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Googleストリートビュー,面白いけど目的は何?(COLUMN)
 すでに先月のことになるが,MIAU(インターネット先進ユーザーの会)が2008年8月27日,「Googleストリートビュー“問題”を考える」という公開シンポジウムを開催した。
 Googleストリートビューについては,すでにご存知の方も多いだろう。Googleマップ上に青色で表示された道路の画像を,地上2メートルほどの視点から上下左右の各方向で表示できるというサービスだ。米国では2007年5月,日本国内では2008年8月5日から提供されており,9月現在,国内主要12都市の詳細な画像が公開されている。
 筆者も自宅周辺や昔住んだことのある町を,Googleストリートビューで表示してみた。率直な感想は「すごい」と「こんなことやって大丈夫なの」というものだ。前者については,お使いになった方にはご理解いただけるだろう(まだの方は,ぜひ一度試していただきたい)。Googleマップの航空写真も相当驚いたが,Googleストリートビューについては「よくまあここまで」と半ばあきれつつ感心させられた。
 後者の「こんなことやって大丈夫なの」という感想は,記者という職業柄,肖像権やプライバシー権を意識する機会が多いせいもあるだろう。
 肖像権は,法律に明記された権利ではない。それでも,パネルディスカッションで壇氏が引用した「京都府学連事件」では,最高裁が「個人の私生活上の自由の一つとして,何人も,その承諾なしに,みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有するものというべきである」という判決を下している。報道側の立場から言えば,記事の構成上どうしても必要な写真でない限り,写りこんだ人たちにいちいち掲載許可を取ったり,法的リスクを犯そうとは思わない。結果として,Googleストリートビューが公開している「街角の風景」というありふれた写真は,雑誌や商用のWebサイトではあまり見かけないものとなっている。
 もちろん,京都府学連事件の判決だけで,Googleストリートビューを直ちに「法的に問題アリ」と結論付けることはできない。京都府学連事件は,デモ行進に際して警察官が犯罪捜査のために行った写真撮影の適法性を扱ったものであり,すべての事案にこの判決の解釈が適用されるわけではないからだ。判決文では,肖像権という言葉も使われていない。肖像権やプライバシー権についてはケースバイケースで様々な判例や解釈があり,「偉い先生たちの意見もまとまっていない」(壇氏)のが現状なのだ。
 当のGoogle自身はPrivacy CenterのFAQコーナーで,(Googleストリートビューには街角の人が写っているけど,法的に問題ないの?)」という設問に,以下のように答えている。
「ストリートビューの画像は公共の場で撮影したものであり,皆さんが街を歩いていて見かけるものと何ら変わりありません。しかしながら,私たちは画像の公開を不快とされる方々の意向を尊重して,自動的に顔にぼかし入れる最新技術を採用しました。また,ヘルプ画面に連絡窓口をご用意していますので,不快な画像があればお知らせください。直ちに削除させていただきます」となる。
 このFAQを読んで,改めてストリートビューに写った街角の人物をアップにしてみた。確かに顔にはぼかしが入れられて,個人を簡単には判別できないようになっている。それでも,人物の服装や背格好ははっきり分かるし,一般住宅地の民家の様子や停まっている自動車の車種まで特定できる。法的にはセーフのような気もするが,上記したように肖像権やプライバシー権についての解釈は固まっていない。その上,国ごとに法制度も異なる。“Is that legal?”という質問に対して,Googleが“Yes, that is legal.”と即答できなかったのも分かる気がする。
 MIAUのパネルディスカッションに参加した壇氏は,Winny事件の弁護団事務局長としても知られている。ただし,シンポジウム当日は自らの意見を積極的に発言するというより,法律家として,個人情報保護法,肖像権,パブリシティ権,プライバシー権といった概念やその変遷を説明する“傍観者的な立場”での発言が目立った。
 議論の主役になったのは,八田氏と河村氏である。八田氏は,「(Googleストリートビューに)具体的なデメリットを思いつかない,悪いことがないなら試したらいい」とした上で,「便利な技術によって社会のあり方が変わるのは必然的なこと。問題は,社会が変わるコストと得られるメリットとの兼ね合いだ」という考えを示した。
 これに対して河村氏は,「興味本位で面白がる以外に,Googleストリートビューにメリットを感じない」と反論。「イヤだなと思うのは,(Googleという)営利企業が,住宅地まで入り込んで勝手に撮影した画像を圧倒的な網羅性と尺度で提供していること。個人が断片的な情報を公開するのとはわけが違う。どこがいけないということではなく,イヤと思う気持ちを大切にしてほしい」として,Googleストリートビューは「(事前許諾を得た建物・人物だけを表示する)オプトイン方式で提供するべきだ」と主張した。
 筆者自身の考えは,どちらかと言えば八田氏に近いのだが,河村氏の意見に同調する部分もある。シンポジウムでは八田氏から「カメラが登場したときも,撮影されると魂を抜かれると嫌がる人が多かった。それでもカメラは便利だったから普及した」という発言があった。だが,登場直後のカメラなら,嫌がる人は撮影を拒否できた。それに対して,Googleストリートビューは本人の意思に関係なく,公道から見える住居の様子を公開してしまう。カメラほどのメリットを見つけられず,ただ面白がっているだけの筆者が,嫌がっている人に向かって「Googleストリートビューは便利な技術ですから,感情論で拒否するのは止めなさい」と説教する気にはならない。かといって,河村氏の言うようなオプトイン方式になったら,広告目的のレストランや商店の画像だけになって,Googleストリートビューの魅力はがた落ちになってしまうだろう。
 最後に疑問を一つ。Googleは,いったい何を目的にストリートビューを提供しているのだろうか。自動車に360度撮影カメラを取り付けて,全国主要都市の道路を撮影してまわるには,かなりのコストと手間が必要だったはずだ。
 さらに,河村氏をはじめとする多くの人々に,「膨大な情報を集積することで,Googleは『(人々の行動を監視して世界を支配する)ビッグブラザー』化していくのでは」という不審の念を与えてしまった。Googleストリートビューが問題視されているのは,日本だけではない。MIAUや海外ニュースサイトによると,米国ではプライバシー侵害を理由とする提訴が起きているし,カナダでは同じ理由でサービス自体を停止している。フランスでは,ツール・ド・フランスのコースにサービスを限定しているという。
 モバイル端末を使った歩行者用ナビゲーション・システム,不動産物件の紹介サイトとの連携など,ストリートビューの応用例はいくつか考えられる。それでも,投入したコスト,それに悪評に見合うだけのメリットを得られる手ごたえを,Google自身どれだけ感じているのだろうか。まさか,単純に「面白そうだから」という理由で,これだけのサービスを提供しているわけではないだろう。それが気になって仕方がない。



20代女性の4割が「車に興味ない」 民間調査
 インターネット調査などを手掛けるネットエイジア(東京・港)がまとめた自動車に関する調査では、20代女性の約4割が「自動車に興味を持ったことがない」ことが分かった。20代男性も4分の1超が「興味がない」と回答しており、他の年代に比べ20代の自動車離れが鮮明になっている。
 20―59歳の男女に「いつごろまでに自動車に興味を持ったか」を聞いた。これに対して「興味を持ったことがない」と答えた割合は、年代別では男女ともに20代が最も高く女性で39.1%、男性で26.0%に達した。逆に同割合が1番低かった年代は、男性が50代で11.9%、女性は30代で28.1%だった。
 2007年の国内新車販売台数(軽自動車含む)はピークだった1990年と比べ、約3割少ない535万台。少子高齢化に加え、若者の車離れが市場縮小の理由とされているが、調査はこうした市場の構造的な問題を裏付ける結果になった。



改正建基法がGDPを3兆円押し下げ、日本総研の試算
 民間シンクタンクの日本総合研究所は9月5日、改正建築基準法の施行後に住宅の着工戸数が減り、2007年7月から2008年6月までの1年間で実質国内総生産(GDP)を2兆8700億円押し下げたとする試算をまとめた。
 建設確認の審査を厳しくした改正建築基準法が施行したのは2007年6月。その結果、新設の着工戸数は2007年7月から12カ月連続で落ち込んだ。例えば、2008年上半期の着工戸数は、前年同期比10.1%減の54万3587戸だった。日本総研は、着工戸数と延べ床面積、予定工事費などからGDPに与えた影響を積み上げた。



ゴルフ用品市場、08年は4年ぶり縮小 民間調査
 調査会社の矢野経済研究所(東京・中野)はゴルフ用品の市場動向調査をまとめた。2008年の国内出荷は、前年比0.2%減の2575億6000万円と4年ぶりに前年を下回る見通し。ガソリン高や消費マインドの急激な冷え込みが、これまで好調だったゴルフ用品の業界を直撃するとみている。同社は「市場環境は厳しく、数字が大きく下振れする可能性もはらんでいる」としている。
 07年の実績は4.4%増の2582億円で、3年連続で増加した。女子プロゴルファーの活躍を受けて女性の間でゴルフ人気が高まり、ゴルフウエアなどのレディース用品が10.7%増と好調だった。このほか、08年からのドライバーの新規制を控え、買い替え需要が旺盛だったことも寄与した。



ベトナムへの海外直接投資額、08年1―8月は前年比4倍に急増
 【ハノイ=岩本陽一】ベトナムへの海外からの直接投資額が急増している。2008年1―8月の総額(認可ベース)は前年同期の約4倍に当たる470億ドルに上る。中国以外の製造拠点「チャイナ・プラス・ワン」として日本企業などの進出計画が相次いでいる。
 ベトナム・ニュース紙が計画投資省のまとめとして報じた。投資認可を受けた38カ国・地域中、総額が最も大きかったのは台湾の86億ドル。日本は72億ドルで2位だった。事業件数では台湾が112件、日本が78件。
 ベトナムの経常収支は貿易赤字の拡大に伴って悪化。国際収支全体では海外直接投資を核とする資本収支のプラス分で経常赤字を補てんする構図が鮮明になっている。



米住宅公社、資産を圧縮 優先株20億ドルを政府が近く取得
 【ワシントン=大隅隆】米政府は7日、経営難に陥った米連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)を公的管理下に置くことを決めた。2社合計で2000億ドル(21兆6000億円)の優先株購入枠を設定、経営状況に応じ公的資金を段階的に注入する。両社の経営陣は更迭、株主にも一定の責任を求める。経営見直しの一環として、両社は2010年以降、住宅ローンなどの保有資産を段階的に縮小、保有残高を直近の3分の1に減らす。
 今回の支援策は金融システム危機を防ぎ、米経済の悪化に歯止めをかける狙いだ。信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題に端を発した米国の金融システム不安は、公的資金を活用して正常化をめざす新たな段階に入った。


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