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木曽地域を代表する観光スポット、長野県大桑村の阿寺渓谷。透明度の高いエメラルドグリーンの清流が人気を呼び、夏は大勢の観光客でにぎわう。しかし近年は阿寺川沿いの林道で交通渋滞が激しく、観光客が捨てるゴミが地元の悩みになっている。村は今夏初めて、渓谷内へのマイカー進入を全面規制する。【小川直樹】

 昨年夏、村職員が撮影した写真には、川が流れるそばで、観光客が捨てたとみられるゴミが写っていた。バーベキュー道具やレジ袋など。川沿いはバーベキュー禁止だが、「ひどい時には、余った生肉が捨てられていたこともある。熊などの野生動物があさりに来て、渓谷内に居着くことが心配される」と中田陽一・村産業振興課長は困惑する。

 阿寺川沿いに延びる林道の渋滞も悩みだ。道幅は狭いところで約3メートル。車がすれ違うための待機所が所々にあるが、そこに車を止めて川を撮影する人もいるため、慢性的に渋滞が起きるという。

 かつては地元以外にあまり知られなかった阿寺渓谷だが、旅行雑誌やテレビなどで取り上げられ、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の普及もあってここ4、5年で知名度が上がった。今では7、8月だけで、自然観察、渓流釣り、水遊びなどに約5万人が訪れる。村が昨年、アンケートしたところ、観光客の内訳は、県内からが43%▽東海地方25%▽関東17%▽近畿13%だった。観光バスの乗り入れも増えた。

 ゴミ問題が深刻化し、モラルに頼るだけでは自然環境の保全は難しくなった。村はゴミ処理やトイレ清掃に年間約350万円を出費しており、村外の人のために税金を使うことに村民の抵抗があるという。交通渋滞が激しくなれば森林保全業務に当たる人の行き来に支障も出る。村のシンボル的な観光名所を守るため、村は今年1月、マイカー規制に踏み切ることを決めた。

 規制期間は7月21日から9月2日まで。マイカーのほか、バイクや観光バスも対象だ。観光客は渓谷入り口そばのレジャー施設・フォレスパ木曽の前でマイカーを降り、シャトルバスに乗り換え、渓谷に入る。シャトルバスは地元のタクシー会社などが運行し、島木赤彦歌碑駐車場までの約4.5キロの区間を走る。料金は大人往復1000円。キャンプ場の予約客や森林管理署関係者などは例外にする。

 また、地元関係者でつくる阿寺渓谷管理運営協議会は、渓谷内の清掃や交通整理員配置などの費用に充てるため、観光客に森林環境整備推進協力金を呼びかける。1人100円を目安にバス乗り場などに箱を置く。

 村はチラシやホームページなどで県内外に規制実施の周知を図っている。今回の規制に強制力はなく、あくまで観光客へ「協力のお願い」という趣旨になる。ゴミ減量などにどれだけ効果があるかは未知数だ。規制を知らずに多くの車が乗り入れることも予想され、スムーズにシャトルバスへの乗り換えができるのか、懸念される。

 中田課長は「手探りのスタートになるが、マナーを守ってもらい、渓谷の美しさをこのまま後世に残せるようにしたい」と協力を呼びかけている。