おばあちゃんの出稼ぎ
私の祖母は、51歳で祖父をおくってから、生計を立てるため、さまざまな仕事に就いていました。 祖母は若いころ、戦後の混乱期から、子育てのため、農家の手伝いを始めとして、知人のつてで雇ってもらう働き方をしていたそうです。 昭和時代は、夫婦ともに、または、夫に先立たれた女性など、田舎では仕事がないため、子供をおいて、遠い土地で数カ月間働き、冬になると家に帰るという日々を送っていたようです。 さまざまな仕事の出稼ぎに行っていた祖母でしたが、帰ってくるといつも、 「いい人たちばかりで 楽しかったよ~」 と明るく 愚痴ひとつこぼさず 話してくれたことを 子どもごころに覚えています。思い返しても、 「出稼ぎがツラくて 大変だった」 なんて 一言も聞いたことがないことを思い出し、 今さらですが そんな いつも明るく前向きな祖母が 私は大好きだったんだなと思います。 ある年、 「私、しばらく 和歌山県のみかん農家に 収穫のお手伝い 出稼ぎに行ってくるね〜と 母に電話がありました。聞けば姉妹や親せきの方と一緒に出かけるとのこと。 今年はおばあちゃんの家に遊びに行けないんだ、寂しいなあと思っていましたが現地から送られてきた 「みかん」の文字の段ボール 開けてみると 新鮮なみかんがぎっしり。添えられた やさしい手書きの 便せん。おばあちゃんの笑顔を思い出して 小学生の私は とても幸せな気持ちになったのでした。