ブラック・シーデビル、世界初の映像


 11月17日、研究者らが希少なアンコウの撮影に成功し、深海で泳ぐ姿をとらえた世界初のビデオ映像となった。



 希少なアンコウの仲間、ブラック・シーデビルがカリフォルニア州中部の沖合で
初めて映像としてとらえられた。

Photograph by Monterey Bay Aquarium Research Institute



 研究チームは、無人探査機(ROV)を使ってモントレー湾海底渓谷の水深580メートルを潜水中、体長9センチほどのブラック・シーデビルを発見し、カメラでその後を追った。撮影後、メスのブラック・シーデビルは生きた状態で引き上げられ、現在も観察が続いている。

 モントレー湾水族館研究所(MBARI)の深海生態学者ブルース・ロビソン(Bruce Robison)氏は、過去にもシーデビルを引き上げた経験があるが、ROVでの引き上げは今回が初めてだった。「アンコウは完璧な状態だ」と同氏は述べる。

 生きた魚の観察は、研究室に保存された標本を観察するのと違い、実に多くの発見がある。「魚類学者がまず始めに驚いたのは、背びれを動かして泳ぐ様子だった」。

 また、体の造りにしては頻繁に呼吸をしていたとロビソン氏は付け加える。

◆暗く、冷たい水槽

 現在アンコウは、殺風景な研究室というより大型の冷凍庫に似た特注の暗室で飼育されている。断熱材に覆われた照明のない水槽は、暗く冷たい深海を再現している。

 ロビソン氏と同僚らは、魚が新しい環境に慣れるのを待ってから研究を開始する予定だ。シーデビルがサメのように磁場を感知するかを明らかにしたいとロビソン氏は言う。視力が弱い魚は磁場を利用すると考えるからだ。

 さらに、頭部の先端に付いた誘因突起が常時発光しているかどうか、発光のパターンについても探る予定だ。

◆深海の謎

 クロアンコウ科クロアンコウ属に5種が記載されているブラック・シーデビルの生態は謎に包まれ、その寿命さえわかっていない。

 最も顕著な特徴は、頭部に付いた誘因突起だろう。背びれが長く伸びて進化した突起で魚をおびき寄せる。

 ロビソン氏によると、このブラック・シーデビルは捕獲前、ブラック・ドラゴンフィッシュとニギスに似た魚を食べていたようだ。

 シーデビルのオスは、メスに寄生することでも知られる。メスは野球ボールほどの大きさに成長するが、オスは小さく、自力で生き延びることができない。

 そこでオスは、深海の暗闇でメスを必死に探し回る。「メスを見つけるや否や、オスはメスの体に噛みつき、やがて組織が一体になる」と同氏は説明する。メスが栄養を補給する代わりに、オスは精子を提供するという仕組みだ。

 今回捕獲されたシーデビルにオスは付着していなかった。別の種類のアンコウでは、1匹のメスに11匹のオスがぶらさがっていたケースを見たことがあるとロビソン氏は話している。






<ナショナルジオグラフィック 記事より>




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