「平凡なことを平凡に続けて」
【自分が好きですか】
-南蔵院住職 林 覚乗-より
以前、4年生の大学を出た女子学生が会社に入り、「私はお茶汲みをするために大学を出て、会社に入ったのではありません」と言ったというのを聞きました。
お茶汲みでさえできない人間に、上司がもっと大切な仕事を頼むはずがないのでは、と私は思うのですが・・・・。
「私はこの会社で一番美味しいお茶をいれてあげよう、入れる人間になるのだ」そういう思いを持った人が、次のステップを踏むことができる人ではないでしょうか。
「これだけの能力があるのだから、お茶汲みなんて・・・」と言われても、本当に能力あるのかどうか、見た目には分からないし、やってみなければわからないことです。その前に、与えられた役割、お茶汲みという仕事で、相手に喜んでもらうことが大切なのではないでしょうか。
ある企業が、7階建てのビルを持っていました。各階に社員用のトイレがあるのですが、それがいつも落書きで汚されてしまいます。社長自ら注意をするのですが、一向に効き目がありません。
「お前たちは、何という馬鹿者か!」と怒りたいのですが、「その馬鹿を選んだのは、あなたですよ」と言われたらおしまいです。ストレスは溜まる一方。とうとう社長も匙を投げてしまいました。
ところが、それでも諦めない人がいたのです。
トイ掃除のおばさんです。おばさんは西洋紙を四つ切りにした小さな紙に、お願い状を書き、すべてのトイレの入り口に貼りました。するとどうでしょう。あくる日から、一切の落書きが消え去りました。
驚いた社長が見に行くと、そこにはこう書いてありました。
「ここは私の大切な職場です。この職場を落書きで汚さないで下さい」
おばさんが、「トイレ掃除はたいした仕事ではない」と思ったら、たいした仕事ではありません。反対に、「トイレ掃除は、私の大切な職場なのだ」と思えば、すばらしい重要な仕事となるのです。そして、大切にしなければいけないんです。
所長は初めて気付かされました。
「肩書きじゃないんだ。与えられた役割、仕事をどういう姿勢でやっているか、そういう心がけが大切なんだ。思いを変えることによって、職場を変えることができるのだ」と。
3K(危険、きたない、きつい)という言葉があります。本人が3Kと思ったら、そこは3Kの職場となります。
しかし、「私にとっては、ここが大事な職場なんだ」と思ったなら、どんな職場だって素晴らしい仕事場になるのです。
要は、自分の心がけを変えることができる強さを、持っているかどうかの問題なのです。