タコのゲノムは人間とほぼ同じ大きさ。並外れた知能を解き明かすヒントを発見(日米独研究)




タコ1


 タコの賢さはこれまで何度もお伝えした通りだ。タコの寿命が長かったら海の生態系は完全に変わっていたかもしれないし、人類だっておちおち「タコ焼きうめぇ!」とか言っている場合じゃなかったかもしれない。

 吸盤を備えた8本の腕、カメラのような目、驚異の擬態テクニック、不気味なほどの知能。タコは地球上のどの生物とも似ていない。

 ネイチャー誌に掲載された論文によれば、こうした独自の特徴にはさらにゲノム(その生物を形作るうえで必須の遺伝情報あるいは染色体のセット)の大きさを加えることができるそうだ。ここには単なる軟体動物がこれほどまでに奇異な存在に進化することができた鍵が隠されている。


Octopus genome: Suckers and smarts


「エイリアンのような何か者かから手に入れた初めてのゲノムです」と冗談めかして語るのは、米シカゴ大学の神経生物学者であり、研究にも携わったクリフトン・ラグスデール博士だ。

 研究はシカゴ大学、カリフォルニア大学、独ルプレヒト・カール大学、沖縄科学技術大学院大学が共同で実施したものである。本研究では、タコの12種類の組織における遺伝子発現なども調査された。

巨大な遺伝子を持つタコ



 驚くべきことに、タコのゲノムは人間とほぼ同じ大きさであり、しかもタンパク質遺伝子は33000個とヒトの25000個よりも多いのだ。

 ラグスデール博士によれば、これは一部の遺伝子族が拡張したことが原因であるそうだ。最も顕著な遺伝子グループの一つが、プロトカドヘリン遺伝子という神経の発達とそれらの短距離における相互作用を調整する遺伝子だ。


タコ2


 タコにはこの遺伝子が168個あり、多くの哺乳類の2倍の数を有していた。これらの遺伝子は、大きく、奇妙な生体構造を持つ脳と連携する。タコの5億個のニューロン(マウスの6倍)のうち、3分の2が頭から腕まで伸びており、しかもここには脊椎などの長距離繊維が介在しない。腕の計算能力は独立しており、切断されても認識することが可能であるため、神経生物学者や柔軟なロボットを開発する工学者に格好の研究材料を提供してくれる。

 発達に関与する遺伝子族、ジンクフィンガー転写因子もまたタコでは高度に拡張されている。およそ1800個存在し、2000個の嗅覚受容体を有する象に次いで、動物では2番目に大きな遺伝子族である。


タコ3


 さらに解析からは、タコ固有の数百の他の遺伝子が、特定の組織において高度に発現していることも判明した。例えば、吸盤では、神経伝達物質アセチルコリンの受容体情報を含む遺伝子に似たものが発現していた。この遺伝子は、タコの吸盤に備わった味覚と関連しているようだ。

 タコの皮膚で発現が特定されたのは、リフレクチンというタンパク質を作り出す6つの遺伝子だ。これは光の反射を変えるもので、質感、模様、明るさの変化と共に、タコの擬態に一役買っている。


タコ4


 また、タコの知能の根底にあるものも垣間見ることができた。タコのゲノムには、組織が急速にタンパク質を改変し、その機能を変化させるシステムが含まれていたのだ。これは神経ネットワーク特性がタコの持つ並外れた学習能力や記憶能力に順応する仕組みを説明する、と電気生理学者が予測していたものだ。

 タコの軟体生物における位置づけは極めて豪華な進化ショーを示している。ハマグリのような泥に潜んで、餌を濾過するだけの単純な軟体動物が、殻を捨て去り、海中で最も柔軟な行動をとれるタコに進化したのだから。

 ちなみにこちらの映像は、エビの背中をチョンチョンと触手で叩き、突っ込んできたところを捕獲する巧妙なタコのハンティングの瞬間を撮影したものだ。


neaky octopus tricks prey into thinking it's BEHIND it




<カラパイア 記事より>







ペタしてね