放蕩息子の放浪 -13ページ目

放蕩息子の放浪

錆びてる。

 午後11時すぎ、最終電車には自分以外誰も乗っていない。少し冷房の効きすぎた車内で一人、空っぽの冷蔵庫に取り残された卵のように座っていた。冷たい静寂の中にガタンゴトンと電車の走る音だけが響いている。

 特にやることもないのでスマホを立ち上げYouTubeを開いてみるが、陽キャの若者たちが騒いでいるだけの動画や、韓国コスメの紹介動画など目を引くものはひとつもなかったのですぐに閉じた。寝てしまおうかとも考えたが、こんな時間なのに不思議と眠くない。ただただ一人の時間を持て余していた。

 ようやく電車が駅に着いて自動改札を抜ける。ここからまた歩いて家路を帰らないといけないと思うと少し憂鬱になる。

 その時、急激な腹痛が俺を襲った。長い間冷房の効きすぎた車内にいたからお腹がすっかり冷えてしまっていたのだ。

すぐに駅のトイレに駆け込もうと思ったが、しまった。この駅のトイレは改札の中にあるのだった。もう少し早くこの腹痛に気づいていれば……。

 ここから家までは歩いて10分。その間コンビニなどはない。

 いけるか?自分のお腹と肛門に尋ねる。五分五分といったところだろうか。いや、行くしかない。頼む、もってくれ!

 俺は家路を急いだ。