お気に入りのアンティークレースの中でひとつとっておきをご紹介するなら、1730年頃に作られたヴァレンシエンヌレースです。

私が持っているレースの中でも最も細い糸で繊細に織られたボビンレースです。その美しさに加え、300年近くもの年月を経て私の元にやってきたのだと思うと愛おしさひとしお。
こちらのレースを手にした時はアンティークレースの魅力に魅せられ始めた頃で、貴重なレースと言えばポワンドガーズやアランソンレースくらいしか知りませんでした。でもこのヴァレンシエンヌレースを一目見て「ふわりと繊細で上質な素材、明らかに手仕事、相当年代の古いもの、今まで見てきたものとは別ものだ」と瞬間に気づきました。
時を同じくしてディーラーさんやコレクターさんたちとの繋がりも少しずつできてきて、アンティークレースの鑑定士である友人にこのレースを見せたところ「羨ましいほど素晴らしいヴァレンシエンヌね!あなたはいい目とセンスを持っているから、これからも美しいレースをできるだけたくさん見て集めなさい。」と言ってくれて、とても嬉しくなりました。
優しい友人がおだててくれた訳ですけれど、それをきっかけとして、視界が開けていくかのようにアンティークレースの世界がどんどん広がりました。
美しいデザイン、細やかという言葉では片付けきれない程繊細で膨大な手仕事、感動が向こう側から飛び込んでくるようでした。素敵なレースを見ているだけで心躍り、種類、年代を識別してレースを知り、愛好家の方々と語り合うことが楽しくなりました。
レースを通して、たくさんの方々と素敵なご縁ができたのも私の宝物です。反対に、こんなにアンティークレースが大好きになったのは人との出会いのおかげです。
たくさんの美しい貴重なレースを見た今も、このヴァレンシエンヌはやっぱり素晴らしく思え、時々出しては眺めます。レースをよく知らない蚤の市のディーラーさんは『ミュージアムピエスだよ』と適当なことを言うことがありますが、これは本当に博物館にあってもおかしくないレース。アンティークレースの魅力のひとつはそういう歴史的にも文化的にも貴重な品を手にして、実際に触れられることもあるかと思います。
どんな風にレースが人の手を渡ってきたんだろう…なんて、背景に想いを馳せるのも楽しいです。当時レースはとても貴重なものでしたから、貴族のお嬢さんが煌びやかな舞踏会に着て行ったドレスについていたかも…それが突飛な想像ではなくあり得るのが面白いところ。
また、レースのデザインや産地は歴史背景や文化、産業に密接なつながりがあるので勉強するのも面白く、19世紀の後半のファションプレートやモード新聞からレースがどのように使われているか覗くのも興味深いです。
こんな新しい世界を見せてくれたヴァレンシエンヌレースは派手ではないけれど、私のとっておきです。
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この文章は4年前に友達のサイトに寄稿した(なんて大げさなものではありませんが)コラムの一部です。
あまりに文章が稚拙なので書き直そうかと思いましたが、どう直していいのかさっぱりわからず、ほぼそのまま。しかも友達が改稿してくれる前、、、。
まぁ、アンティークレースへの惚れ込みようがわかるので、載せてみました。今も文章上手に書けないし!笑
写真ではお伝えしきれませんが(とっても地味、、、)このレース本当に繊細で素敵なんです。どれだけ細い糸で織ってあるのだという程。
レースメーカーでは、細い糸が傷まないよう職人たちは薄暗い地下室でレースの製作を強いられ、そのせいで早くに視力を失ったと伝えられています。
美しいレースは無名の職人たちの魂に火を灯すような技術に支えられてきたのですね。だからこそ、レースは文化の域まで達したのかもしれません。
他にもとっておきレース、少しずつ増やしてきましたが、そんなレースもショップを通じてレースを愛してやまないどなたかにバトンをお譲りしていければと思っています。
実店舗は年内オープンを目標にしています。アンティークレース を手にした時の感動を、まだ出会っていないレース好きさんに伝えていくのが、楽しみでなりません。