
ニューヨークの街にはあちこちにパブリックアートがあり、
永続的に置かれているものもあるけど、期間限定で公開、
という作品も多く、街の風景の模様替え、といった感じです:-)
少し前だけど、セントラルパーク前のスペースに
コンクリートの瓦礫のようなこものが出現。
何かと思ったら、
童話「幸福の王子」をテーマにしたアート作品でした。
「幸福の王子」は、ご存じオスカー・ワイルドの作品。
ある街の中心に立つ王子像。
金箔で覆われ、目は青いサファイヤ、
腰に差した剣には真っ赤なルビーの飾りが輝く美しいこの銅像に
ある日渡り鳥のツバメがやってきて羽を休めます。
王子の足下で眠ろうとすると、上から大粒のしずくが。
それは、そこから見える街の不幸な人々に心を痛める王子の涙でした。
王子はツバメに
自分の宝石や金箔を病気の子をかかえた母親や
お腹をすかせた貧しい人々に持って行ってほしい、と頼みます。
南を目指していたツバメは南へ飛び立つことを諦め、王子の手伝いをします。
やがて冬が来てツバメは寒さで衰弱し力尽きます。
ボロボロの姿となった王子像も街の人々にここに相応しくない、と取り壊されてしまいます。
というストーリーで、
最後は銅製の王子像は溶かされて鉛の心臓だけが残り、
神が天使にその街で最も尊いものを2つ持って来るように、と言い付け、
天使は王子の心臓とツバメの死骸を天国へ運び、
ふたりは神の元で幸福に暮らした、
というエピローグなのですが、
取りあえずこのアート作品では王子像は銅製ではなく石膏で、
宝石や金を分け与えた後、取り壊された状態が表現されているようです。

瓦礫の中に王冠が・・・
アーティストは英国生まれの若手コンセプチュアル・アーティストの
Ryan Gander/ライアン・ガンダー。
物語や言語をビジュアルアートとして提供する作品を多く作っています。
オスカー・ワイルドの悲しく美しい童話のラストシーンが実際に街の中に出現する、
というこのアート作品は、
その横を歩く人々(この瓦礫がそんなアート作品だとは知らない人々)も
壊された王子像を感慨もなく眺める街の人々、
という登場人物として取り込み、
これが「幸福の王子」のラストシーンを再現したアートなのだ、と知った人は、
瓦礫の中の心臓や鳥の死骸に心を動かされ、
本当に美しいものとは何か、ということを考えさせられる、という仕掛けです。

王子のハート

倒れたツバメの姿も描かれている
