電子基準点データに東日本大震災の直前と同じ異変が確認される。M7以上の南海トラフ地震の可能性を示唆(地震科学探査機構)


音史のブログ-地震兆候1


 測量学の分野の権威である東京大学名誉教授の村井俊治氏は、現在「地震予測」の研究に力を入れている。村井氏が立ち上げた地震科学探査機構(JESEA)の研究チームが、国土地理院が全国1200ヵ所以上に設置している電子基準点のデータをもとに、地殻変動の動きを観察し続けたところ、最近のデータが、東日本大震災の発生前と同じ異変を示しており、今年12月から来年3月頃の期間に南海トラフでの大地震が起こる可能性があるという。


 電子基準点のデータは、GPSをさらに精密にしたようなもので、人工衛星を使って、地上に置かれた基準点の動きを誤差2~3mmの範囲で測定する精密な測地システムだそうだ。

 そのデータが、今年6月末、九州・四国・紀伊半島で異常変動があり、9月1~6日には、日本全国が異常な変動を起こした。その次の週は逆に変動がほとんどなくなったという。この動きは、東日本大震災の前と酷似しており、変動と静穏期間が半年ほどの間に3回、繰り返されたいう。



音史のブログ-地震兆候2

 そしてさらに、事態は悪化した。

 9月の異常変動後、4週間の静穏期間を経て、10月6~12日、再び広範囲で変動が起こった。とくに大きな変動がみられたのは、九州・四国で、それまで高知県、愛媛県、紀伊半島に出ていた異常が香川県、徳島県など瀬戸内海側に移行。九州、徳之島、沖縄も動いているという。

 これらの場所は、南海トラフでの地震、とくに九州・四国沖を震源とする南海地震が起こるとされている地域と合致するのだそうだ。




音史のブログ-地震兆候3

 村井氏は3・11の東日本大震災が起こる前の2010年9月に、全国的な異常に気付いていた。その後、2011年1月にも東北・関東で異常を観測したものの、その時は、それが巨大地震の前兆だと言えるだけの準備が整っておらず、公の場で発表することはできなかったという。

 そのときの後悔が引き金となって、今回はデータ上に現れた異変を発表するにいたったそうだ。昨年1年間の地震予測的中率は75%。今年に入り、2月の十勝地方南部地震、栃木県北部地震、4月の淡路島付近の地震の際は、事前に予測を発表することができたという。




音史のブログ-地震兆候4

 村井氏の電子基準点やGPSのデータを使った地震予測に問題点がないわけではない。地震学専門の武蔵野学院大学特任教授、島村英紀氏は、「地表の土の部分がどう動いたら、地震を起こす地下の岩盤はどう動いているのかというメカニズムがわからない。GPSなどでどれくらい動いたら、地震につながるというデータも残念ながら、ない。さらに、大地震を引き起こす海底の南海トラフなどの上には電子基準点がない。GPSによる研究は有意義かもしれないが、地震予測にただちに結びつくものではないと思う。」と語る。

 村井氏はこれに反論。「電子基準点のデータとは確かに、季節や豪雨によっても変動するが、一定以上の大きな変動がある以上、地殻の動きと関係していると見ていいはず。我々は、地震のメカニズムを追究しているわけではなく、GPSのデータと地震との相関関係を分析するという工学的アプローチをとっている。ここが地震の研究者たちとの一番の違いである。」

 「地震が発生するまでの、GPSで測った地面の動きのデータをたくさん集めてくると、”こう地面が動いたときに地震が来ている”という関連性がわかる。自然科学者である地震学者は「なぜそうなるのか」と考え始めるが、人間社会での応用を重視する工学者は、”とにかくそうなるのだから、どうにか手を打てないか”と考える。」と語る。

 村井氏の考え方は、「それで人命を救える可能性が少しでもあるのだったら、ときには間違いがあっても、情報を出していったほうがいいんじゃないか。」というもので、予測技術の実社会での応用を重視する方針だ。


 百パーセント当たるなら別だが、予測が外れた場合は社会に混乱を引き起こす。それだけに地震予測というのは難しい問題なわけで、イタリアでは2009年にラクイラで起きた大地震地震予知に失敗したとして、地震学者らに禁固6年の判決が下されている。

 日本はいつどこで地震が起きてもおかしくはない地震大国である。我々ができることはいつ地震がきても最善の対策がとれるように常に心の準備をしていくことなのかもしれない。





<カラパイア 記事より>