虫の声が響くようになった。すると毎年同じことを思う。
『もうすぐ提灯祭りだなー』
すると秋の夜空を焦がす故郷の祭りが恋しくて必ず故郷の方角の夜空を見上げる。虫が鳴く日は星が見える。
『俺の角膜に届いている光はいったい何万年前に放たれたものなのだろう』
すると必ず襲われる感傷の連鎖。
『俺の一生なんて一瞬だな』
『あと何回、故郷の祭りを見られるのかな』
そしてまた夜空の星を見上げる。
決まって思い出す高3、18歳の夜。悪友と深夜の校舎に忍び込んで文化祭の準備をした時に渡り廊下の屋上から眺めた夜空にはオリオン座。警報がなれば警察が駆けつけるであろうスリリングな夜。ジュンスカの『素敵な夜空』を口ずさみながらながら覚えたてのタバコをふかした。
あれから毎年ひとつずつ歳を重ね44歳の夜にまた思う。
『あれから26年。26年後は...70歳⁈』
毎年1歳ずつ歳をとるだけなのだが、この計算方法だと2歳ずつ歳をとっていく。
つまり来年は
『あれから27年。45歳の27年後は72歳』
怖くなって夜空を見上げるのをやめる。
隣で眠るのは去年より一つ成長した娘。7歳になった。
『あと何日、こうして一緒に寝てくれるのだろう。』
また虫の声が響く。鳴き声は去年と全く変わっていない。しかし鳴き声を発する個体は間違いなく去年の個体の次世代のものだろう。
祭りの囃子だってあのレジェンドの大先輩でも自分でもなく今は話したこともない若者が奏でている。
『自分が若連の会長を務めたのも10年も昔のことになってしまった。』
なんて感傷に浸るとまた想いは飛躍する。
『命は受け継がれていくもの。俺の命が絶え、やがて娘の命にも終わりは来る。その瞬間まで健やかに幸せに過ごしてほしい。』
生命を謳歌しているように見える今日の虫たちも昨日と明日の間を懸命に生き抜き子孫繁栄のために鳴いている。
『我が子には、そしてその子孫には絶対に幸せになって欲しい。そのためにもこの日本がテロや戦火に怯えるような社会には絶対にならないで欲しい。』
この同じ星空のもとに生きながらも戦火に傷つき命を落とすこども。大きな富や名声を手に入れた人にも平等に訪れる死。
天寿を全うし、ひっそりとでも家族に看取られ最期を迎えられれば最高に幸せな人生だったと思えるだろう。
今と変わらぬ夜空を見上げた18の夜には立身出世した自分の姿しか想像できなかった。
18の俺は今の俺なんか見下すに違いない。
今の俺だって今の自分に満足などしてはいないが、不幸だとも思っていない。
『夢見ることは忘れてしまったのか?』
そうかもしれない。でも今こそ強く願うこと
それが
『LOVE & PEACE』
コオロギくん今宵もありがとう
