長引くデフレ経済の象徴となっていた土地や株価などの価格が低下する「資産デフレ」に解消の兆しがみえてきた。地価や路線価がリーマン・ショック前以来の回復傾向を示しているほか、株価も再び上昇カーブを描いている。資産価格の上昇が個人消費や民間融資に好影響を与えれば、消費税率引き上げ後の景気回復を下支えしそうだ。
「(オフィス部分は)ほぼ満室の状態で完成を迎えられた」。6月11日に開業した超高層複合ビル「虎ノ門ヒルズ」を運営・管理する森ビルの辻慎吾社長は手応えを示す。不動産仲介大手の三鬼商事によると、東京都心のオフィスビルの5月末の空室率は6.52%と11カ月連続で低下。52階建ての同ビルも6~35階のオフィス部分は、完成前から広告会社などの入居が早々と決まった。
背景には都市部を中心とした地価の先高感がある。日本不動産研究所の調査では、東京・大阪・名古屋の3都市圏の地価は今年3月末、ともに昨年9月調査から上昇。国税庁が今月1日発表した相続税などの算定基準となる1月1日現在の路線価も2008年調査以来、6年ぶりに3都市が“そろい踏み”を果たした。
足踏みが続いた株価も5月下旬以降は再上昇。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による国内株の投資比率拡大を盛り込んだ新成長戦略など、「官民一体で企業価値を高める動きが評価」(マネックス証券の広木隆チーフ・ストラテジスト)されており、7日の日経平均株価は1万5379円44銭と、昨年4月の日銀の金融緩和前と比べ約3000円も上昇した。
「資産の担保価値が上がれば金融機関の貸し出し余地が増え、市場に資金が循環する」。SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは期待感を示す。資金循環の目詰まりは、日本経済を悩ませ続けた長期デフレの一因。その解消は「本格的なデフレ脱却への一里塚」(宮前氏)で、資産価値が高まれば、資産家を中心に個人消費の活況にもつながる。
ただ、資産価格の上昇については、今後は鈍化が見込まれる。少子高齢化や人口減少などを背景に、都市部と地方都市で地価が二極化の傾向にあるほか、消費税率引き上げ後の景気動向が見通せない中、株価も当面、GPIF以外の大きな買い材料に欠ける。
また、建設業やサービス業などに広がる人手不足などで、賃金上昇などの生産コスト増が企業業績を圧迫する構造要因も表面化している。消費増税などによる物価高が賃金上昇を上回れば、資産価格の上昇は家賃などの家計負担を増やし、かえって景気回復の足かせとなる可能性もある。(佐久間修志)
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