タクシーの中で、職場の責任者に電話をした。

ここ最近の具合が悪いのを知っていたから、とても優しい対応だった。

でもかなりの憔悴具合にかなりあっちもびっくりしていた。

もちろんHIVだなんて言ってはいない。

何度も何度もかけても繋がらない母親にもやっと繋がった。

親には言っていないという陽性者はいっぱいいるようだが、母親に言わない、と言う選択肢は俺にはなかった。

本当に仲が良く、何でも相談してきた。

一つ引っかかったのはこんな悲しい現実を伝えていいのか、ということだった。

母に話して出てくる言葉は、ただただ


ごめんね、本当にごめんね
こんな息子で


だった。


昨日と何も変わってないのに、自分の身体の中で起こっている真実だけを知らされた気分。


こういうときは涙すらでない、って本当なんだ。


たまに笑ってもしまう。


一瞬、このまま死にたいな、とも思った。


でも母の電話からの言葉に何とか持ち堪えた。

親ってすごい。

いや、うちの親がすごいんだ。

悲しい中でも、この人が母親でよかった、って心から思った。

地方に住む母、翌日来てくれることになった。


精密検査の結果が出る日。