐらい。三つ子の魂百までも、とはよく言ったものだ。
 で、窓の外に目をやると・・・昨日と変わらぬ曇り空。すなわちいつ降り出してもおかしくない状態。
「やっぱりか。」
 少し気落ちしながらも、しかしそれはもとより覚悟の上。数日前の段階でグランドスタンド指定席も購入しておいた。少なくともレースの間中ずぶ濡れということは無い。
 さあ、しっかり腹ごしらえをしたら今日もまたサーキットだ! 我らが歌姫の晴れ舞台、しっかりこの目に焼き付けなければ!


 サーキット行きのバスの中で土砂降りになりましたが何かorz


「た、滝・・・??」
 バスの中から外がよく見えません。というか、タイヤが蹴立てる水しぶきがほとんど船のそれです。
 ひとまずショップに駆け込み、ポンチョを買い込む。これで荷物が濡れる心配はなくなった。
 蒸れるけどな。
 で、宿が別だった関係で別行動となっていたツレと連絡を取り合う。どうやら向こうは1コーナー外側のスタンドにいる模様。
 ではというのでこちらも移動を開始したものの。
 ピット出口当たりでマシンの魅力にとっつかまって移動不能に陥る(大笑)。
「いっそ劇感に回れば良かったかなぁ」
 と呟きつつスマホで動画をこちょこちょと撮ってみる玲。広角の度が過ぎてあんまり面白い絵にならないかな?
 それでも水煙とともに1コーナー向けて突っ込んでゆくマシンの迫力は、これはまたこれで味がある。見にくいのが難点だけどw
 を、昨日の予選で派手にクラッシュしたレイブリッグ号が復活してる。何でも朝4時までかかって修理したんだそうで。
 しかし用意してた部品だけでは足りずにホンダ陣営としてストックしてたパーツまで使ったそうで
「左右フェンダー、無塗装のカーボン剥き出しやん」
 こういう本来企図された姿とは異なる応急的な、現地改修っぽい姿、玲的には大好物である。
 しかしいつも思うのだが、クラッシュしたマシンを一晩の内に修復して戦線復帰させてみせるメカニックさん達って、もう玲からしてみればゴッドハンドの集団に見えてしまう。
 去年の春も、予選中にリアタイヤから後ろが無くなるレベルのクラッシュをしたHIS KONDO ADVAN GT-Rが一晩の内に修復されて、しかも決勝で優勝して見せたという熱い展開を目の当たりにしている。 
 肩入れ度が内心上昇する(←オイ)。
まぁクラッシュなんかしないに越したことはないんですがね。ミク号がガッシャンするなんて考えたくないし。
 あの特徴的なリアウイングステーはフレーム直付けだからもしぶつけたら修理が大変、って話しも聞く(だから11年仕様で設計変更されたとも聞く)し。
改めてミク号と愉快な仲間達の無事を祈りつつ、フリー走行明けにやっとでツレと合流。
 雨中のフリー走行でミクさん3位を受けて上機嫌になりつつパドックへとお邪魔してみると、そこには何と!
 海外からのお客様の姿が!
 恰幅良く、人懐こそうな顔のこの御仁、サウジアラビアからのお客様だそうな。確かに胸元に光るのはサウジアラビア国旗のピンズ。
「え、も、もしかしてミクさんオイルマネーゲット? BOBさん絶賛営業中??」
 激しく妄想。
 しかしどう考えてもオイルマネーが付いてしまうとミクさんの居場所が無くなってしまう。すっぱり諦めて・・・
 あ、でもStudieがニュルに挑戦するならそのスポンサーとしては非常にありがたいのか。その時はそっちも応援しますね。その代わり映像の配信とか、録画の事後公開とかよろしくお願いしますw
 さて、雨中のピットウォークはカメラを取り出せず、ほぼRQさん達をスマホで撮って回るだけに終始した玲。
 本戦前の給油も終了、必要になるだろう飲料も買い込み、いよいよ本戦を堪能するべくグランドスタンドへ。
 応援席を申し込んできたツレはそちらへ向かったので、本戦は一人で見ることになる。
 これはチケット入手した当初は劇感エリアに張り付く予定でいたからなのだが・・・次は応援席、取ろうかな? 
 斜め下に青く染まったエリアを見てしまうと、ついそう思ってしまう。
 5月の岡山では、本戦しか行けなかったけどフラッグ隊の皆さんとご一緒させていただいて楽しかったしね。
 うん、検討課題だ。
 そうこうしている間にスタート時刻が近付く。マシン達がずらりとグリッドに着いてゆく。マシンの調子はいいらしい。後は無事に、JIMGAINERより前でフィニッシュできるか。
 500クラスから順番にマシン及びドライバーが紹介されてゆく。緊張感と、そしてテンションが高まってゆく。各チーム、ドライバーの応援団の興奮もピークに達している。
 いいね、この空気。やっぱりサーキットはいい!
 そしていよいよ。
 ミク号の順番を迎える!
「クラス6番手からのスタート、さあ初音ミク応援団の皆さんも盛り上がっていることでしょう! カーナンバー4番は初音ミクグッドスマイルBMW、ドライバーは谷口信輝、番場琢組!」
 カメラを握っているので拍手は出来ないけれど、せめて握り拳を突き上げて応援の念を飛ばす。NOBさんのスタートラップ劇場をまた見せてくれ!
 そして期待に胸を高鳴らせながらいよいよマシンはグリッドを離れ、1周のウォーミングアップランへ。
 これから始まる500kmの長旅。不安定な天候を突いての長丁場が始まる。今年はレース距離が短縮されたが、それでも他のレースの2倍の距離。何が起こるか分からない。
 身の引き締まるような緊張感と期待感の中、まずはGT500クラスのマシン達が獰猛な咆哮とともにホームストレートを駆け抜ける!
「!!」
 グランドスタンドは反響が凄い。冗談抜きで皮膚が震えるほどの轟音に一瞬歯を食いしばる。凄い迫力だ! 去年の劇感も楽しかったが、このサウンドを楽しめただけでも今年ここに来た甲斐はあった!
 そして続けてGT300クラス! サウンドの迫力では劣るかも知れないが、こっちにはありとあらゆるマシンの揃ったバトルロワイヤルの面白さがある。
 そしてその中を突き抜けてゆくミク号の勇姿! 頼むぞ、行ってこい! 1ポイントでも多くもぎ取ってくるんだ!
 そして残されるのはもうもうたる水煙。やはりレース条件としてはかなりのヘビーウェット。思わぬところで足下を掬われかねない。
 気をつけてくれよ、NOBさん!
 祈る思いの最終コーナー、ミク号はどこだ、どこにいる? 大型ビジョンで見ていた限り、コースオフしたマシンはいないはずだが・・・

 5位だ! 1台抜いて5位にいる!

「おお、凄ぇ! 谷口さん凄えよ!」
 状況の不利が何だ。マシンの不利が何だ。条件が悪いというなら、俺がそれをひっくり返してやる! と言わんがばかりの谷口選手の力走。
 握り拳に力がこもる。
 行け、その調子だ! JIMGAINERを突き放せ! 何だ、レースペースも悪くないじゃないか!
 そんなことを考え始めていた、その矢先だった。
 ミク号が一つ、順位を落とした。その次のラップにまた一つ。
「!?」
 何かのアクシデントか、それともどこか壊れたのか。冷たいものが背筋を駆け上がる。どうか、どうか一時的なものであってくれ!
 しかし谷口選手をしてミク号の順位はズルズルと落ち続けてしまう。どうにも降雨量が大きく減ったことが、皮肉にも深溝レインタイヤの一番美味しい領域を外れてしまった模様。
「くそ、ここでかよ!」
 歯ぎしりする思いのまま、為す術無く落ちていく一方の順位表示を睨むことしかできないこの悔しさ。ピットインして浅溝レインタイヤに交換しようにもミク号をはじめとするFIA-GT勢は燃費に辛さを抱えている。
 このタイミングでピットインしてしまうと余計な給油が必要になって、義務付けられた回数以上にピットインが必要になりかねない。
 苦しみながらでもこのまましばらく踏ん張るしかない! こんな展開、去年もここであったよな・・・
 こうなれば番場選手のスティントで浅溝レインで追い上げてもらうしかない! 2年前の、あの驚異の走りの再現に望みを託し、よろばうようにピットインするミク号を見守る。
 頼むぞ番ちゃん! S.B.T! S.B.T!!
 カメラのファインダーを覗く手が震える。もう冷静に写真なんか撮っていられない。何とか、何とか一つでも上位まで巻き返してくれ!
 だがしかし。
 願いとは裏腹に、ミク号のラップタイムは再び下降線を辿る。先行車のピットインでじわじわと順位は上がるものの、トップ集団、そしてJIMGAINERとの差は開いてゆく一方。
 そしてついには周回遅れにされてしまう! 
 流れが根本的に悪すぎる。気持ちが折れそうになったその時。
 大型ビジョンに、ある光景が大写しになった。
「ああっ!」
 スポンジバリアーに大きく乗り上げて停止してしまったRAYBRIG号の姿! メカニック達が必死に修復を成し遂げ、見事復活して見せたあのマシンが、再びクラッシュの憂き目を見ている! それもドライバーの安否が気遣われるような有様で。
 当然の如くレースは全コース黄旗振動表示、セーフティーカー導入となる。幸いドライバーは無事だったらしい。胸をなで下ろす。
 やっぱり誰もが無事であってこそのレースでありバトルであって欲しい。クラッシュなんかあんまり見たくないのだ。
 だがその一方で。このSC導入でミク号は上位からさらに大きく突き放されてしまう。
 さっきラップ遅れにされた影響が、こんなところで出てしまうなんて。
 絶望感が襲う。正直、「惨敗」という言葉が脳裏を横切ってゆく。
 だがしかし。
 今年の鈴鹿の神様は、あるいはマモノは、悪戯を仕掛けるのが大好きな様子だった。
 SCラップ明けから、ミク号のラップタイムが大きく向上してきたのだ。
「おお??」
 前走車との差をみるみる詰めてゆく。ZENTポルシェをかわした! しかもその前のランボ88号車とのギャップを毎ラップ秒単位で猛然と詰めてゆく!
 乾き始めた路面が、やっとタイヤにマッチしたらしい。凄いぞ、本当にS.B.Tが帰って来た!
 みるみるタイムギャップが縮まってゆく。現金にも意気上がる玲の耳に、さらにとんでもないアナウンスが飛び込んできた。
「4号車がスリックタイヤを用意している」


 !!?


 なるほど確かに路面は乾き始めているようだ。しかしそれはあくまでライン上の話。そこから一歩外れればそこはまだ濡れた状態なのだ。しかもこの先、再び雨が降らない保証は無い。
 しかしこのまま無難な選択をしていても、JIMGAINERとの勝負権は失われてしまう。
 チームの判断を信じるしかない。NOBさんなら、谷口さんなら何とかしてくれるはずだ!
 そしてそこからの追い上げは皆さんご存じの通り。
 前走車を最早千切っては投げ、千切っては投げ! S字から逆バンクにかけて次々と3台のマシンを仕留めていった大型ビジョンの映像は、忘れようったって忘れられないインパクト。もはや神がかって見えるレベル。
 きっとマシンはドライの時ほどグリップはせず、ズルズル滑りまくっているはず。事実、同様にスリックに交換したマシンのスピンやコースオフが頻発している。
 にもかかわらず、谷口選手はその手綱を緩めない。巧みに、容赦なく、ミク号を駆り立て続ける。これならJIMGAINERにも追いつける!
 捨てる神あれば拾う神あり。そう思った瞬間、しかし好事魔多し。
 何とミク号にドライブスルーペナルティーの通達が。畜生、本当に流れが悪い。逆風が強すぎる!
 肩を落としかける玲の目前で、だが谷口選手は微塵も気落ちなどしてはいなかった。
 ペナルティピットを消化するや、玲が見たのは最早鬼神の走り。
 みるみる間にJIMGAINERとの差が詰まってゆく。アイツの直下、5位まで巻き返してきた!
 残り周回数とタイムギャップ、現在のラップ差が計算される。
 かなりのぎりぎりのライン! しかもレースそのものの時間切れが迫ってきた。ここに引っかかると、そこで強制的にレースが終了してしまう。貴重なラップを失ってしまう。
 何とか、何とか追いついてくれ! ここまで逆風だったんだ、せめて最後ぐらい追い風を吹かせてくれ!
 毎ラップほぼ4秒詰まっている。時間的には後2周が限度か! 頼む、届いてくれ!
 分厚い雲の下、再び雨の雫が落ち始めたサーキットに、今年は見られないと思っていたナイトランの光景が展開される。
 黄色いヘッドライトの明かりを輝かせながらミク号がフィニッシュラインを超えたとき。
 JIMGAINERは、0秒873だけ、ミク号の前にいた。
「ああ、届かなかったか・・・!」
 がっくりと肩が落ちる。
 しかし、悔しい一方で、凄いものを見られたという興奮もまた存在していた。
 一時は全く勝負にならなかった車が、見事5位まで巻き返して見せたのである。
 よし、チームの皆さんに会いに行こう。
 凄いものを見せてもらったお礼を言いに行かないと。

 そして駆け込んだピット裏。いつもの反省会が始まる。
 最高に熱いものが見られました。本当にありがとうございます。
 悔しくないと言えば嘘になるけど、見に来て本当に良かったと、そう思えるレースでした。
 でも一番熱かったのは。
 最後に谷口選手が見せた、あの男泣きの涙だったかもしれない。
 ああ、またサーキットに行きたいな!


 さて、長々書き連ねてしまいましたが、へっぽこ観戦記もこれでおしまいです。
 皆さん、次はいつになるか分かりませんが、玲もまたサーキットに行きます。その時はまたよろしくお願いします。

 次回は晴れますように!

 さて、いよいよ始まる予選1回目。なのだが。
 マシン達が次々とピットを離れるその瞬間、玲達は・・・

 昼飯を食っていた(爆)

 いやぁ、朝が早くてロクに食わずに(というか車の中でパン食っただけ)飛び出したもんでエネルギー切れが深刻なことになりまして。50分間続くのをいいことに、実はピットウォークをちょっとだけ早抜けしてパドック裏のレストラン、Suzukazeでまったり休憩モードの3人組。
 写真を見返してみたり、どの辺に行ってみたいか相談したりしつつ。
 でもエグゾーストノートが響き始めるとやっぱり腰がそわそわし始めるわけでしてw
 カレーライスで給油完了、ピットアウト! 冷却ならぬ飲料水も追加して、今度はグランドスタンド方向へ。
 明日になれば指定席だけど、今日はまだ自由開放状態、いつでも入り込める。のだけれど。
「結構勾配きついのね、ここ。」
 前のお客さんの頭が邪魔にならないようにするためか、割と急勾配のグランドスタンド。気を抜くと結構怖い。特に下り。
 宿泊荷物のリュックサック背負って、お腹の前にカメラバッグ固定した玲。
 両手が自由なのは非常に便利なのだが、前後に身体が出っ張った格好になるので意外と動きづらいことに気付く。
 去年肩掛けのバッグを数回他の人にぶっつけてしまったので、その反省に立ってこれを購入したのだが・・・う~ん、一長一短か。
 などとぶつぶつやっている内にもマシン達は次々と予選ラップタイムを更新してゆく。
 掲示板の順位もみるみる変わってゆく。
 twitterも同時に追いかける。うん、ウェイトハンデは重いけど、新型タイヤのご加護のせいか安定してラップタイムは出ているようだ。
 なんて思ってたら、NOBさんてば番ちゃんのラップを一気に1秒半ほど塗り替えていきなりその時点での2位に食い込んでみせる。
 番ちゃんのタイムだけでも一桁台には居ただけに、このまま降らないでいてくれたら予選Q3は十分狙えそうだ!
 頼むぜ番ちゃん! お願いしますNOBさん! そして何より、持ちこたえて雨!!
 そう、朝からどんより立ちこめていた雲は、暗くなったり明るくなったりを繰り返しながら、次第にその重さを増してきているのだ。
 一応雨対策はしてきてはいるけれど・・・おかげで涼しくて去年のように消耗していないけど・・・出来ればこのままドライで見たい!
 それに初観戦の奴らも連れてきてるんだ、雨に祟られて面白くなかった、なんて思い出は持って帰らせたくない!  

・・・・・

 しかし、天は無情だった。
 ミク号暫定2位に気をよくしつつ移動したシケイン横の観客席、GTアジアシリーズ第7戦決勝の最中に、それはついにやってきた。
 最初はぽつぽつと。しかしすぐにそれは本降りへと変わった。
「ああ、来ちまったか!」
 恨めしく思いながらとりあえずスタンド下に待避する。カメラはバッグに仕舞い込み、折りたたみ傘を引っ張り出しながら、屋根のあるグランドスタンドまで待避。
 観戦条件も悪化したが、FRレイアウトのミク号としては駆動輪に荷重をかけやすいドライコンディションの方がありがたい、と言っていたチームのコメントが気にかかる。
 チャンピオンシップで前を征く#11JIMGAINERとの差は10ポイント。何とかしてここで差を詰めておきたい。
 しかしこっちには滑る路面、滑るマシンに強いNOBさんが乗っている!
 道具で不利ならば、人間がその差を埋めるのみ。お願いします、谷口さん!
そして祈るような気持ちの玲の前を、あの独特のV8サウンドを響かせながらミク号が駆け抜けてゆく。
 復活したガライヤが速い、ぶっちぎりのタイムでトップに躍り出る。ミクは5番手、悪くないじゃないか! しかし他車もタイムを上げてくる。
 谷口選手も渾身のアタックを重ねるが、やはり苦しさがあるのかポジションはじりじりと落ちてゆく。頼む、踏ん張ってくれNOBさん!
そしてQ2終了のチェッカーフラッグが振られたとき。
 ゼッケン「4」は電光掲示板の8位のところで輝いていた。上位10台が進出するQ3に無事進出! NOB△!!
「これで後は番場選手がやらかさなければ大丈夫なんだな?」
「・・・そりゃそうなんだが、やな言い方すんなし」
 おっかしいな、2年前は神様仏様番場様だったんだけどな(^^;;;
 でも、だからこそ! 今は強くなった番ちゃんver.2.0が見たい!
 幸い500クラスのQ2を行う間に雨は弱まりつつあった。こうなりゃ行くしかないでしょ。2年前の感動よ再び! かっ飛べ番ちゃん、S.B.T! S.B.T!!
真っ先にピットを離れるミク号。どきどきしながら見送る玲達。
 マシンの様子を確かめながら、コースの状態を把握しながら、マシン達は足慣らしをしてゆく。本気のアタックは次のラップから。
 さあ、マシン達の轟音が戻ってきた。シケイン立ち上がりからいよいよ本気のフルスロットル、最終コーナーを真っ先に駆け下りてくるのは当然SGChangi号の勇姿に決まって・・・ってあれ??
「なんで2番手なのさ~~~~~!?!?」
 というネタはさておき。
 番場選手タイムはこれがなかなか悪くない。アタック2週目には自己ベストタイムを叩き出し、なおもアタックを敢行する!
 今のところ5番手、このまま行けるか? 良し、何とか・・・ああ、最後の最後でZENT号にやられた!
それでも予選堂々の6位。ウェイトハンデ78kgを背負って、苦手と言われていた雨を突いてのこの順位は上々と言えるだろう。
 これは明日がとっても楽しみじゃなイカ!?
「・・・アレ?」
その後500のQ3を見届けた玲達、再びパドックに戻ることに。
 少しだけ緊張を解いたチームの皆様方や、続々集合する個スポの皆さんとお話をさせてもらう。ある意味このチーム応援してて良かったと一番思える瞬間だったりする。
 こんなにチームとファンの垣根の低いチームが今までにあっただろうか。ちょっと考えられないようなことが今、ピットの片隅で間違いなく起きているのだ。
 ああ、願わくば彼らの挑戦が、この貴重な空気を失うことなく続いてゆきますように。
 さあ、明日はいよいよ決勝だ! 一つでも上の順位を目指して、そして出来ればJIMGAINERの前でフィニッシュできますように!

 先週の鈴鹿戦、熱かった/悔しかったですね。
 何やら逆風という逆風をまともに受け止めたみたいな展開でしたが、それでもあそこまで巻き返したのですから、本当に強いチームになってきたんだなぁと思います。
 で、帰ってきてからニコ動やらここやら見てましたら楽しそうな動画やら、かっこいい写真やらたくさんアップされてるわけですよ。
 何やら羨ましくなった奴がここに一匹。
 写真はへっぽこだ。動画なんてどうやって編集したらいいのかなんか全く分からない。

 だったら文章で勝負してやる!

 はい、無謀です。
 しかもこれでもかってぐらい個人的視点です。でも思い付いちまったんです。
 楽しかった思い出の、少しでも記録になればと思いまして。ちょこちょこっと書かせていただきます。


 さて、鈴鹿戦の当日。
 早朝4時半に起き出して移動を開始する三人組の姿が。これ書いてる奴の車で奈良県から一路鈴鹿サーキットを目指すのだ。
 うち後部座席の一人は、前日に残りの二人(含む書いてる奴)に電話口で
「目の前でミクZ4が見られるぞ~」
「サーキットは味わわなきゃ分からないぞ~」
「NOBさんとか番ちゃんとか右京さん、安藝さんとかBOBさんにも会えるんだぞ~」
 等とささやかれまくって、予選日のみしか観戦不可能であるにもかかわらず参加を決めた実に漢前な奴だったりする。
 で、余裕を見て現地に到着するべく名阪国道を急ぐオイラ号。前後に車が少ないのをいいことに気持ちよく巡航する。
「うおおおお、気分(だけ)はNOB! 抜かれるの嫌い!」
「いいから落ち着けぇぇぇぇぇ!!」
 眠気覚ましのアホなネタはさておき、どれっくらい巡航したかというと、余裕として見込んであった時間が倍に増えてしまったぐらい。ミクGTのCDには魔法がかかっていたようで(棒)。
「・・・やりすぎた?」
「かもな」
 オープンピットどころかオープンゲートにも余裕で間に合ってしまう。まぁうち一人はこれからチケットを入手なので丁度良い。
 んだけど。
「ゲート前、もう思いっきり混んでますけど(汗)」
 正直ここまでとは思っていませんでした。去年来たときはオープンピット直前にバスで到着だったもんで・・・
 でもその行列の中にもうちらほらと見える個スポさん達の姿。
「ペトロナス、じゃないよ、な。うん、間違いない。」
 見える範囲だけでも5人ぐらいはいるかな。しかも。
「すげ、このキャンパー、個スポ特典ステッカー何枚貼ってあるんだよ!」
 ほぼ日本中を網羅している計算に。猛者だ・・・!
 でも観戦の頻度の差こそあれ、こうして仲間がたくさんいるというのを目の当たりに出来るともうテンションは上がりまくるわけで。
 浮き世の憂さはゲート前に置いてゆく! さぁ、二日間楽しむぞ!

 さて、お揃いのカードケースに個スポカードとパドックパスを仲良く放り込み、パドックトンネルを潜る。
 ああ、思い出す去年の開幕戦。初めてサーキットでレースを観戦したのはあの時だった。
 フリー走行の真っ最中に辿り着いて、轟き渡るマシン達のサウンドに感動するあまり、このトンネル走って抜けたんだよな! 等と振り返りつつ、今回はさすがに歩いて抜ける。
 そしてパドックへ上がった瞬間!
 ずらりと居並ぶトランスポーター達! はためくバナー、唸りを上げる発電機、そして忙しそうにしかし沈着に行き来する各チームスタッフの方々!
 公開車検が終わればここにさらにウォームアップのエンジン音、インパクトレンチの響きや、生々しい排気ガスの香りなんかが加わって、もう最高の空間が出来上がるわけでして。
「自粛はしてるけど、でも実はレース中もここに来たかったりもするんだよね~」
 馬鹿です。はい。
 んなヨダレ垂らしそうな奴を尻目に公開車検スタート!
 慌ててゲートに向かう。
 その向こう側に広がる景色と言ったら!
 スカッと広がった視界の向こう、ド~ンとそびえるグランドスタンドには各チーム、ドライバー、そしてRQ達を歓迎する色とりどりの横断幕が早くもそこかしこに広げられている!
右手を見やれば1コーナーへと駆け下りてゆくホームストレートが今や遅しとマシン達の疾駆を待ちわび、空を突き刺す電光掲示板には「PokkaGT SUMMER SPECIAL」の文字が躍り、観客達を出迎える!
 そして目前にて待ち受けるマシンこそ!
 我らがGOODSMILERACING & Studie with TeamUKYOがエントリーするゼッケン4番、初音ミクグッドスマイルBMWZ4!
 このために買い込んだカメラを取り出し、同じようにカメラや携帯を向ける仲間達をぬってまずはファインダー越しにご挨拶。
 途絶えてしまったと思っていた挑戦は復活した。それを象徴するカラーリングに身を包んだ端正なボディライン。
 そこに寄り添うのはちょっとクールなレーシングミク2011ver。正面に差し出された手は既に一度、勝利の栄冠をつかんでいる。
 しかし今、本当に欲しいのは。シリーズタイトルの王座ただ一つ!
谷口さん、彼女をよろしくお願いします。最後の頂点まで連れて行ってやって下さい。
 番ちゃん、動画でしか見てないけれど二年前の鈴鹿は鮮烈でした。強い番ちゃんのSBTをもう一度見せてくれ!
 ここまで思い入れて応援できるマシンがあるのだから、オイラは幸せ者と言うべきだろう。でも。
「あれ、どこ行くん?」
「いや、これだけかっこいいマシン達がずらりと勢揃いしてるのに無視するなんて出来るか! 親しく一台一台にご挨拶してお近付きになって置くんだよ!」
 モニターの前ですっこけた方、ごめんなさい。
 でも個人的に、ミク号に代表される海外生まれのFIA-GTマシン達のたたずまいも大好きだし、奇形と言われようが速さのために要求されるありとあらゆる事を必死に突き詰めたJAF-GT勢の試行錯誤の塊みたいなスタイルも大好きなのだ。
 500はちょっとホンダに肩入れしてるかな? いや、最初は市販してない車なんてな~なんて思ってたけど、実車のサウンド聞いて一目惚れ、もとい一耳惚れしました。
 サウンドは正義だ!! なお異論は歓迎する!
 ・・・脱線はともかく。
 公開車検は終了、さあいよいよフリー走行、いよいよこいつらがサーキット狭しと走り回るぞ!

という訳で連れ達と合流。こっそり用意してあった仕込みのネタを番場選手に手渡したり(谷口選手の分は、見てはもらえたけど渡せなかったんで大橋監督経由でチームテント内へ)、カードホルダーに皆さんのサインを頂戴したりと、このチームならではの楽しい時間を過ごしながらいよいよフリー走行の時間が迫ってくる。
 ツレとも相談の上でまずは2コーナー内側の激感エリアへ。
 ここなら視界も左右にかなり広がっている。(安全のためだと分かってはいるけど)無粋なフェンスも無い。観戦ポイントとしては一番お気に入りだったりする。
 ・・・座るところ無いけどな! 去年はここで日干しになりかけました。
 まぁそれはさておき、レンズを望遠側に付け替えて、流し撮りに挑戦!
 だけど。
「そう簡単にうまくはいかないよな~(苦笑)」
 前後が欠けるのは当たり前、やっと捕まえたと思ったらブレてたり、そうでなければ手前に白い看板状のものが入り込んでいたりで見られる写真は10枚に1枚程度。
ついでに言うならミク号が来たときには頭に血が上るせいか、失敗率が高まる。あう。
 しょんぼりしながら隣を見るというと、コンパクトデジカメを構えるツレの姿。
「シャッター遅れへんの?」
 実は今のカメラ(CanonEOSKissX4)買い込んだのはシャッターボタン押してから丸1秒シャッターが降りるのに時間がかかるコンデジにぶち切れたからでして・・・
 おかげでしばらく何も出来ませんでした(爆)。
 しかし。
「連射で撮ってるんでな。」
 聞いてみると連射レートがこっちのカメラ上回ってやんの。お見それしました<(__)>
 でも自分が使えるカメラはこれだけ。なら使いこなすしかないじゃないか!
 試行錯誤しながら練習を重ねる。
 立ち方やら息の使い方まで考えながらマシン達を追いかける。うん、歩留まりが良くなってきたぞ。しかし。
「なんでZENTポルシェばかり綺麗に撮れるんだよw!」
 という絶叫が響いたとか響いてないとか。
 それはさておき。
「そういえばミク号があんまり来ないな・・・?」
 そう、他のマシンは次々とラップを重ねているのにミク号は頻繁にピットに引っ込んでしまうのだ。
 ツイートを追いかけてみる。どうやらスプリングまで変えてセッティングを弄っている模様。
「・・・持ち込みセッティング、外した?」
「あるいは完全に雨だと踏んでそっちに会わせ込んでたか、だな。」
 勝手なことを言いつつ、しかし出ているタイムそのものは現段階では悪くないようだ。頼む、このまま上位に食らいついてくれ! 何しろ78kgも載ってるんだ!
 二年前には1kgのウェイトで大騒ぎしたのが、今やその重さを心配しなければならないところまで来ているのだから凄いところまで来たというか、贅沢になったというか。
 でもここまで来たらとことんまで夢をみたいじゃないか!
 祈るような気分のまま、フリー走行は終わりに近付く。やはりミク号のラップ数は比較的少ないまま。
 若干不安も覚えつつ、しかしのんびりしてはいられない!
 これからお待ちかねのピットウォークなのだ!
 だけど、このピットウォークには若干の不満が無いこともない。
 マシンが見にくいのだ。
 いや、ドライバーやレースクイーンの皆さんが主役を張ってピット正面でサインや握手をしてたり、ポーズを決めたりしているのはいいのだ。
 むしろそうでないと困る。
 だがせっかくマシンを間近に見られる機会に、ピットの奥にあるのは仕方ないとして、なんでカバーやら機材やらで隠してしまうかなぁ、と。
 修理しなければならないところがあるとかならまだしも、いや、セッティングのためには貴重な時間なのかも知れないけど。
 ドライバー達には、そしてレースクイーン達にも、かっこいいマシンの前でびしっと決めて欲しいなぁ、と思うのはオイラだけだろうか??
 まぁもっとも、始まってしまえばたくさんのレースファンにもみくちゃにされながら、ミク号を筆頭にお目当てのチームを巡って上機嫌のオイラがいたけどな!
 さて、午後からはいよいよ予選だ!